2018-03-29 Lionel Messi Marc-Andre ter StegenGetty Images

「選手が“製品”と化している」エジミウソンが見る、サッカー界の変わりようとは?/独占インタビュー

1976年にブラジルで生まれたエジミウソンは、母国の名門サン・パウロで評価を高め、その後在籍したリヨンやバルセロナでは数々のタイトル獲得を経験。ブラジル代表としても2002年の日韓ワールドカップ優勝メンバーになるなど、輝かしいキャリアを送った。

現役を引退したのは2011年のこと。ピッチから去って7年ほど経つが、エジミウソンは現在バルセロナに居を構え、カンプ・ノウで愛する古巣バルサのサッカーをスタンドから毎試合観戦しているという。

クラブでも代表でも、数々の栄光を手にしたエジミウソンが、同胞ネイマールや後輩ウスマン・デンベレなど、ピッチ内外で話題になっている選手について独自の見解を語る。また、サッカー界の取り巻く状況は、自身が現役引退してからのわずか7年ほどで大きく変わったと見ているようだ。

■現在も古巣バルサを追う

2018-12-02 2006 EdmilsonGetty Images

――あなたはかつて4シーズンにわたって、バルセロナのユニフォームを身にまとった経験があります。バルセロナが特別なクラブと言われる所以はどういったところにあると思いますか?

バルサはいつだって大きなことを成し遂げられるようにチーム編成が維持されている。この10年以上、常にバルサは素晴らしい状態を保ち、タイトル争いを演じているね。UEFAチャンピオンズリーグ制覇という大きな目標をコンスタントに果たしているわけではないが、バルサらしさはピッチ上で十分に出ていると思うよ。やはり独特のプレースタイルはフットボールファンを熱狂させるに十分な魅力を持っている。シーズンが変わるたび、様々な選手や監督がバルサを訪れては去っていく。だけどバルセロナのプレースタイル、哲学は一貫して変わらないんだ。このサッカーのクオリティこそがバルサの本質、真髄であり、他のクラブとは一線を画したものになっているんだよ。

――今シーズンのバルセロナは好調を維持し、チャンピオンズリーグでもグループ1位での勝ち抜けを決めています。このコンペティションでは優勝候補だと思いますか?

もちろんさ。バルサは常に優勝候補の一つに数えられると思う。だけど、チャンピオンズリーグは毎試合激戦が避けられないハイレベルな舞台だ。決勝トーナメント1回戦以降は、間違いなく困難な戦いが待ち受けているだろう。タイトルを勝ち取るには、運という要素も必要になるんだ。ここ数シーズンはレアル・マドリー、バルサとアトレティコ(マドリー)が常に上位まで勝ち残っている印象が強く、スペイン勢が力を見せているね。だけど個人的には、今回タイトルを取るのはスペインのチームではなく、他国のクラブなんじゃないかと思っている。ユヴェントスがその筆頭だと思うんだ。

――バルサでは(リオネル)メッシと並んで正GKの(マルク=アンドレ)テア・シュテーゲンが、タイトル争いのカギを握る存在として注目されるようになってきています。現在のテア・シュテーゲンは世界最高のGKだと思いますか?

ああ、それは間違いない。今のテア・シュテーゲンは絶好調で、ひょっとすると彼の人生でも最高のコンディションにあるんじゃないかな。僕はバルセロナで暮らしていて、これまで今シーズンのほとんどすべての試合を生で観戦してきた。それでハッキリと分かったんだが、彼はチームにとって非常に重要な存在なんだ。ただゴールを守るという存在ではなくて、フィールドプレーヤーが一人増えたような働きをしているんだ。後方からのビルドアップもできるし、あんなに足技ができるGKはめったにいるもんじゃないよ。

2018-03-29 Lionel Messi Marc-Andre ter StegenGetty Images

■デンベレは目を覚ましてほしい

――テア・シュテーゲンとは反対に、最近の(ウスマン)デンベレはネガティブな意味で目立っていますね。プロのフットボーラーがプライベートな理由で練習に遅れたり、時間を間違えたりすることについてどう思われますか?

デンベレはまだ若く、プロとして模範的な存在に近づくために苦労しているんだろう。だけど彼はいつか目を覚まし、ちゃんと大成してくれることを願っている。鍛錬を続けることによって大きなチャンスを得られる環境にいるんだからね。彼のような立ち位置までのし上がりたいプレーヤーは世界中にいるし、その環境で自ら成長するも、自滅するも、デンベレ本人次第なんだ。だけどもしかすると、彼は僕らが知らないところで、大きな問題を抱えているのかもしれない。クラブ側もある程度サポートする必要があるとは思うけど、今後の成長をしっかり見守りたいと思っている。

――若い選手がバルセロナの一員になるということは、やはり大きなプレッシャーがあるのでしょうか?

それは間違いなくある。ただ僕に言わせると、それはチームのプレースタイルの問題でもあると思う。一人の選手としていいプレーをすることとは別に、バルサで本当に成功を収めるためには、バルサのプレースタイルに自分を合わせる必要があるんだ。そのいい例がアルトゥールだ。彼はブラジル生まれで、まだヨーロッパでの経験がほとんどないにも関わらず、すでに結果を残している。すっかりチームに馴染んでいるし、自分の居場所を手に入れているよね。アルトゥールはやはりバルサのプレースタイルをしっかり研究して、自身をうまく順応させたからだ。彼のプレーを見ていると、シャビのことを思い出すよ。

――ブラジル人選手の話が出ました。2014年、母国開催のワールドカップでは準決勝でドイツに1ー7と予想だにしなかった大敗を喫してしまいました。その後セレソン(ブラジル代表)は変わりましたか?

