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遠藤航、リオ組の矜持とともにロシア・ワールドカップに臨む「多分、どういう結果でも満足はできない」【インタビュー】

クラブでの代表選出会見で日の丸にしたためた決意——。「まず出場すること!! 国を背負って戦います!」。自分の立ち位置を理解している。しかし、それでは決して満足できない。経験豊かな選手が多い中で、「リオ組」の責任感と自分たちの世代が果たさねばらなない役割をよく認識している。そのためにはピッチに立たなくてはならない。ロシア・ワールドカップの本戦メンバーに選出された遠藤航、25歳。代表発表直後の5月31日、本大会に臨む強い思いを聞いた。

■3-4-3のポジティブな面と課題

——ロシアワールドカップ代表選出おめでとうございます。

選ばれることができて非常にうれしく思います。W杯という舞台は小さい頃からの夢だったので、素直に今、うれしい気持ちでいっぱいです。

——初の世界大会の経験は2016年リオ五輪でした。子どものころからの夢、ご自身にとってW杯はどういう存在でしたか?

W杯は日韓大会(2002年)や、最近だったら南アフリカ大会(2010年)をすごく覚えています。国を背負って戦う舞台で、本当に強いチームばかりが集まる大会です。国際大会という点で言えば、実際オリンピックを体験してみて、見てきたものと体験しているものは、全然違いました。今回のW杯も間違いなく厳しい戦いになると思います。全力でやりたいです。

——W杯は夢からいつ具体的な目標になったのですか?

目標となったのは、初めて日本代表に入ることができた時です(2015年8月EAFF東アジアカップ2015決勝大会)。その時からやっと日本代表というものが、W杯というものが目標に変わってきました。

2018-05-31-wataru-endo(C)Goal

——それでは5月30日のキリンチャレンジカップ・ガーナ戦についてお聞かせください。西野朗監督最初の試合でしたが、0-2で敗戦。この結果をどう捉えていらっしゃいますか?

監督が代わって最初の試合で。システムを変え新しいことにチャレンジをして、結果、両方セットプレーで失点してしまいました。負けたこと、結果に対しては非常に残念ですし、間違いなく勝たなければいけない試合でした。でも、出場した選手はうまくいった場面もあったと言っていましたし、実際チャンスを作ったシーン、ポジティブな要素もいくつか見えました。そこに対してはこれからいいアプローチができるんと思っています。

——ポジティブな要素とは具体的にはどういうところですか?

3-4-3 をやる時のメリットは、相手の4バック4枚に対して、ウイングバックが高い位置を取れば5枚で勝負できるところだと思います。前の人数を増やせる部分がすごくメリットになる。昨日の試合も何回か、(ボールを)前に入れた中でシャドーやボランチが関わって、(右ウイングバックの原口)元気選手の突破だったり、(左ウイングバックの長友)佑都選手の突破ができていました。ああいう形はあのシステムをやる上ではすごく大事な攻撃の形だと思います。

——一方、守備面は、どう見ていらっしゃいましたか?

立ち上がりは、少し前から行こうというようなゲームプランで入りました。でも、なかなか前から行けずに、相手が長いボールをシンプルに蹴ってきたので、それに対して、少し対応が難しい状況もありました。やっぱり(相手の)サイドバックに対してシャドーの選手ではなくウイングバックの選手がいかにプレッシャーに行けるか、が前から行く上ではすごく大事だと思います。そこはまだちょっととまどいながらやっていたかなと思います。でも、外から見ていて後半はすごく良くなっていた印象があります。あとは、リスクマネジメントの部分、そこはもう少し改善できるかなと思うシーンはありました。

——そのリスクマネジメントというのは、選手のスライドの部分?

それと、あとはFWの選手がどれだけ残っているのかどうか、どういうポジショニングを取っているのかですね。FWの選手の位置で後ろの選手のポジショニングは変わってくると思うんです。ガーナ戦は、相手のワントップに対して少し後ろに残り過ぎていたシーンはあったと思います。もう少し高い位置を取って守備をできるシーンもあったと思います

■W杯本戦グループリーグをこう見る

——次に、W杯本戦グループリーグそれぞれについてお話を聞かせください。最大のライバルになるのはどこだと思いますか?

どうですかね。どのチームも間違いなく強いチームなので、あまり一つを挙げるっていうのは難しいです。やっぱりこういう大会は初戦が大事だと思いますし。

——初戦はコロンビアですね。リオ五輪の時に対戦していらっしゃいますが(2△2)、印象は残っていますか?

