西野ジャパンへの隠しきれない不安。日本代表は本当にポジティブな状況なのか

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©Getty Images
強豪相手にどれだけ臨機応変なサッカーができるのか、それを確認する“試金石”となったスイス戦は、スコア以上の完敗だった。課題山積の西野ジャパンは本当にポジティブな状況にあるのか?

■スイス戦で浮き彫りとなった明らかな準備不足

何とも言いがたい不安に襲われた。これがあと10日でワールドカップの初戦を迎える日本代表チームなのかと――。

FIFAランキング6位のスイスに対して、守備の確認を主なテーマに掲げて臨んだテストマッチ。できるだけ前から積極的にボールを奪いに行き、それができなければ引いて守る。チーム全体が連動しながらコンパクトな陣形を保持しつつ、そこから状況によって速攻と遅攻を使い分けて攻撃に転ずる。急ピッチでのチームづくりが求められる西野朗監督、そして選手たちにとっては、強豪相手にどれだけ臨機応変なサッカーができるのかを確認する“試金石”となるゲームとなったが、そこで見えたものは、あらゆるところに山積された課題だった。

0-2で敗れた試合後、囲み取材に対応した日本サッカー協会の田嶋幸三会長は「西野さんのやろうとすることは非常にできてきた。コロンビア戦に向けての準備は、僕は(残り10日間で)十分だと思っています」と話した。また、記者会見に臨んだ指揮官も収穫と課題を挙げつつ、「チームとして危機感は全く感じていません」というポジティブなコメントしている。もちろん必要以上にネガティブになることは避けていいのだが、この現状を踏まえた上で本音を話しているのだとしたら、それこそ不安で仕方がない。

確かに国内最終戦となったガーナ戦に比べれば守備の連動性は向上しており、複数選手で積極的に追い込むシーンは何度も見られた。特に前半は最前線から最終ラインまでの距離を30メートル程度にキープしつつ、裏のスペースを狙ってくるボールもケアできていた。だが、このまま前半をスコアレスで折り返し、後半にどう出るかを見たいと思っていたところで大迫勇也が負傷交代。そのスキを突かれて右サイドを突破されてPKを献上。スイスに先制を許してしまう。さらに後半、自分たちのCKから前線でボールを奪い返せずにカウンターを許し、ロングフィードからジェルダン・シャキリにドリブル突破を許して失点。試合運びの拙さを露呈した。

一瞬のスキで失点してしまうのが、ワールドカップの怖さ。前半、スイスにピンポイントの左クロスから決定的なシーンを作られた。後半には川島永嗣の不用意なスローを奪われてシャキリにロングシュートを放たれている。これも本大会で対戦するストライカーのクオリティを考えたら、高確率で決められていたであろうシーン。チームとしてのオーガナイズと戦い方の整理、そして集中力の維持は、世界と伍する上で必要不可欠だ。

しかし、まだ細かなものはしっかりと詰められていない。センターバックの吉田麻也は「選手間の意識の差を埋めていかないと。前の選手と後ろの選手、サイドと中央の選手、出ている選手と出ていない選手……。同じように戦い方を理解しておかないと苦しくなる。そこも話し合っていくしかない」と話している。

最終ラインで吉田とコンビを組んだ槙野智章も「ワールドカップの3試合を見据えて戦うことで言えば、今日のように点を取りに行かなければならない状況で、どのタイミングでオープンにするのか、どこでリスクを冒すのか。時間帯を考えてメリハリとゲーム展開をしっかりと頭に入れて、前の選手と後ろの選手が共通意識を持つことが大事」と課題を挙げた。

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とにかく本大会に向けたシミュレーションができていない印象が残った。例えば、グループステージの3試合でビハインドを背負った場合、初戦で1点をリードされた状況ならば、いきなりオープンな戦いに持ち込むのではなく、そのままのスコアで耐えて勝ち点1を得るべく終盤にワンチャンスを狙うことも考えられる。吉田麻也は「ビハインドを負っている時間帯のプレスの掛け方は話し合っていない」と説明したが、それはまだチームとして細かく状況を想定したトレーニングができていない証拠である。

本来ならば対戦相手に応じた戦い方を模索し、相手の対策を綿密に練り、グループステージでいかに勝ち点を稼いでいくかを考える時期。すなわち総仕上げの段階に入っていなければならないが、西野ジャパンは自分たちがどうするかを考えることで精いっぱいになっており、本大会を見据えた準備に至っていないのが現状である。しかも、残念ながら自分たちがどんなシチュエーションで何をするべきかも確立できていない段階にある。

守備面だけではない。もし仮に初戦でコロンビア相手にリードを奪うことができたら、そこからどうやって勝ち切るのか。その意思統一はいつ、どうやって図るのか。机上で話し合ったとしても、実践できるのは12日のパラグアイ戦のみ。時間はあまりに限られている。

