Japan U-19

4大会連続敗退を経て。U-19日本代表が2大会連続“世界切符”を獲得できた理由

■記憶にないレベルの完全アウェイマッチ

2018年10月28日、インドネシアの首都ジャカルタで行われたのは、ユース年代ではちょっと記憶にないレベルの完全アウェイマッチだった。

AFC U-19選手権準々決勝。勝てばU-20ワールドカップ出場権を得られる大一番に詰め掛けた6万人超の大観衆の99%以上はインドネシア人。凄まじい声量の国歌斉唱は正直鳥肌が立ったし、地鳴りのようなインドネシアコールには魂を揺さぶられるようだった。

「みんなスピーカーでも持っているのかなというくらい。日本の応援(スタイル)とはまた違っていて、みんながみんな、声が馬鹿でかい。どこがゴール裏なのかわからないくらい、声が大きかった」

独特の言い回しで完全アウェイの様子を形容してくれたのはFW久保建英(横浜F・マリノス)である。

一方、前半からのあまりの圧に対して、選手はこんな大声では最後までもたないだろうとも思っていたそうだが、「雰囲気に呑まれないようにしようという話はしていたんですけれど、後半またすごい圧力の声が来た」とMF伊藤洋輝(ジュビロ磐田)が苦笑いとともに振り返ったように、のしかかったプレッシャーは並ではなかった。

影山雅永監督も「ちょっとボールを運ばれただけのシーンであっても、物凄い大歓声になるので、選手たちも影響を受けていたと思う」と言うし、「緊張がないということはなかった」と伊藤も率直に認める。ただ、だから折れるとか、だから怯むとかいうこともなかった。彼らが演じたのは、胸を張ってそう言える試合でもあった。

大きな要因として挙げられるのは、やはり経験値を持った選手が多かったということだろう。「AFCチャンピオンズリーグでも似たような雰囲気になる」とMF安部裕葵(鹿島アントラーズ)が言い、「浦和でも大観衆の試合は経験させてもらっている」とDF橋岡大樹(浦和レッズ)は言う。

久保も「楽しいです、ああやってバーッと盛り上がるのは」と言い切った。もちろん単純に国内の環境と同一視できるようなムードでもなかったと思うが、それでも「俺は大丈夫」と思える経験を積んでいた選手が多かったことは紛れもない日本のアドバンテージだった。

DF東俊希(サンフレッチェ広島ユース)による本人も周りも「ビックリした」と振り返ったスーパーミドルシュートでの先制点も、あるいは観衆に煽られる中で結果的に引き出された部分もあったかもしれない。

後半は降りしきる豪雨の中で視界すら制限される中での戦いになったが、全員一丸となった攻守で対抗し、最後は久保のアシストから生まれたFW宮代大聖(川崎フロンターレU-18)の追加点を経て見事に勝ち切ってみせた。

■見逃せない制度面での整備

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▲安部(手前)にとってACLでの経験も大きかった(C)Getty Images

4大会連続して敗退していた大会で、2大会連続の出場権獲得に至れた理由はいろいろと考えられるが、見逃せないのは日本国内の制度面での整備だろう。2年前に明治安田生命J3リーグへのU-23チーム参戦が実現し、今年はJリーグYBCルヴァンカップでのU-21枠が導入されたことで、若手選手が試合経験を積めないという問題が緩和されたことはやはり大きかった。

また、やや偶発的な要因もあって若手が試合に出たり、ポジションを掴み取るチャンスを得やすかったのではないかと分析するのは、選手の出場機会有無に関して最も心労を重ねていたであろう他ならぬ影山雅永監督だ。

「今年はロシアW杯があったので、その前にJ1クラブは15連戦といった試合の組み方をされていたわけです。そのため、ターンオーバーをするチームが自然と多くなった。どんどん若手を使って回さないと思ったチームが多かったのだと思う」

チャンスを与えられればグッと伸びてくる選手がいるのが若さの強さ。もちろん、個々のタレント性や努力あってこその話であり、単に「たまたま」という話では当然ない。ただ、力があっても出場機会のない選手も少なくないのがU-19年代であり、その意味で今年のU-19代表が巡り合わせで恵まれていた面はあった。

また影山監督は国内の育成年代におけるリーグ戦環境が整ってきたことによって、リーグ戦のサイクルがメインになるプロの生活に若手選手がフィットしやすくなったことも理由の一つと分析する。10年間にわたって扉が閉ざされてしまった時期のあったU-20W杯が2大会連続で開かれたのは、やはり単なる偶然というわけではない。

■堂安、冨安が象徴するもの

Japan U-19

▲彼らは次に、対世界を意識したステージに進む(C)The-AFC

U-20W杯は、昨年の同大会を経験した堂安律(フローニンゲン)や冨安健洋(シントトロイデン)が若くして欧州舞台へと旅立ってA代表へステップアップを果たしたことが象徴するように、「島国の日本にとって、この大会を経験しておくのと経験しないのではまるで違う」(影山監督)舞台である。

それだけに重いプレッシャーも感じていたはずなのだが、周りに変な緊張感を見せることなく、選手たちを伸び伸びと戦わせた指揮官の胆力もまた、勝因の一つだったのは間違いない(もっとも、監督本人に言わせると「鈍感なだけです」となるのだが)。

いずれにしても、出場権を得たのは単なる通過点の話に過ぎない。チームとしてはアジアチャンピオンというもう一つの目標に向けた戦いが待っているし、それはU-20W杯へ向けた大切な準備機会でもある。そしてもちろん、今回のメンバーに入り損ねた選手たちの存在も忘れてはいけないだろう。

「(落選した)彼らは今ごろ発奮していると思う。『よし、ワールドカップを決めてくれたか。本大会には俺が入るからな』と日本で絶対に思ってくれているはず。こういう思いを持った選手たちと良い競争になって、また戦える奴が上に行くんです」(影山監督)

世界大会を目指すプレッシャーしかないような戦いを体感することは選手にとって大きな経験値であり、世界大会そのものから得られる経験値も実に大きい。そして、そこに至る過程で繰り広げられる競争によって得られる経験値もまた、選手個々にとってかけがえのない財産になっていくことだろう。それはもちろん、日本サッカー界全体にとっての財産にもなるものだ。

インドネシアの首都ジャカルタでの死闘を経て掴みとって大切な世界切符と共に、U-19日本代表は「対世界」を意識した別のステージへと突入する。「基準は高いけれど、対抗できないとも思わない」と指揮官が断言する世界大会への新たなチャレンジは、次の準決勝からスタートを切ることになる。

■AFC U-19選手権インドネシア2018(いずれも日本時間)

10月19日(金)21:00 日本代表 5-2 北朝鮮代表
10月22日(月)21:00 日本代表 3-1 タイ代表
10月25日(木)18:00 日本代表 5-0 イラク代表
10月28日(日)21:30 準々決勝 日本代表 2-0 インドネシア代表
11月1日(木)21:30 準決勝 日本代表 vs サウジアラビアとオーストラリアの勝者
11月4日(日)21:30 決勝

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