13日木曜日の『キッカー』誌の記事には気の利いた言葉が掲載された。
「ジャーナリストに対するカテナチオ」
ルシアン・ファーヴルが繰り返し記者会見の場で見せる言動を指している。つまり、ボルシア・ドルトムントの指揮官はただ人当たりがいいだけでなく、用心深く“守備”を固めて、その真意を見抜けないということだ。
質問に応じるファーヴルの答えはいつも言葉少なで、そこに具体的な内容は含まれない。記者は仕事をしている感覚を得ることが難しく、ほとんどからかわれているような気持ちを抱いてしまうほどだ。最近の例で言えば、15日に行われたヴェルダー・ブレーメン戦を2-1の勝利で終えた後、ファーヴルは「さっき聞いたんだが、我々はこれで“ヘルプスト・マイスター”になったそうだ」と語った。信じられない言い草である。
このようにわけのわからない馬鹿げたことを言い続けるのは、言葉の壁もあるかもしれない。ファーヴルはスイス人であるが、スイスのドイツ語とドイツのそれは違う言語と言っていい。だが、彼が上の発言のすぐ後に語った言葉の方がもっと重要な意味を持っている。
「前半戦の王者になったことは、私にとってさほど意味のあることではない。素晴らしいことではあるし、満足もしているが、常に最も重要なのは次の一戦なのだから」
それはファーヴルが掲げるフィロソフィーがちゃんとした言葉になった瞬間だった。
■哲学への強いこだわり
Getty Imagesシーズンが始まって以来ずっと、ファーヴルはそういう類の“呪文“を唱え続けてきた。「我々は一戦一戦を大切にするというフィロソフィーでやっていく」とブレーメン戦の前に語った彼は、試合後もまた「これからも一戦一戦を見据える方針で進んでいく。我々のフィロソフィーを変えるわけにはいかない」と話している。
実際のところ、この方針は現在まで非常に大きな成功を収めている。その影響もあってか、ドルトムントの関係者の一部でも同じような答えを返すのが習慣となっている模様だ。スポーツディレクターのミヒャエル・ツォルクは今シーズンの初めから記者会見場では常に指揮官の隣に座っているが、彼もまたスイス人監督の言葉を借りている。
「我々がここまで到達できたのは、小さな一歩一歩を積み重ねてきたからだ。勝ち点や何かをあくせく計算したり、タイトルを取ろうとして躍起になったからではない」
落ち着いて1試合1試合大事なことに集中するというのは、首位に立ち慣れていないチームにとって確かに悪くない方法である。ドルトムントはシーズン半ばにしてすでに大きな成功を収め、さらにその成功は多少の驚きを誘うような形で現れているのだから。というのも、ブンデスリーガ第16節終了時点で、ドルトムントは2位を6ポイント引き離し、白熱するダービー戦でも勝利を収め、チャンピオンズリーグでも首位で決勝トーナメント進出を決めた。これは、まったく期待もしていなかったほどの成果だと言える。
■「前半戦の王者になって悪い気はしない」
成功を収めているのは紛れもない事実であり、後半戦が始まり、シーズン終了が近づけば、これまでのようにわざと控えめな表現を使うような態度を維持していくことはずっと難しくなるだろう。

ハンス=ヨアヒム・ヴァツケCEOはいくらか心の防御を解き、「チャンピオンになって悪い気はしないね」と話す。ただし、「タイトルを狙うだけでは何も手に入らない」と付け加えることも忘れなかった。
ヴァツケの発言の後、さらに肝心のリーグ優勝について質問されたファーヴルは、例によって答えをはぐらかす。「我々がタイトルを取れるような状況にあるのかどうか、それについてはまだ何も言うつもりはない」
年が明ければ、ドルトムントにかかるプレッシャーはさらに大きくなるだろう。今よりももっと頻繁にタイトルにまつわる質問が飛び、「ドルトムントがマイスターシャーレを手にするにちがいない」という声さえ聞こえてくるかもしれない。
だがそれでも、ドルトムントは“一戦一戦を大切に”という呪文を唱え続けることになるだろう。それが有意義であり、同時に安全な策ともなる。
■後半戦への準備は万全
25日間続くウィンターブレイクの期間中、とりわけスペインのマルベージャで行われるトレーニングキャンプの場で、ファーヴルは初めて、主力メンバーの大部分がそろった形で落ち着いて仕事をする機会に恵まれる。というのも、3日に一度という息もつけないようなペースで試合が行われている間は、監督の求める練習メニューをきっちりこなすのはほとんどできない相談であった。加えて、夏にファーヴルが監督に就任した際には、W杯の疲れが残る代表選手やケガを抱えた選手については、時間をかけて練習に加えていかざるをえない状況だったからだ。
Getty Imagesこれまでに得点とアシストを合わせて18点を稼ぎ出し、ドルトムントの成功を支える功労者の一人であるキャプテンのマルコ・ロイスは、メンバーがそろって練習する時間を持つことの重要性を強調している。
「シーズン前にチームメイトと一緒に準備できたことが、僕と僕の体を支える基盤になっている。それは僕にとって欠かせないことなんだ。今のドルトムントの状況を僕は非常にうれしく思っている」
ウィンターブレイクの準備期間中に不測の事態が起こらない限り、シーズン後半のドルトムントが前半に比べてそれほど遜色のない活躍を見せてくれる見込みは十分にある。これまでと同じようにこの先もずっとドルトムントが常に優勝候補の役割を果たしていけるとすれば、ブンデスリーガではいっそう手に汗握る展開が期待できるだろう。
「今の状態を維持できるように、僕たちはこれからも努力を続けなければならない」
まるで恩師の言葉を繰り返すかのように、ロイスにも慢心はない。周りがいくら騒ぎ立てようと、ドルトムントの躍進を止めることはどうやら難しそうだ。
文=ヨヘン・ティットマール/Jochen Tittmar
構成=Goal編集部
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