そんなに身長が高い選手が多いわけではないんですけど、フィジカル的に強くて、組織力もすごくあるチームなので。1対1の球際も強いし、あとは一人一人の個の能力の高さがすごくあるチーム。それは間違いないと思います。

——この合宿中に、コロンビアを想定したミーティング等は実施されましたか?

いや、それはしなかったですね。どちらかというと、自分たちのやるサッカーというか、3-4-3でどう守備をするのか、どう攻撃をするのかなど、そういった練習が多かったですね。

——個々の選手についてですが、コロンビアと言えばバイエルン・ミュンヘンのハメス・ロドリゲス選手だと思います。すごい選手ですよね。

まあ、すごいでしょう、それは(笑)。左足でボールを持った時のシュートのパンチ力もありますし、スルーパスも出せますし、ドリブルで持ち運んだりもできる。攻撃の面ではなんでもできるという選手だと思います。前回のW杯ですごく活躍して、そこから本当にトップ、トップで、ずっとやっている選手なので。試合に出て戦えるのであれば、僕自身非常に楽しみです。チームとしても、そういった選手がいる中でどう対応していくのか、どうしていけば勝てるのかなど、考えることがすごく楽しみな部分でもあります。もちろん、「結果」を求めていかなければいけないので、どれだけチャレンジできるかというところが大事な部分だと思います。

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▲ハメス・ロドリゲス(右)。2014年ブラジル大会、コロンビアは準々決勝で惜しくもブラジルに敗れたが、ハメスは6得点2アシストと同国をけん引した

——もし、ご自身が守備をされるとすれば、どういうところを注意されますか?

彼だけではないんですけど、どういう守備のオーガナイズを自分たちとしてするのかどうかというところですね。もちろん、まだ、3枚でやるのか、4枚でやるのかは、監督が決めることなので分からないんですが。イメージとしてゴール前の場面では、まずは左足を抑える。できるだけ右に持っていかせるというのは大前提だと思います。あとは、クサビのボール。彼に入ったボールに対して、後ろの選手はもちろんアプローチを掛けますが、それに対してどれだけボランチや2列目の選手がヘルプできるかどうかでしょうね。

——次にセネガルのお話を。アフリカ勢との戦いというのは、特に意識されますか?

ガーナ戦を見ても分かるように、やっぱり身体能力の高さがあるのは間違いないです。それにプラスして、特にサイドの選手はスピードがあって、ドリブルで仕掛けられる選手が多い印象があります。W杯に出場するのですから、ガーナよりも間違いなくセネガルはさらに上を行くチームだと予想できます。

——一番有名なのはリバプールのマネ選手ですね。

CLの決勝を見てもよくわかるように、彼は半端ないスピードを持っています。それに対して、どういうふうに守るのか。非常に難しいんですけど、やっぱりディフェンダーのポジショニングは一つ大事なところです。あとは、彼に対して、いかにボールを出させないか、出どころにプレッシャーに行くのも非常に大事だと思います。

——ポーランドについてお聞かせください。ポーランドにはバイエルン・ミュンヘンのレヴァンドフスキ選手がいます。どこが怖い、どんな選手と見ていらっしゃいますか?

ザ・ストライカーですね。得点を取るためには何でもできる選手。高さもありますし、両足のシュートもうまいですし、強さもあるし。だから、非常にDFとしては守りづらい選手ですね。

■チームとして、いかに世界と向き合うか

——特に代表のチームメイトと対策を話したりしますか?

まだそこまで話してないです。どちらかというと、やはり今は自分たちがどうかっていうところです。自分たちのやりたいサッカーはどういうものなのか。そこにフォーカスする期間ではあると思います。

——そういう意味で、今のチームはどこまでできている、あるいはどこが足りないと感じていらっしゃいますか?

結構そこが難しいです。どこを評価するのか、みたいなところは。監督が代わる前、ハリルホジッチ監督がずっとやってきたところは、球際で戦うこともそうだし、ハードワークする部分は変えずにやるべきだと考えています。ずっとやっていた4枚も、やる可能性としてはあると思うので。そこはやり慣れていますし、完成度的にはチームとして高いと思います。それプラス、ほかのいろんな状況がW杯ではあるわけですよね。今回3バックを試してみたというところで言えば、まだまだ足りない部分はあります。でも、3-4-3がある程度、ここからの期間しっかりとオーガナイズされて、自分たちの特長を出せるようになれば、いろんな色がある代表チームになっていくんじゃないでしょうか。

——今回の国内合宿では、ほとんど3バックの練習でした? 練習では、最終ラインに入っていらっしゃったのですね。

基本的にはそうですね。僕がやる可能性としては、3バックの真ん中か、右か、どちらかだとは思います。個人的には3バックで試合に出たいんですけど(笑)。出てみたいですね。今までいろんなポジションを代表でもクラブでもやらせてもらっていますが、一番なじみのあるというか、自分のやりやすいポジションは、3バックの右か、真ん中だと思っているので。

