解析・イニエスタ。戸田和幸が読み解くプレーのディテール/第1回データ編

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サッカー解説者・戸田和幸氏がDAZNの番組でイニエスタのブレ―を分析。第1回はデータを用いてその才能に迫る。

アンドレス・イニエスタのヴィッセル神戸への加入は、Jリーグの歴史を見ても大きなトピックだろう。明治安田生命J1リーグ戦第26節終了時で8試合出場2得点。彼のプレー一つひとつが我々の「サッカーを見る目」をあらためて養ってくれる。DAZNではサッカー解説者・戸田和幸氏に、その才能を表すプレーの特長と戦術眼、チームに及ぼす効果などについて映像を用いて分析してもらった。ここでは、その一部を原稿化して公開する。

■「場所」を見つけるうまさ

――イニエスタ選手はすんなりとチームに溶け込んだ印象です。

神戸が採用している4-3-3はイニエスタ選手がバルセロナで慣れ親しんできたシステムです。また、ポドルスキ選手と感覚の部分で分かり合えていることもあるでしょう。僕が神戸のスタッフに聞いた話だと、チームメートともきちんと対話をしているとのこと。他の選手が圧迫感を感じていない様子も見られます。

――プレーで注目すべき点は?

まず、どこに立っていてどこを見ていて、ボールが入ったときにどういうプレーの選択をするかという点です。神戸の基本布陣は、ディフェンスラインが4枚、藤田直之選手がアンカー、斜め前にイニエスタがいて、前に3人アタッカーが並びます。

イニエスタ選手は真ん中から左のゾーンでボールを受けて展開するのですが、相手がどこに立っていて、どういう守備をしているかに対してのポジショニングがすごく上手なので、フリーでボールを受けられます。逆に、イニエスタ選手がボールを持つことで相手は引き付けられ、そうすると藤田選手や左サイドバック、逆サイドも含めて、他の選手に時間的なゆとりを与えます。

なおかつ、ボールを持ったときのプレーの選択の判断と質が驚くほど高い。神戸はボールを簡単に蹴らず、保持しながら前進していくチームです。その中できちんとボールを受けられる場所にいる。また、(味方が)プレッシングをかけられないように、自分が立つことで他の選手をフリーにしています。

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――日本人の我々と体格は変わりません。

いついかなる場所でも、常に複数の選択肢を持っていて、正しい判断ができ、それを正しく体現できるテクニックがある。爆発的なスピードはないと思うんですけど、「チェンジ・オブ・ペース」、ゆっくりするときとスピードを上げるときの使い分けもすごくうまい。

サッカー選手は、「平面」でいろんなことをキャッチしながら、プレーを想像して実行に移しますが、イニエスタ選手は「目」も飛び抜けて優れていると思います。俯瞰した視野でピッチを眺められる。だからこそ、効果的なポジションが取れて、プレーの選択を間違えない。どれだけ相手のほうが体が大きくて、スピードがあってつぶそうと思ってきても、彼はパス、ドリブル、ワンツーなどいろいろな選択肢を使いながら、相手を「無」にしてしまう力がある。

全部簡単に見えますし、そこに辿り着くにはとても難しい作業がたぶんあるんですけど、彼のプレーは基本的には「シンプル」で、その「シンプルさ」にすべて「美しさ」が凝縮されていると思います。

■ピッチの上で誰よりも多くのものが見えている

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――データを見てみると、一番目につくのがパスの精度とパス成功率です。プレッシャーのかかる敵陣でのパス成功率も下がりません。

成功率が高いのは、常に展開の予測がしっかりできており、準備がしっかり整っている状況でボールを受け取る場面が多いからでしょう。相手のアプローチが及ばないようなポジションが取れていて、また常に力が抜けています。すべてが楽に見えるくらいのスピードの中で、ボールを運んだり、ミドル、パスも含めて、いろいろな選択をできて、しかも技術的なブレが出ない。後ろから寄せられても、背中に目がついているんじゃないかというくらい、相手がどちらから寄せてきているのか、しっかり把握した中でうまく逆を取っています。

いろいろなものが見えているから、先の展開も予測できるんだろうし、相手の守備が次何をしてくるのかいくつかある中で、「これだろうな、じゃ、ここのポジションだ」というところで全部先手が取れている。

それと、歯を食いしばって100%のスピードでプレーすることがないんです。先に話した「チェンジ・オブ・ペース」ですね。例えばボールを受けたときには、グッと速いスピードを使いますが、イニエスタ選手は常に力が抜けています。(力が)抜けた状態のほうが動きは正確になる。スピードが上がり過ぎないぶん、より広い視野が取れる。少し先の未来が予測できていて、そこからの選択肢の選び方が誰よりも正確で技術もある。

