F・トーレスがアトレティコ最終戦で2ゴール…6万5000人とクラブ愛を分かち合う感動のフィナーレ/リーガ最終節

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20日のリーガ・エスパニョーラ最終節、アトレティコ・マドリーは本拠地ワンダ・メトロポリターノでのエイバル戦、フェルナンド・トーレスの最終戦を2−2のドローで終えた。

アトレティコでの初タイトルとなるヨーロッパリーグ優勝から4日後、「これ以上のタイトルなんてない。不可能なんてないんだ」と涙ながらに話したネプトゥーノ広場での祝勝会から2日後……トーレスは、ついに最愛のクラブで戦う最後の試合を迎えた。リーガを2位で終えることを確定させ、何もかかっていない試合だが、ワンダ・メトロポリターノは自分たちのエル・ニーニョ(トーレスの愛称、子供の意)をもう一度見送ろうとする6万5000人のファンで満たされている。

前日の会見で、トーレスについて「もちろん出場」と明言していたシメオネは、スタメンとして彼を起用。選手紹介アナウンスでその「9番、フェルナンド・トーレス」とその名が呼ばれると、脅威的な歓声が巻き起こる。そして試合直前には、アトレティコが今日着用するユニフォームにも記されている「デ・ニーニョ・ア・レジェンダ(子供から伝説へ)」の言葉と9番が描かれた大掛かりなコレオグラフィーがつくられ、「フェルナンド・トーレス! ロロロロローロ! フェルナンド・トーレス!」のチャント。ピッチに立ったF・トーレスはアトレティコを1部復帰に導き、ファンの期待を一身に背負っていた若りし頃のように、キャプテンマークを巻いていた。

そうして、試合はキックオフのホイッスル。アトレティコに一度も勝ったことがないメンディリバルは「この試合こそがチャンス」と語っていたが、実際的に得意のハイプレスからアトレティコを苦しめて勝利を狙う。一方のホームチームは、最後の詰めの部分でトーレスにゴールを与えることを意識し過ぎ、数少ないチャンスをふいにしていく。そうして35分、エイバルが先制。ロングボールからジョルダン、キケ・ガルシアとつないで、オブラクが守るゴールを破っている。

だがワールドカップ、EURO、チャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグと、数々のタイトルを獲得してきたトーレスはやはり役者が違う。42分、ワンダ・メトロポリターノ、そしてテレビで見守る世界中のファンが期待していたそれを、ゴールを決めた。サウールのスルーパスからトーレスと交差しながらコレアが最終ラインを突破。GKディミトロビッチを眼前に横パスを出し、フリーで走り込んでいたトーレスが冷静に、落ち着き払ってボールを押し込んだ。

不自然なお膳立てではなく、そう決まるべきという必然性を伴うゴール……。「誰も僕にプレゼントをくれたことはない。これまでずっと闘い続けてきたんだ」と語っていたトーレス“らしさ”が存分にあふれていた。メトロポリターノは、まるでシーズンの成否をかけたビッグマッチのゴール、いや、それ以上の盛り上がりを見せていた。

トーレスはさらに60分、アトレティコでの通算得点数を404試合129得点まで伸ばす逆転弾を記録。ジエゴ・コスタのスルーパスから、キャリア最盛期のようなスピードでエイバルDF陣を抜き去り、前に立ちはだかったディミトロビッチをひきつけながらシュートを決めている。トーレスはゴール直後、フェンスを飛び越えてゴール裏のファンと喜びを分かち合い、主審からリーガでは最後となるイエローカードを提示された。

まさに理想通りの展開で試合は進み、凄まじい熱狂に包まれるメトロポリターノ。しかし、アトレティコとF・トーレスという相思相愛の存在が離れ離れにならなければなかったように、やはり現実は甘くない。63分にはルーカス・エルナンデスがアレホのプレーを妨害したとして、2枚目のイエローカードで退場に。そして69分にはルベン・ペニャにミドルシュートを決められ、スコアをタイに戻された。結局、試合は2−2のドローで終了のホイッスルを迎えている。

やはり理想通りにはならない。若くしてアトレティコの希望となったトーレスはクラブとの成長の歩幅が合わずに家を出て行くことなり、2015年に帰還を果たした際にはクラブの歩幅の方が大きくなってしまい、選手として闘い続けるためにもう一度別れを告げる決心をした。やはり現実は甘くない。しかし、それでも彼らはできる限りともにあることを望み、だからこそ2015年に再会を果たしたのだ。その愛の結晶としてあるのが、トーレスにとって悲願であったタイトル獲得であり、試合直後に行われた盛大な退団セレモニーだった。

退団セレモニーでは、トーレスをアトレティコ下部組織に入団させたマヌエル・ブリニャス氏らが登場し、エル・ニーニョに対する思いの丈、アトレティコにとっていかに重要な存在であるかを語った。涙をおさえ切れないトーレスは最後にマイクを取り、6万5000人のファンに対して、次のように語りかけている。

「多くの人々に感謝の言葉を伝えたい。もう空へと旅立った人々、とくに僕たちに道を指し示してくれたルイス・アラゴネスに。またアトレティの人間にしてくれるという、子供にとってこれ以上ない贈り物をくれた祖父に。そして僕の家族、大きな犠牲を払った母、相談に乗ってくれた父、節約したお金で自分にユニフォームを買ってくれた兄弟に。また悪い時期にもいつも僕のそばにいてくれて、3人の子供を与えてくれた、人生の支えである妻に。もちろん3人の子供は、人生を通してアトレティコの人間である3人だ」

「チームメート、コーチ陣、メディカルスタッフら、いつも僕のそばにいてくれて、様々なことを教えてくれた全員に感謝をしたい。この3年半は本当に素晴らしく、ここにいた人たち、あとから到着した人たちと、皆が見事にアトレティコを代表していた。そのことがとても誇り高い。今、僕は君たちを置いていくことになる。でもフットボールが僕たちに貸しているすべてのことを、君たちが勝ち取ると確信している。このグループが手にしてきたものは実際に値するよりも少ないし、今こそ勝つ番なんだよ」

「最後に、すべてのアトレティコの家族へ。僕は世界で最も愛されている選手だと感じるために、タイトルを必要としなかった。たとえ、どんなことをしたとしても、君たちに恩を返すことはできないと思っていたけど、今日、そのことが改めて証明されてしまった」

「アトレティコでデビューを果たす1週間前、僕は君たちの一員として一緒にいて、それから404試合に臨んだ。これが最後というのは、とてもつらい。君たちには、今、このときに感じていることをいつも思い出してほしい。なぜ僕たちがアトレティの人間であるのかと問われるとき、今の幸せを、誇りを、素晴らしい家族の一員であるというセンチメントを思い出せばいい。悪い時期が訪れたり、外部で僕たちを分裂させようという動きがあったりしたときにこそ、自分たちの色を感じる。それこそアトレティの人間であるということだ」

「もう、これ以上の言葉は残っていない。このユニフォームを着ること、各試合で命をかける選手たちともにプレーしたことは誇りであり、特権だった。君たちは僕を世界最高の幸せ者にしてくれた。心からそう思っている。最後に、世界で最も美しい僕たちのイムノを君たちが歌ってくれている間に、チームメート、家族とピッチを一周させてほしい」

そうしてトーレスは、ファンがイムノを熱唱する中、ゆっくりとピッチ一周した。イムノを歌い終えたファンが、次に叫んだ言葉は「トーレスこそがアトレティ!」。伝説となったエル・ニーニョは、まるで特大のプレゼントをもらった子供のように、何度も、何度も涙を拭っていた。

取材・文/江間 慎一郎

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