■昨季3戦3敗。悔しさの次に
リーグ戦、ルヴァンカップと静岡ダービー2連敗で迎えた昨年10月のリーグ第29節、ホームでのジュビロ磐田戦。前半アディショナルタイムのことだった。サイドでの激しいボール争いの中で、磐田DF高橋祥平が顔面を押さえて倒れ込む。これが松原后の「乱暴な行為」と見なされ一発退場。清水は1人欠けたディフェンスを補充しなくてはいけなくなり、金子翔太が清水航平と代わってピッチを下りた。すでに1点ビハインドを負っており、後半に勝負をかけたい清水だったが、10人ではその力も出せず0-3と惨敗。残留争いの真っ只中にあったチームは、この敗戦でさらに厳しい状況に追い込まれた。金子は当時をこう振り返る。
「不完全燃焼だったし、悔しい気持ちが強かった。ポジションの兼ね合いなどもあって、仕方ないところもある。それでも、そこで交代させられてしまうのは自分の実力不足。必ず残留して、次の年には悔しさをぶつけようと思った」
雪辱を誓った金子は、今季ここまで絶好調だ。現在リーグ5試合を消化し、総得点は8。右サイドハーフに固定され、献身的な守備と彼本来のプレーであるゴール前でのうまさも見せている。まさに「水を得た魚」だ。第4節仙台戦では、30m超の無回転ミドルシュートを決めるなど、3得点を挙げているほか、2アシストを記録。さらにアシストの1つ前のプレーも加えるとチーム総得点8のうち7得点に絡んでいる。
「昨季のダービーは勝ちたいという気持ちがチームとして足りなかった。『ダービーは34試合のうちの1つ。楽しんでやろう』という試合の入り方だった。でも、楽しむだけではダメだと今では思う。だから、この試合は絶対に負けられないという気持ちで臨む」

■ダービーの申し子の変化
「いろいろな人に迷惑をかけてしまった」
退場した松原はその気持ちを忘れてはいない。彼もまた今季、大きな変化と成長を遂げている。
まずは見た目だ。明るい色に染めていた髪を黒に染め直した。「日本代表に入っていこうとするなら、まずは大人として変わっていかなければいけない」。今季からGMとして清水に復帰した久米一正氏から助言を受けた。日本を代表するサイドバックを目標に掲げる松原にとっては、髪色へのこだわりも簡単に捨てられた。また、一人暮らしを始め、栄養士に話を聞いて食事に気を遣うようになった。精力的に筋力トレーニングにも励み、「体も一回り大きくなって筋肉量も増えた」と言う。
プレーに対する意識にも変化が見える。これまでは攻撃への意欲が旺盛な左サイドバックだった。「アシストかゴールを取りたい」と常々語り、高いポジションを取って相手のゴール前に現れることもしばしばだった。それが良い方向に転がったときには、試合を決定付けるゴールを決めたこともある。しかし、それだけでは足りない。
「サイドバックは守備のポジションでもあるので、攻撃だけじゃないというところを見せなければレベルアップできない。前に行きたい気持ちもあるが、まずは周りを見て試合に合わせたプレーをすることが大事。守備でのポジショニングや1対1も成長してきていると思う」
本人の意識が変わるに従い、守備でチームにもたらす貢献度は格段に上がった。攻撃の回数は昨季より減ったものの、ここまで1アシストを記録している。父は清水でプレーした松原真也氏、叔父は磐田、清水でも活躍した松原良香氏という家庭に育った。磐田ジュニアユースで育ったものの、浜松開誠館高校に進学。サッカー部では元清水の青嶋文明氏から指導を受けた。清水と磐田、その両チームを知るいわば「ダービー申し子」だ。この試合の重みは誰よりも感じている。
磐田が14年、15年、清水が16年にJ2を戦っていたため、静岡ダービーには3年間の空白があった。その間に清水に加入した2人にとって、当事者として迎えるダービーは昨季の「惨敗」の記憶しか残っていない。この忌まわしい記憶を、自らの手で変えていく。
写真・文=田中芳樹
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