2018-06-04-Japan-endo-asano-ideguchi(C)Getty Images

▲ゼーフェルト合宿でランニングする遠藤(中央)。バックアップメンバーとして帯同している浅野拓磨(左)、井手口陽介(右)とともに

——今までを見ていても確かに3バックのセンターかストッパーが最適なポジションだと思います。ただ、誰が監督であったとしても、様々なポジションにうまくフィットされている印象です。監督が言われたことを自分のものとしてこなすことにおいて、どういった部分に注意していらっしゃいますか?

まずは、その監督がチームとして何を求めているのか、どういうプレーを求めているのかというところです。プラス僕個人に対して、そのポジションで何を要求しているのかを把握することが、まず大事で。それプラス、いろんなポジションに入った時に、そのポジションのタスクを理解しなきゃいけない。だからポジションが変わることによって、自分の出す特長を変えるというか、引き出しを変えるというか、そこら辺は意識している部分です。

今までいろんなことをやらせてもらったので。特長といってもいろいろあると思います。もちろん、1対1の強さとかハードワークするところは、どのポジションでもベースにはなる部分ですし。あとは、サイドバックだったら、どういうふうに攻撃に関わって、どういうふうにより攻撃的に行くのか、ビルドアップの部分で貢献するのか。センターバックであれば、もちろんビルドアップも貢献するけど、どちらかというと守備でのいいポジショニングだったり、いいリスクマネジメントだったりを意識します。その割合を自分の中でいろいろ考えながらプレーしています。

——それぞれがチームの要求を把握して強みを出す。日本の武器は何だと思いますか?

やっぱり組織力、チームとしてしっかりハードワークして戦うことです。当たり前のことですが、そこで上回ることは間違いなくできるはずです。もちろん、強豪国は当たり前にそういうことをやってくると思いますけどね。その質をいかに上げられるかというところがまず大事だと思います。

——チームとして戦うと言えば、遠藤選手はアンダーカテゴリーの代表でずっと主将を務めていらっしゃいます。今A代表に来てみて、長谷部キャプテンから学ぶ部分はありますか?

もちろん、あります。長谷部さんはそんなに自らすごく声を出して引っ張るタイプではないんですけど、要所要所で締めるところは締めて、すごく存在感がある方なので。プレーももちろんそうですけど、練習の雰囲気とかそういうのも含めて、すごく周りが見えている方ですね。

——リオ五輪のチームメイト、中村航輔選手、植田直通選手、大島僚太選手。残念ながら、浅野拓磨選手と井手口陽介選手は外れてしまいました。この世代を背負う思いはありますか?

それはもちろん、あります。できれば、今回のリオ組みんなが残ってW杯に行きたかったですけど、それは残念ながら叶わなかったので。彼らの分まで国を背負って戦わなければいけない責任というのは、僕らにはあると思います。日本代表のことを考えても、僕らリオ組がもっともっとこれからA代表に入っていって、A代表を引っ張っていくぐらいの活躍をしていかなければいけないとも思っています。

——上の人たちとリオ五輪世代で何が違うと思いますか?

やっぱり経験ですね、一番は。僕はW杯は初めてで、リオ組の仲間もみんな初めてです。上の選手は当たり前ですけど、ずっと海外でプレーしている選手たちもいれば、W杯2回目、3回目という選手たちもいる。その中で若い力は間違いなく必要な部分もあるとは思いますが、やはり国際大会や大きな舞台をずっと経験している選手たちの、その経験値も間違いなく必要です。そのバランスを考えた結果、こういうメンバー構成になったと思っています。

僕はW杯が初めてなので、現時点ではもちろんスタメンではありません。でも、メンバーに選ばれたからにはしっかり試合に出場する気持ちでやっていきたい。どう転んでも、この結果は今後のサッカー人生に生かさなければいけないと思っています。

——最後に、W杯で何をしたいか、満足できるのかをお聞かせください。

もちろん、まず試合に出ることを目標にやっていきたいです。ただ、どれだけ満足するかというのは難しいです。多分、どういう結果でも満足はできない。優勝すれば違うでしょうが。でも、グループリーグを突破して、1回戦で負けても満足はできないと思うので。そういう厳しい大会になるというのは間違いないです。まずは、やっぱりしっかり試合に出て、グループリーグを突破することだけを考えたい。まず初戦に勝つことだけを考えてやっていきたいと思っています。


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