■パス成功率

・イニエスタ加入前16試合平均:83.25%
・イニエスタ加入後7試合平均:86.3%

■敵陣パス成功率

・イニエスタ加入前16試合平均:78.08%
・イニエスタ加入後7試合平均:81.4%

※イニエスタ加入後出場試合のみ/データ参照:Opta

■バルサと神戸、そのプレーの違い

――昨季のバルセロナと今の神戸のスタッツを比較するとパス数、タッチ数ともに増えています。

バルセロナのほうが縦の速さがある。あとはメッシ選手の存在でしょう。攻撃の最終局面でタクトを振るうのはメッシ選手でしたから。今の神戸だと逆にイニエスタ選手のところが最終局面に近い。敵陣の一番深いところ(アタッキングサード)でボールを出す回数は、今のほうが増えているんじゃないでしょうか。

――イニエスタ選手加入後、1試合平均のチームのパス数が30~40上がっています。

彼の加入により、チームはボールを保持できるようになりました。相手も神戸陣内でハイプレスで止めるというよりは、少し下がったところでボールを持っていることも多い。ボールを保持できるということは、チーム全体がコンパクトな状態を保ち、適切な距離のまま敵陣に入って行けているということでもあります。あとはそこからどうゴールに結び付けるか。ラストパスを出していくところ、それも連係あってのことだと思うので、今後攻撃の選手とどれくらいシンクロができるのかが楽しみです。

――イニエスタに影響を受けてほしい選手は?

藤田選手はサガン鳥栖でプレーしていたときからずっと見てきました。もともとは4-4-2の2枚(のボランチの一人)で、出て行ったときのこぼれ球を拾う、守備をサボらないハードワーカーです。自分とも少し似ているところがありますね。2016年に神戸に移籍しましたが、今は鳥栖時代とは逆で「動き過ぎない」ことと「ボールを次に渡していく」仕事をしなきゃいけない。「ヘソ(アンカー)」ですから。

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今はイニエスタ選手が左前にいるので、基本的に自身はフリーになりやすくなっていると思います。相手チームはまずイニエスタ選手を意識しますから。あとはそこできちんとポジションが取れて、的確にテンポ良くボールが預けられるかですね。

イニエスタ選手の一番近くでプレーしていていろんな影響を受けるでしょう。インスパイアされて頭の中が整理されていけば…すでに「藤田からイニエスタ」に質の高いパスも出始めているので…そういう意味では羨ましいです(笑)。周りの選手たちもどんどん変わってくると思います。「こんなタイミングでここにボールが出て来るんだ」とか「こんな優しいボールが出てくるんだ」とか。そういうところを感覚として身に付けていけば、お互いにできることは増えますよね。選手個々のレベルが上がることに繋がると思います。

――戸田さんが対戦相手の監督ならどう対策しますか?

僕が監督だったらスタートを潰しにいきます。イニエスタ選手にボールが入らないようにするか、できるだけ神戸陣内で後ろ向きでボールが入らないようにして、(イニエスタに)絶対に前を向かせない。でも、ずっと続けられないので守備をするゾーンを最低二つは持っておいて、ボールを持たせるなら最低ブロックの外で持たせる。それでも守れる自信はないんですけど。

――サポーターはどんなところを見ればいい?

まずはボールを受ける前をぜひ見てください。ボールに寄り過ぎないな、離れていっているなとか、どのタイミングで首を振っているかとか。あとはボールを受けたときの技術と判断。一切無駄がないんです。すぐ次のプレーに移動できるところにボールをコントロールしています。時間的にもスペースという意味でも、すごく余裕がある状態でボールを受けています。(1)まずはボールを受ける前に何をしているのか(2)ボールを受けたときに何をしているのか(3)あとは「チェンジ・オブ・ペース」。ガッとスピードを上げるところと緩めるところ、緩急ですね。

――あえてダメ出しするとしたら?

守備! 彼の中には感覚はあって「自分が出たらこう来るんだろうな」というのは あるんですけど、もっともっとチームで共有する必要がありますね。例えばファーストディフェンダーの決め方、決めたものに対しての2人目3人目は誰になるのか。これはある程度チームとしての型がないと感覚じゃできないです。その部分はまだ神戸は手ををつけられていない感じがします。

逆に言うと対戦相手も自分たちがボールを保持したときにどこから進入したらいいか、どのゾーンでボールを持てば、神戸は機能不全に陥るのかとかをやってほしいです。イニエスタとポドルスキのゾーンからは割と入って行きやすいかもしれないですよね。守備の強度と連続性はチームとしてまだまだなので、どの対戦相手がやってくるのかなというところも楽しみです。

(第2回:プレー編に続く)

■戸田和幸プロフィール

桐蔭学園高を卒業後、清水エスパルスに加入。2002年ワールドカップ日韓大会では守備的MFとして4試合にフル出場し、ベスト16進出に貢献。その後は国内の複数クラブ、イングランドの名門トッテナム、オランダのADOデンハーグなど海外でもプレー。13年限りで現役を引退。プロフェッショナルのカテゴリーで監督になる目標に向けて、18年からは慶應義塾大学ソッカー部のコーチに就任。またサッカーを「言語化」しながら解説者として年間150試合以上の試合解説を担当。

戸田和幸公式Twitter
戸田和幸公式Instagram
戸田和幸公式ブログ

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