ニュース ライブスコア
FC東京

FC東京OB戦の舞台裏。20年の歴史が紡ぐ未来への物語

9:56 JST 2018/10/01
2018-09-29-fctokyo-OB
FC東京は29日、明治安田生命J1第28節・清水エスパルス戦の前に、クラブ設立20周年を記念したOB戦を実施した。

懐かしい顔触れと、懐かしい応援が味スタに溢れた。

1998年10月1日のクラブ設立から20周年を迎えるFC東京が、29日の清水エスパルス戦のキックオフ前に、かつてプレーした名選手たちを集めてOB戦を実施。クラブ草創期にプレーした選手たちによる「TEAM RED」と、それ以降のOB選手で編成された「TEAM BLUE」が対戦し、2004年のヤマザキナビスコカップでクラブに初タイトルをもたらした原博実監督(現Jリーグ副理事長)が両チームの指揮を執る形で総監督を務めた。

今回はその舞台裏とOBたちの思い、そして記念すべき節目で迎えた新しい可能性について紹介したいと思う。(文中敬称略)

■豪華メンバー集結の舞台裏。カボレはまさかの来日危機に

クラブの歴史を彩った豪華メンバーが集結しただけに、実現までには様々な出来事があった。中でも大変だったのはカボレ。ビザ取得のために提出していたパスポートが予定どおりに返却されず、一時は来日自体が危ぶまれた。さらに来日直前には搭乗予定だった飛行機に乗っていないという“事件”もあったという。最終的にはすべてが整い、何とかOB戦には間に合ったが、大掛かりな取り組みの大変さを感じさせる出来事となった。ちなみに小林成光は午前中に栃木県内で自身が指揮を執る作新学院大の試合を終えてから参加予定だったが、その試合のキックオフが約1時間遅れたことで味スタ到着が試合ギリギリになってしまったそうだ。

この日は両チームが一つのロッカールームを使用したこともあって、久々の顔合わせに室内は大盛り上がり。前身の東京ガスFC時代から18シーズンにわたって在籍した“ミスター東京”藤山竜仁が「みんな仲が良い。何年経ってもピッチで一緒に戦った仲間は変わらない」と振り返ったように、OBたちも旧交を温めていたようだ。

まずはOB戦に参加した選手を紹介しておこう。

[TEAM RED]GK堀池洋充、DF小峯隆幸、DF伊藤哲也、DF北慎、MF小池知己、MF佐藤由紀彦、MF小林成光、MF加賀見健介、MF奥原崇、MFケリー、FW笠木新、FW岡元勇人、FW和田潤、FW阿部吉朗、FWアマラオ

[TEAM BLUE]GK榎本達也、DFジャーン、DF藤山竜仁、DF金沢浄、DF下田光平、MF浅利悟、MF鈴木規郎、MF馬場憂太、MF羽生直剛、MFネマニャ・ヴチチェヴィッチ、MF石川直宏、FW近藤祐介、FW平山相太、FW鈴木達也、FWカボレ、FWルーカス

試合前、ピッチ脇からスタンド全体を眺めていた原総監督に藤山があいさつに訪れ、こんな会話を交わしていた。

藤山「前回のOB戦は0-0だったんですよ。やっぱり点が入らなかったら面白くないんで、今日は攻撃的にいきたいです」

原「そうだな。メンバーは自分たちで決めてくれていいよ。ただ、みんな遠くから来てくれているし、全員必ず一回は出られるようにしてほしい」

2016年4月にOBによる「エキシビジョンマッチ」が行われたが、試合はスコアレスドロー。藤山がその結果と内容を踏まえて指揮官の下に足を運んだ形だ。ちなみに原総監督はロッカールームでも選手たちに同様の声を掛けつつ、「トップチームが勝てていないし、なかなか点も取れていないから、そこにつながるような試合をしよう。点を取られたチームは取り返しに行くように」と、OB戦後に行われる清水戦が盛り上がるような展開を促した。

■身長190cmの平山が羽生と手をつないで“エスコート”

20周年記念のOB戦で主審を務めたのは、こちらも日本サッカー界のレジェンドで1998年のワールドカップで笛を吹いた西東京市出身の岡田正義さん。試合前のメンバー発表時にレフェリー名が紹介されると、場内は歓声と拍手に包まれた。

ちなみに選手たちは“エスコートキッズ”ならぬ“エスコートサポーター”とともに入場したが、人数の関係で手をつなぐ人がいなくなってしまった羽生直剛の「ちょっと寂しい」というつぶやきを聞いた平山相太が「じゃあ、僕がそっちの役をやりますよ」と立候補。選手が身長167cm、エスコート役が身長190cmというミスマッチなコンビが仲良く手をつないでピッチに入っていく一幕も見られた。

10分ハーフで行われた試合では、原総監督がマイクを持ち、長年応援番組のMCを務めた三田涼子さんの司会進行で特別解説を担当する演出も行われた。

ピッチではOB選手たちが懐かしい姿を見せた。石川直宏は「ボールの持ち方や守備の仕方、走り方とかは全然変わらないけど、イメージと実際に動ける部分のギャップが……」と苦笑い。とはいえ、前半は「TEAM BLUE」がネマの巧みで力強いドリブルで、「TEAM RED」が佐藤由紀彦の鋭いクロスでゴールへ迫るシーンが印象的だった。

ハーフタイムには土肥洋一、加地亮、三浦文丈、戸田光洋、川口信男、福田健二ら参加できなかったOB選手から届いたビデオメッセージが流され、場内のファン・サポーターの胸を熱くさせていた。

