2018-05-17-hiroki-sakai(C)Getty Images

酒井宏樹が終えた「定着」の今シーズン。マルセイユで何を経験し、何を得たのか?

全コンペティション合わせて50試合に出場、1ゴール4アシスト、総プレータイム3950分という充実したシーズンを、酒井宏樹は終えた。

「日本人ディフェンダーのヒロキ・サカイとは、どんなプレーをする選手なのか?」

指揮官やチームメイトがそれを完全に把握しておらず、彼自身も仲間のプレーを実質的には知らない状況にあった1年目の昨シーズンは、まず自分はどんなプレーでどうこのチームに貢献できるのかを彼自身が探り、それを周囲に認知させることに費やした。そして2年目の今季は、チームに浸透した彼のその素質を、毎試合確実に提供していくことを実践するシーズンだった。冒頭の数字を見ても、その点において今季の酒井は及第点以上の出来だったように思う。

■「考えて動く」酒井の強み

酒井が自分の強みとしてチームに提供している素質の一つに、常に自陣に有利になる状況を作ることを考えて動ける、という点がある。たとえば対人プレーにしても、彼が意識するのは寄せのスピードやパワーよりも、その対人プレーを自分たちにとって有利な展開にできるよう事前に計算して動き、実際にその状況を作り出すということだ。

プレッシングが間に合わずにクロスを出させてしまう場合でも、最低限、利き足でない方で蹴らせる状況にはもっていく、といった具合に。

「相手が左利きだったら左を切るとか、そういう些細なことですけど、それが積もっていくと相手の攻撃の質が落ちてくる」

これは10月のパリ・サンジェルマン(PSG)戦直後の発言だが、そういった意識を持ってネイマールら超強力攻撃陣に対峙した結果、この試合では、ロスタイムに(エディソン)カバーニに同点弾を許すまで、あと一歩で2-1の勝利を奪えるところまで迫った。

「思ったとおりにいかないことはもちろんあります。人数が足りていると思って上がったら足りていなくて慌てて戻ることも。でもその場合でも、なぜそうなったかがわかっているだけで修正は断然しやすくなる」と酒井は話す。

2018-05-17-hiroki-sakai(C)Getty Images

ガルシア監督は、試合前の準備にしても「こうだ」と言うタイプではなく、「こういうことも起こりうるけれど、みんなどう思う?」とアイデアを出し、それでみんなで話しあっていくという指導法を執る指揮官だという。状況に応じてヒントをくれ、それを選手たちで練習中に話し合い、試合に入ってからもみなで進め方を決めていく。連携やポジショニング、相手のどういった動きを警戒するか。

たとえばクリーンなプレーを信条とする選手だけではない地では、「どんな手を使ってでも」相手は勝ちを奪いにくる。それを予測した上でどう対処できるか。毎試合この作業を『意識的に』繰り返していることで、酒井には欧州で生き抜く力がどんどん養われている。もともと酒井は、きちんと考えて動くことを得意とするタイプの選手なのだろう。監督が求めていることは何かを常に考え、プレーでそれを表現できる。それがマルセイユのようなプレッシャーの大きいクラブで酒井が絶対的な主力として活躍できている要因の一つだ。

左サイドバックが人材不足に陥った今季は、ガルシア監督からフォローを託され、ポリバレントさも向上した。本人は「やっぱり右のほうがやりやすい」と話すが、十分に任務を果たしていたことは、本業のジョーダン・アマヴィが負傷から戻ったあとも、たびたびガルシア監督が酒井を左サイドで先発させていたことからもうかがえる。34節のリール戦で左膝を負傷し、一時は今季中の復帰は絶望と言われたときには、ガルシア監督は「サカイはうちのディフェンダー陣で最も守備が強い選手。彼の不在は痛い」と大いに嘆いていた。

■EL決勝で悔しい思いも…

イメージどおり謙虚な人柄の酒井が、自分の出来や成長について鷹揚に語ることはまずない。しかし我々が想像する以上に、酒井はマルセイユでのチャレンジに手応えを得ているに違いない。

2018-05-16-sakai(C)Getty Images

そう感じたのは5月16日のヨーロッパリーグ(EL)決勝戦。酒井はケガからの回復が間に合いベンチ入りはしたが、ゲームの流れも影響し、出場はかなわなかった。それでも、ここに到達する過程も含めて、EL決勝戦に臨んだ体験から得たものがあったのでは、と予想したが、彼の答えは、「こういう舞台で何ができるか、というのが大事。やはり勝利しないと得られないものは得られない」というものだった。

彼が目指しているものは、単に決勝戦に行く、という域は超え、そこで自分は何ができるか、そこで勝利することによって何が得られるか、というところにあったのだ。

アトレティコ・マドリーに敗れて準優勝に終わったEL決勝戦のあと、「ここで落ちるようなチームだと、もう一回上に行くことはできないと思うので、しっかり土曜日(19日のリーグ最終節、対アミアン戦)に勝って、良いチームだということを証明したい」と決意を口にしていたが、そのアミアン戦に酒井もフル出場し、マルセイユは2-1で勝利した。しかし3位争いをしていたリヨンも3ポイントを加算したため、最終結果は4位。来季はまたヨーロッパリーグに参戦する。

2018-05-17-marseille-sakai(C)Getty Images

欧州カップ戦の決勝戦は、「また戻って来るべき場所」だと酒井は言った。

「このチームはそういう可能性は秘めていると思いますし、それをやらないといけないチームだと思います」

このチームでチャンピオンズリーグへ、そして国内タイトル制覇へ。

それが酒井の目標だ。

発見の1年目、定着の2年目、ときたら、3年目は熟成、あるいはさらなる飛躍のときか。

来季酒井がマルセイユでどうたくましい姿を見せてくれるのか、彼自身はもちろん、監督もチームも、そしてファンも期待している。

取材・文=小川由紀子

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