ああ、ものすごく変わったと思う。チッチ(ブラジル代表監督アデノール・レオナルド・バッチの愛称)のおかげで、セレソンはとても良くなったよ。ロシアW杯では準々決勝でベルギーに敗れたけど、それでもブラジル国内では一定の評価を取り戻すことができたんだ。ただ、守備陣についてはこれからの数年で若返りを図る必要があると思う。一方、攻撃陣は以前のロナウジーニョやロナウド、リヴァウドのような、クリエイティブかつ違いを生み出せるクラック(名手)がそろっている。そのうえ、ブラジルには将来が楽しみなタレントが何人もいるからね。レアル・マドリーのヴィニシウス(ジョゼ・パイション・デ・オリヴェイラ・ジュニオール)や、来年には同じくレアル・マドリーへ移籍することになっているサントスのロドリゴ(シウバ・デ・ゴエス)のように。彼らは将来性豊かなプレーヤーで、大きな期待を寄せているんだ。

■ネイマールがパリへ行ったのは失敗だった

――セレソンのエースであるネイマールはどう見ていますか?

彼はフットボールの世界では重要な存在だよ。今までも、これからもね、現時点でネイマールに必要なことは、所属クラブで素晴らしいシーズンを送ることだ。

――ネイマールはリーガ・エスパニョーラに戻るのではないかといううわさが何度も浮上していますね。レアル・マドリーが興味を示しているとも言われています。あなたならネイマールにどんなアドバイスをしますか?

これは彼の個人的な問題でもあるから、適切な言葉をかけるのはとても難しい。僕個人の意見として言わせてもらえば、そもそもフランスへ行く選択をした時点で、ネイマールにとって失敗だったと思う。パリ・サンジェルマンは素晴らしいクラブであることは間違いない。ただ、パリにいるよりも、そのままバルサに留まっていたほうがネイマールにとってより大きく成長できただろう。僕自身リヨンでプレーしていた(2000~2004)ことがあるから、リーグ・アンがどういうリーグかも把握している。もちろんリーグ・アンは素晴らしいが、リーガ・エスパニョーラほどではないんだ。

――近年、パリSGが急激に大型補強を展開していることも関係していると思いますか?

ああ、その要素がマイナス面になっていることは間違いない。現時点でパリSGはフランスの他のチームが太刀打ちできない状況になっている構図は誰の目にも明らかだと思う。パリSGがスター選手を抱え過ぎていて、他のクラブは相手にならない。パリSGの攻撃は、クラックたちによるアンサンブルで見事なものだよね。それは見る側からすれば楽しいものだけど、所属選手が成長できる環境として理想的かとなると、ちょっと異なると言わざるを得ない。ネイマールがそのことをしっかり意識してピッチに立ってほしいね。僕が望むのはそれだけだよ。

――ネイマールは今後、どういうキャリアを歩むと思いますか?

ネイマールに多くの才能が備わっているのは周知の通りだ。だけどフットボールの場合、才能が豊かなだけでは幸せとは言えなくて、ネイマールには常に刺激的なモチベーションが必要になると思う。ピッチの外に出て、ファッションアイコンのようなおしゃれな選手になれたとしても、それで選手として成功を手にしたとは言えないだろう。さっき話題に出たデンベレじゃないけど、フットボールを仕事として向き合うことが重要なんだ。フットボールに対して真剣に打ち込んでいなければ、大きな成長は望めないんだよ。クリスティアーノ・ロナウドやメッシにとっては、フットボールが最も重要な意味を持っているからこそ、彼らは“現代最高”と言われるほどの地位に上り詰めたんだ。ネイマールにはその次を担う選手になってほしいんだけどね……。

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■選手が自身をコントロールすることが重要

――SNSの流行についてはどう思いますか? 若い選手の場合、ピッチ上でのパフォーマンスよりも“インスタ映え”に熱心な選手もいるように思えますが。

この10年でフットボールの世界はものすごく変わってしまった。7年前に僕が現役を引退した時には、まだSNSなんてそこまで身近なものではなかった。だけど、こういう状況は時代の移り変わりに付き物だし、馴染むしかないんだよ。実際にSNSはもはや社会の一部になっているからね。今では、選手たちにSNSを指導する担当がクラブの裏方としているみたいだね。SNSはプロモーションとしても影響力が強いから、そんなことまで選手にアドバイスする人がいるんだ。それこそパーティーや遊び方についてアドバイスする者までね(笑)。

――あなたにもアドバイザーがいたんですか?

ああ、アドバイザーは一人だけいたね。でもそれは昔の話さ。だけど今では10人以上ものアドバイザーが一人の選手を取り巻いているようだね。選手というのは“製品”になっていて、それが現代フットボールの定めになっている。重要になってくるのは選手自身が自分をコントロールし、しっかりマネージメントすることなんだ。だからこそ、今の選手に求められることは、数多くの選択肢の中から、自身がすべきことをしっかり選ぶことが重要だと思う。常に模範的でいることが大切で、そうでなければ成功を手にすることができない。これはサッカー選手に限らず、世の中すべての人にとって大事な規範だと思う。それがまた簡単なようで、とても難しいことなんだけどね。

インタビュー・文=ケリー・ハウ/Kerry Hau

構成=Goal編集部

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