迎えた後半、両チームともゴールを奪うべく攻めたが、「TEAM RED」はルーカスのドリブルシュート、ケリーのテクニカルなインフロントショットがともに右ポストに弾かれてしまう。さらにケリーのスルーパスに抜け出したアマラオの右足シュートは榎本達也にキャッチされ、「久しぶりだから映像を見て勉強してきた」というおなじみの飛行機パフォーマンスは披露できず。試合後には「やっぱりシュートがヘタだったね。昔と一緒」と苦笑していた。

結局、試合は今回もスコアレスドロー。かつての応援で楽しんでいたゴール裏サポーターからは“いじり”のブーイングが漏れ、「延長!」コールが聞かれる結果となってしまった。

■羽生へのサプライズ企画は、新たなステージへの序章

試合後にはピッチ中央で全選手が整列し、OBを代表して藤山があいさつ。「これからも青赤の誇りを持って、さらなる歴史を作っていきたい」と話したところでサプライズ企画がスタートする。今年1月に現役を退きながらファン・サポーターにあいさつできていなかった羽生を無茶ぶりでマイクの前に立たせ、突然の引退セレモニーが始まったのだ。当初は全く状況を理解していなかった羽生が困惑の表情を見せていたが、家族が花束を持ってピッチへ入り、スタジアム内にしっかりとあいさつして記念写真に収まった。

サプライズの“仕掛け人”となった藤山は「OBとして今後もこういう機会を作っていければ」と説明したが、実は今回のOB戦をきっかけに一つの取組みが動き出そうとしている。それがFC東京OB会の発足だ。

近年、一部のJクラブで徐々に正式なOB会を立ち上げる動きが見られる。FC東京では“ノリカル”のニックネームで親しまれた鈴木規郎が自ら手を挙げて発起人のような形になり、JリーグOB会やクラブ側と連携を取りながらFC東京OB会の正式発足に向けて動き始めた。

現在、クラブコミュニケーターを務める石川も「他クラブとのOB戦も含めて、FC東京OBとしての活動を継続的にやっていきたい。今回はいろいろなスタッフが動いてくれて、本当にこれだけの人が集まった。歴史が積み重なると人も増えるので、そういった部分も密に連携していけたら」と今後の活動に意欲を見せる。これからの進捗状況にはぜひ注目しておきたいところだ。

■アマラオの言葉。クラブとして受け継がれていくべきもの

試合後、バックスタンドからゴール裏まで周回してきた選手たちが整列したタイミングで、アマラオが前に出て並んでいるOBたちを指さしながら合図を送る。そしてOB選手、サポーターとともに腕を回し、三度右腕を突き上げる“元祖”の「シャー」を披露した。

2001年から味スタのゴール裏に掲げられている「KING AMARAL STADIUM」の横断幕も、アマラオはしっかりと確認していた。「ちゃんと見たよ! 昔からずっとやってくれているし、本当にうれしい」と笑顔で話しながら、定番のパフォーマンス、そしてクラブへの思いを語ってくれた。

「あのパフォーマンスはサポーターとオレから始まったし、それを最後にみんなで一緒にやれたのが一番うれしい。イメージは家族だから。これからもみんなで一緒にやれれば、もっともっと大きなサポートになると思う。オレはサッカーが大好き。だからピッチに入ったら頑張らないと意味がない。走らないとオレがピッチに立つ意味がないからね。レジェンドだけど(笑)。今年はリーグ優勝は難しくなったけど、チャンスはあったんじゃない? チームは最後まで一つになることで強くなる。もっともっと強くなると思うからチャンスも来るはず。これから優勝するために今シーズンも最後まであきらめずに頑張ろう。ずっと応援しています」

かつて、アマラオはいつも言っていた。

「アイシテル」

全力で戦う選手を応援する。応援してくれる人のために全力で戦う。そこには“愛”があったように思う。結果を求めることだけではない何かが存在した。チームメートやスタッフを大切にしながら、サポーターと一つになりながら、みんなで勝利を目指す。そして喜び合う。それが彼のイメージする“家族”なのだろう。

OB戦を終えたレジェンドたちが見守る中、トップチームは見どころなく清水に敗れてリーグ戦8試合未勝利。長く居続けていた3位の座からも転落した。長谷川健太監督も「選手が戦えなかった。監督として自分自身の責任。どうしてこんな試合になってしまったのか、残念でならない」と漏らす内容に終わってしまった。

トップチームが苦しんでいるタイミングでOB戦が行われた意味、OB会設立への流れ、そしてクラブの“源流”とも言えるひたむきさとあきらめずに最後まで戦う姿勢の重要さを説いたアマラオの言葉――。クラブが20年間にわたって積み重ねてきたものは確実にあった。多くの現役選手はレジェンドたちの試合を見られず、言葉を聞くこともなかったのかもしれない。だが、FC東京というクラブが何を受け継いでいくべきなのか。何を大事にしていくべきなのか。それを改めて感じさせられる一日になったように思う。

文=青山知雄

▶Jリーグ観るならDAZNで。1ヶ月間無料トライアルを今すぐ始めよう

【DAZN関連記事】
DAZN(ダゾーン)を使うなら必ず知っておきたい9つのポイント
DAZN(ダゾーン)に登録・視聴する方法とは?加入・契約の仕方をまとめてみた
DAZNの番組表は?サッカーの放送予定やスケジュールを紹介
DAZNでJリーグの放送を視聴する5つのメリットとは?
野球、F1、バスケも楽しみたい!DAZN×他スポーツ視聴の“トリセツ”はこちら ※提携サイト:Sporting Newsへ