日本のファンならず、世界中のサッカーファンが注目する19日(日本時間20日1時30分~)のFIFAクラブ・ワールドカップ準決勝、鹿島アントラーズ対レアル・マドリー。もちろん、世界的に見れば混沌のレアル・マドリーが大会3連覇に向けて初戦でどのようなパフォーマンスを見せるか、という部分により多くの注目を集めることは事実。
だが、アジア王者の鹿島も“白い巨人”撃破へ虎視眈々だ。とりわけ今回は、2年前のクラブワールドカップ決勝、延長戦の末に2-4で敗れた熱戦の“リベンジ”がかかっている。もちろん、レアル・マドリーが鹿島を侮ることはないだろうが、スペイン有力紙『アス』で“エル・ブランコ”の番記者を務めるカルロス・フォルハネス記者は、アジア王者には十分に勝機があるとみる。
文=カルロス・フォルハネス(スペイン『アス』)
協力=江間慎一郎
レアル・マドリーは出場した直近3大会で優勝を掴んだように、クラブワールドカップではミスを犯さない。しかし、現ヨーロッパ王者は今ほど不安定なチーム状態でこの大会に臨んだことがなかった。今もスター選手を擁しているとはいえ、ジネディーヌ・ジダンとクリスティアーノ・ロナウドの退団は、すでに昨シーズンから浮き彫りになりつつあった未解決の問題をそのままクラブに置き去りにしていった。ジュレン・ロペテギは3ヶ月しかもたず、後任のサンティアゴ・ソラーリもすでに問題を抱え始めている。アラブ首長国連邦に登場する鹿島アントラーズの相手はあらゆることを実行する能力を持つレアル・マドリーだが、普段よりも多くの弱点と混乱をはらんでもいるのも事実だ。
■“イスコ・ケース”
(C)Getty Imagesレアル・マドリーで最も素晴らしい選手のひとりであるにも関わらずプレー機会がない。ソラーリはイスコとの問題を否定するが事態としては確かに存在するもので、ロッカールームにも分断をもたらしている。第2キャプテンのマルセロは公の場でイスコを牽制した。
イスコはCSKAモスクワ戦でキャプテンマークを巻くことを拒否したが、これについてマルセロは「ダニエル・カルバハルに渡すように言われたんだ。理由はわからない」と語っている。これはドレッシングルームの上層部からの完全なる告発であり、イスコを孤立させるものだ。そしてクラブ内の少なくない人々が、この第2キャプテンの言葉と、イスコがマルセロの代理人であるレネ・ラモス(セルヒオ・ラモスの兄)を拒絶したことを関連付けて考えている。
一方で、カルバハルとマルコ・アセンシオはイスコを熱心に擁護した。さらに、エイバル戦でのレアル・マドリー第2監督のサンティアゴ・デニア・サンチェスとのいざこざや、サンティアゴ・ベルナベウでの問題ある振る舞いを見れば、このマラガ人の片足はすでにクラブの外にあるように見える。この一連の出来事は鹿島アントラーズを助けることになるかもしれない。
■マルセロ探し
(C)Getty Images守備の一番の弱点だ。3-0で勝利したエイバルのホセ・ルイス・メンディリバル、同じく3-0で勝利したCSKAモスクワのヴィクトル・ゴンチャレンコの両監督は、いずれもマルセロのことを探していた。実際ゴールはこのブラジル人のサイドをきっかけに生まれている。
クラブワールドカップ前の最後の対戦相手となったラージョ・バジェカーノのミチェル監督も同じことをしていたのは明らかで、マルセロの背後を突くため、ラ・リーガで最もスピードのある選手のひとり、ルイス・アドビンクラを配置した。もし大岩剛監督がこの弱点を突ければ、鹿島に勝機を見出せるかもしれない。
ラファエル・ヴァランもまた穴だ。ワールドカップで優勝して以降ヴァランのパフォーマンスは真っ逆さまに急降下しており、1-2で敗れたレバンテ戦での失点はいずれもこのフランス人のせいによるものだった。
■クリスティアーノなきマドリー
(C)Getty Images今のレアル・マドリーの得点数(24)は、1993年以来最低の数字だ。ただしこれは偶然ではない。クリスティアーノから生まれる44ゴールがなくなり、ソラーリ政権下になってからはさらにゴールチャンスまでが奪われた。