しかも西野監督は今回のスイス戦とパラグアイ戦で全選手を起用すると明言しており、次戦はフレッシュなメンバーで臨むことが予想される。パラグアイ戦の選手起用や確認事項について聞かれたキャプテンの長谷部誠は、「そこは監督が決める部分。選手とコミュニケーションを取っていかなくてはいけない部分でありますが、本大会まで残り1試合なので、そこを大事にしなければいけない」と話すにとどまった。

実際、パラグアイ戦で新たなメンバーによる収穫があるかもしれない。それは大歓迎だが、そのストロングポイントが主力組と目されるメンバーに入って機能するかどうかは不明瞭。そもそも世界で通用するかどうかも明確には見えてこない。

西野監督は「(パラグアイ戦までは)常に可能性を最後まで求めて、コロンビア戦にどう入っていけるか。チームの中ではその時点で選手が変わっても、おそらく成立する」と話しているが、本当にパラグアイ戦で選手を大きく入れ替えるとしたら、いずれにしても確認すべきものを試合の中でチェックができないままコロンビア戦に向かうことになってしまうだろう。

■見失った「戦う、走る、出し切る」という原点

守備に関しては課題を露呈しながらもスイス戦である程度の前進を手にすることができたとしよう。だが、攻撃はどうなのか。

ここまで守備を中心に作ってきたチームだけに、結論から言えば、攻撃面の不安は非常に大きい。

「(攻撃に)手詰まり感があった。どうしても迫力がないというか、アイデア、精度が明らかに欠いていた。ここまでトレーニングで守備に時間を割いていたが、攻撃面は間違いなく改善しなくてはいけない」(長谷部誠)

「チームとしても個人としても、何か一つストロングポイントを持ってワールドカップに行きたい。(パラグアイ戦まで)3日間しかないですけど、話し合いながら練習して、それを見いだしたい」(香川真司)

正直、攻撃に関しては個人戦術頼みに近い状況にある。選手の言葉を借りれば、チームとしてのストロングポイントすら見いだせていないことになる。しかし、本大会までの時間を考えると、個の力を組み合わせる時間もなければ、ユニットごとに機能させるマジックも期待薄。いきなりすべてがスムーズに運ぶことが難しいのは承知の上だが、一つひとつ突き詰めなければならないことがあまりに多すぎる。

吉田はスイス戦後に「やるべきことは多い。建設的にはできていると思いますけど、何より時間がないので、ここを一日でも早く詰めて、構築していきたい」と話したが、そう言葉にして前を向かなければならない状況に追い込まれているように見えた。

そもそもガーナ戦で3バックを試し、スイス戦で守備を確認して、パラグアイ戦で攻撃を仕上げることなどできるわけがない。ましてはそれがワールドカップで通用するレベルに達するかどうかは言わずもがなだろう。

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あらゆる部分に残る不安を明確に言葉にしたのが、歴戦の経験を誇る長友佑都だ。

「まず厳しいという一言ですね。これではワールドカップでは勝てない。パスをつなぐところ、パスの精度、シュートの精度……。結局、すべてのクオリティがやっぱり相手よりも劣っていたら勝てない。単純にクオリティが劣っていることは認めなければいけない。ただ、僕も含めてもっと走れないかと思う。もっとガムシャラにプレッシャーを掛けて、そこではがされたとしても二度追いをして、スプリントをして。一人ひとりが走っているのかと言われたら、走っていないんじゃないかとも思う。ボールを取った時に、誰がスプリントで裏を狙って走っているのか、それを続けているのか。単純な部分ですけど、サッカーは走らないと勝てない。もちろん走りのクオリティも大事ですけど、クオリティで負けているんだから相手よりも走れなかったら勝てない。正直、僕も答えが出ていないけど、やり続けるしかない。もうやれることをやるしかない。それしか言えない」

思い返せば昨秋、ブラジルに敗れた後のベルギー戦で善戦した際、日本代表が本当に一丸となってチームのために走り、戦ったことがあった。自分がボールを取れなければ、次に寄せてくる選手に取らせよう。少しでも有利な状況で受け渡そう。チーム全体で戦う意識を高く持ち、球際激しく、精神面でもタフに戦った。そしてチームのために全員が走った。結果、試合には敗れたが、チーム全体で戦う日本らしさはしっかりと見せることができた。

西野ジャパン発足以降、「テスト」や「確認」、「連携構築」という言葉にとらわれすぎて、戦う、走る、出し切るという原点を見失っていたようにも思う。この長友の言葉は、袋小路にはまり込みつつある西野ジャパンに活路を見いだす一つのヒントになるかもしれない。

あれもしたい。これもしたい。もっとしたい。もっともっとしたい。だが、限られた時間の中で夢を見るには、あまりに猶予がない。細かな戦術を詰めなければならないのだが、残念ながら時間がなさすぎる。パラグアイ戦を経て、コロンビアとの初戦を迎えるまで残り10日。本大会に向けて課題山積の西野ジャパンは、多く抱える不安を払拭して、本当に十分に仕上げることができるのだろうか。今はとにかくこの心配が杞憂に終わることを願うばかりだ。

文=青山知雄

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