■西城さんへの感謝と追悼の思い
いつもと異なる粋な演出に、スタジアム中が万雷の手拍子で応える。
清水エスパルスに完勝を収めた試合終了直後、勝利の凱歌として等々力陸上競技場に流れたのは、16日に急逝した西城秀樹さんの『ヤングマン』。メインスタンドからゴール裏、バックスタンドを埋め尽くした満員のファンがメロディに合わせて拍手でリズムを取り、そして笑顔で大きく“YMCA”のサインを作った。
絶対に負けられない試合だった。いや、勝たなければいけない試合だった。
西城さんの訃報を受けた最初のホームゲームとなった清水戦は、クラブとサポーターによる“追悼試合”となった。川崎Fの全選手・スタッフは喪章を着用。試合前のBGMは特別に西城さんのヒット曲を流し続け、追悼動画が大型ビジョンで流された。スタジアムに隣接するフロンパークでも同様に名曲が流れ続け、過去のイベント出演時の写真パネルを展示。西城さんのサポーター有志が制作したビッグフラッグへの寄せ書きも行われていた。
「THANK YOU! HIDEKI」というメッセージと西城さんの顔をプリントした横11メートル×縦9メートルの巨大なビッグフラッグは、試合2日前に「やっぱり西城さんへの感謝を示さなければ」と考えたサポーター有志が超特急で準備を進めたもの。
いつも横断幕の制作を依頼している業者に相談すると、準備期間の短さと人手不足が判明し、一部のサポーターが急きょ埼玉県内に集結して約8時間ぶっ通しで作業を手伝ったという。そして多くのファンがメッセージを添えたビッグフラッグは選手入場後に黙とうが行われた際、Gゾーンと呼ばれるサポータースタンドを覆った。

また、対戦相手となった清水のホームタウンは、人気アニメ『ちびまる子ちゃん』の舞台になった街。西城さんは作品内に何度も登場し、エンディング曲を担当していた縁もあって清水側も黙とうを快諾。セレモニーに際しての場内アナウンスでも、清水と西城さんの関係性が伝えられていた。
■等々力が一つになった瞬間
試合は川崎Fにとって理想的な展開となった。中村憲剛が鮮やかな直接FKで先制点を奪うと、阿部浩之が巧みなシュートで追加点。そして57分に再び中村がダメ押しゴールを決めて勝負あり。ゴール裏へ一目散に駆け出した中村は、自身のBKBパフォーマンスに続いて“YMCA”アクションを披露し、腕に巻いていた喪章を天に掲げた。
©Getty Images試合後、西城さんへの思いについて聞かれた中村は、「僕がフロンターレに入る前から尽力していただいていた方。自分が2点取ることなんてめったにない。もしかしたら西城さんが取らせてくれたのかな」と思いを馳せた。
川崎FがJ1に初昇格した2000年を皮切りに、川崎市制記念試合で『ヤングマン』を披露していた西城さん。当時はまだ中村が加入する前で、入場者数も3,000人程度の状況だったが、ホームタウンに住んでいた縁で早い時期からクラブを応援してくれていた。その後、2007年だけは予定が合わなかったものの、2004年から2017年まで毎年来場。場内を周回する西城さんの歌に合わせてファンが一斉に笑顔で両手を動かす“YMCA”は、川崎フロンターレにとって夏の風物詩と言えるものだった。
クラブ関係者によると、実は今年も7月の川崎市制記念試合に西城さんの来場が決まっていたという。脳梗塞が再発したあともオープンカーに乗りながら『ヤングマン』で場内を盛り上げてきた西城さん。川崎Fにとってはファンの少なかった黎明期から支え続けてもらった功労者だが、本人は「いつも呼んでくれてありがとう」と反対に感謝してくれていたという。
そんな西城さんとクラブのつながりを、等々力陸上競技場に足を運んだ誰もが知っていた。清水戦後に流れた『ヤングマン』とスタジアムを揺らした“YMCA”パフォーマンスは、西城さんへの感謝と追悼の思いで川崎Fに関わるすべての人が一つになった瞬間だったように思う。
取材・文=青山知雄
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