ロペテギがまだベンチに座っていた時のCSKAモスクワ戦では、レアル・マドリーは26本のシュートを浴びせ、1-0で試合を落とした。先日のラージョ・バジェカーノ戦の後半に放ったシュートはわずか2本だ。勝利はしたものの1-0という寂しいスコアに終わった試合の後、「ボールは入るようになるさ…」とソラーリは約束し、ティボー・クルトワも「重要なのは相手ゴールまで到達すること」だと主張した。
今のレアル・マドリーは実際に見せる恐怖よりも、ガレス・ベイル、カリム・ベンゼマ、アセンシオ、セルヒオ・ラモスなどの選手のネームバリューによって相手を怖がらせている状態だ。フロレンティーノ・ペレス会長はネイマールの獲得を夢見ていたが、実際に今のレアル・マドリーにはゴールが生まれていない。
■ベイルの足首
(C)Getty Images2017年11月以降、レアル・マドリーはベイルに関する医学的な情報を公表していない。この間にベイルは3回負傷し、最後は先週のCSKAモスクワ戦でのことだった。いつも下される指令は同じで、“怪我の概要は隠せ”である。
ラージョ・バジェカーノ戦の前にソラーリが語ったこと、それは「足首は休息を必要としている」のみだった。最終的にソラーリはベイルを家で休息させることを選択したが、右足首の状態は依然としてミステリーのままだ。
さらにこのウェールズ人のケースは非常に特別であり、プレー可否の判断がクラブドクターの基準ではなくベイル自身によって下されている。ベイルは筋肉(特にふくらはぎ)の負傷に非常に敏感になっており、リスクを感じたりプレーをやめた方がいいと判断した場合には、自ら欠場を決定する。ベイルが鹿島戦でプレーするのか、それとも決勝進出を信じてベンチから戦況を見つめるのか、それはベイル自身にしかわからない。
■ソラーリ、経験不足の監督
(C)Getty Images監督の役割とはいいことを台無しにしたり、チームの不具合を解決するために戦術的、感情的なリソースを放棄することでもない。ソラーリは偉大なるモチベーターではなく、もしややこしい状態でハーフタイムに突入すれば、鹿島にとってはアドバンテージとなるだろう。
ソラーリにはまだテクニコとして重圧や責任を背負いながらアトレティコ・マドリーとのダービーマッチやバルセロナとのクラシコといった試合を戦った経験がない。クラブは2021年まで契約を結んだとはいえ、ペレス会長の頭の中ではソラーリはまだ暫定監督のままだろう。
ソラーリももし鹿島戦で失敗を犯せば今の仕事のまま2019年を迎えることが保証されないことはわかっている。表向きにはクラブは「アブダビで何が起きようともソラーリは監督を継続する」と話してはいるものの、現実はそれとは異なる。サポーターは(チーム状態に)心底疲れ始めており、このアルゼンチン人は鎖の中の脆い鐶のようである。
■過剰な驕り
レアル・マドリーは伝統的にクラブワールドカップの序盤で苦労をしている。誰も公には言わないものの、クラブが決勝戦に到達するのは当然なものとみなされている。多くのマドリディスタが昨年のひどい準決勝のことを記憶しているだろう。
アル・ジャジーラに先制され、明らかな2失点目は取り消されて難を逃れた。レアル・マドリーはその後逆転勝ちを収めたが、今年はそのようなリアクションを起こせることを示せていない。つまり、逆転勝ちを収めた試合がひとつもないのだ。
これまで築いた15勝で追いかける展開から勝利を掴んだのはわずか一度。重ねた敗戦は8つで、これは2008年以来最多だ。今のレアル・マドリーには勝利を力づくでもぎ取る力もなく、リアクションを起こす能力もない。
もし日本のチームが2016年に柴崎の2得点で試合を先行したようにスコアで上回る展開に持ち込むことができれば、あの時の決勝のリベンジを果たせるかもしれない。
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