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顔を出し始めた森保ジャパンの「臨機応変さ」。スムーズな可変システムの裏側

9月のコスタリカ戦に続き、パナマにも完勝を収めた森保ジャパン。この10月シリーズで、ロシアW杯の主力組が続々と復帰。森保一監督はメンバー発表会見で、ロシア組と若手との「融合」、そして来るアジアカップを見据えた「戦術の浸透」を今回のテーマに掲げていた。それは実現できたのか?日本代表の密着取材を続ける飯尾篤史氏は、パナマ戦で表現された「臨機応変さ」に、チーム戦術の浸透が感じられたと語る。

■パナマ戦で見えた明確な狙い

2列目に並んだ若者たちの創造性溢れるプレーと、ゴールへの強い意欲にワクワクさせられた9月のコスタリカ戦から一転、パナマ戦では相手のウイークポイントを突くような、組織的な攻撃に目を奪われた。

日本の基本システムは、コスタリカ戦と同じ4-2-3-1。ところが、攻撃をビルドアップする際には3バックに姿を変えて、右サイドバックの室屋成(FC東京)がにわかにポジションを前に移す。すると、それに呼応するように、右サイドハーフの伊東純也(柏レイソル)がインサイドに潜り込んだ。

俯瞰して見れば、右から室屋、伊東、大迫勇也(ブレーメン)、南野拓実(ザルツブルク)、原口元気(ハノーファー)がいわゆる“5レーン”をすべて埋め、相手の4バックのギャップにポジションを取っている。

「監督からも『高い位置を取れ』っていう指示があったし、“やりながら”高い位置に入っていったら、相手が嫌がっている感じがした。あそこで受けてサコくん(大迫)に楔を入れるシーンを何度も作れた」

そう振り返ったのは、右ウイングのようにプレーした室屋である。実際、裏を狙った伊東と入れ替わるようにして落ちてきた大迫に室屋がパスを入れたり、室屋から際どいクロスが入ったり、南野と原口のコンビネーションで左サイドを攻略したりと、前半から崩しの狙いはピッチ上でくっきりと描かれていた。

5トップにして相手の4バックを攻略するのは、森保一監督の得意とするところ。とはいえ、かつて率いていたサンフレッチェ広島も、現在指揮を執るU-21日本代表も、主戦システムは3-4-2-1で、両ウイングバックを前線に上げれば簡単に5トップを作れる状況だった。

■ピッチで表現された「臨機応変さ」

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一方、今回は4-2-3-1。それでもスムーズに可変していたのは、いい意味での驚きだった。「前半は相手がフレッシュな状態で(守備を)コンパクトにして、時間とスペースを与えてくれなかったが、どう崩していくかという部分で、選手たちがボールを握って動かしながら攻撃を作って、チャンスを作ってくれたところは良かった」と森保監督は振り返ったが、その言葉にも納得がいった。

もっとも、本当の意味で驚きだったのは、入念にトレーニングを積んだのかと思いきや、そうでもなかった点である。「“試合の状況に合わせて”高い位置に入ったほうがスペースは空くな、と純也くんと話していた」と室屋は、明かしたのだ。

実際、常に5トップを作っているわけではなく、原口と南野が入れ替わったり、左サイドバックの佐々木翔(サンフレッチェ広島)が高い位置を取った場面もあった。

おそらくパターン練習は積んでいなくとも、攻撃の約束事――プレー原則のツボはしっかりとレクチャーされていたのだろう。「やりながら」「試合の状況に合わせて」という室屋の言葉は、まさに指揮官がコンセプトとして掲げる「臨機応変さ」「対応力」そのもので、チーム戦術に浸透が感じられた。センターバックとして攻守にオーガナイズした槙野智章(浦和レッズ)も胸を張る。

「ボランチが落ちてサイドバックを高い位置にやることによって臨機応変に、人とボールを動かす配置がうまくできたのは前回よりもパワーアップしたとことだと思います」

■起用法に感じた森保監督のうまさ

一方、この試合ではセンターバックの冨安健洋(シント=トロイデン)が代表デビューを飾り、伊東とボランチの三竿健斗(鹿島アントラーズ)が代表初先発を果たしたが、彼らがのびのびとプレーできたのは、相手がパナマだったこと、大迫、青山敏弘(サンフレッチェ広島)、槙野といった経験のあるベテランたちがセンターラインを担ったことと無関係ではないだろう。こうした起用法にも、森保監督のうまさが感じられた。

メンバー発表会見の際、指揮官はこのシリーズのテーマとして「戦術の浸透」と「融合」のふたつを掲げた。16日のウルグアイ戦ではロシア・ワールドカップで主力だった長友佑都(ガラタサライ)、吉田麻也(サウサンプトン)柴崎岳(ヘタフェ)、酒井宏樹(マルセイユ)らの先発起用が予想される。W杯で8強に進出した強豪との一戦では彼らと中島翔哉(ポルティモネンセ)、堂安律(フローニンゲン)、遠藤航(シント=トロイデン)らフレッシュなメンバーとの融合、そして、戦術面のさらなる浸透を確認したい。

取材・文=飯尾篤史

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