西野ジャパンは「カメレオン」的に戦う。選手たちに試される適応力

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Koji Watanabe
5月21日に海外組の集合から始まった西野体制の初合宿。発足1週間のトレーニングを総括する。

2018年ロシアワールドカップに挑む日本代表。5月30日のキリンチャレンジカップ・ガーナ戦を経て、最終登録メンバー23人が31日の16時に発表されることが正式決定した。このガーナ戦が選手たちのアピールの場となるが、ここまでの合宿はどのような内容で行われ、選手たちには何が求められたのか? 8日間のトレーニングを振り返り、見えてきた西野ジャパンの形を考察する。

■理想は2010年岡田ジャパンのフィジカル調整

西野朗監督率いる新生ジャパンは21日から千葉県内で8日間の第1次直前合宿を行ってきた。コンディション調整からスタートし、全員が揃った段階から3-4-3の新布陣に着手するなど、盛り沢山の内容となっている。

初日から合宿に合流したのは本田圭佑(パチューカ)、岡崎慎司(レスター)、吉田麻也(サウサンプトン)、香川真司(ドルトムント)、大迫勇也(ケルン)、酒井高徳(HSV)、原口元気、宇佐美貴史(ともにデュッセルドルフ)、武藤嘉紀(マインツ)、浅野拓磨(シュツットガルト)、乾貴士(エイバル)の11人。この中で右太もも前打撲を負っている乾はホテルで調整し、左足首負傷の岡崎も別メニューとなった。

それ以外の9人がまず取り組んだのは、一定時間内にダッシュを繰り返す持久力テスト。その後、3人1組のボール回しなどを入れ、再びランニングを行ったが、その速度も選手によって大幅に異なり、コンディションの違いが明らかになった。

翌22日の走力テストも同様で、スピードを上げても心拍数が上下動しない武藤はハイペースで走り、原口や宇佐美はそれに続く速さでランニング。シーズン中の出場回数が少なかった香川や浅野、逆に試合出場が多かった吉田や本田はゆっくりしたペースで走っていた。こうしたアプローチは23日に合流した槙野智章(浦和)ら4人、24日から参加した柴崎岳(ヘタフェ)ら7人、25日に加わった長谷部誠(フランクフルト)らも同じ。「個々のコンディションによってトレーニング強度にメリハリをつける」という考え方が鮮明になっていた。

2014年ブラジルワールドカップを指揮したアルベルト・ザッケローニ元監督も、この4月に電撃解任されたヴァイッド・ハリルホジッチ前監督も「選手の状態に関係なく猛烈な走り込みを課す」という方針だったため、「合理的」になったのは間違いない。

「メチャクチャ走った前回(4年前)とは完全にアプローチが変わりました。試合に出ていない選手、ケガをしていた選手と状況がいろいろ違うので、それによってプログラミングされてると思うし、その説明も受けています。こちらのほうが建設的かなと思います」と吉田も前向きだ。走らされる側の選手が納得して取り組めているのはやはり大きい。

この調整方法は、岡田武史元監督(現FC今治代表)が率いた2010年南アフリカW杯時のやり方と酷似している。当時も早川直樹コンディショニングコーチが中心となって、心肺機能の計測を入念に行った。スイス・サースフェーでの高地合宿では検尿や採血も何度か実施しており、選手のフィジカルコンディションを緻密に管理する体制が取られた。

8年前の岡田ジャパンも大会前のチーム状態は最悪で、戦い方を急に変えるような緊急事態に直面したものの、フィジカルの調整だけはスムーズに進んだ。指揮官も計測した数値を基準に高地で走れる本田、松井大輔(横浜FC)、大久保嘉人(川崎フロンターレ)らを攻撃陣に抜擢。それが奏功し、日本は16強入りという成果を手にした。日本サッカー界にとっての貴重な成功体験をあらためて有効活用しようとしている点はプラスに捉えていいだろう。

■ハリル時代より増えた選手同士の会話

2018-05-26 Nishino Akira Japan

一方、戦術面でも3-4-3システムの導入に乗り出した。全員が揃った25日に西野監督が「3バック? それも考えています」と断言し、翌26日からは本格的なトレーニングを行っている。

徐々にピッチエリアを広げていき、メンバーも変えながら約束事を徹底。非公開だった28日にはフルコートでのゲーム形式も実施した模様だ。

「4バックはみんなやり慣れている部分はあるので、『今はとにかく3バックにトライしてみよう』という感じだと思います。両方の形を持っているのは自分たちの強みになると思うし、このトライはすごく面白い。個人的に後ろでも中盤でもどちらでもできるので、自分の強みを生かしてやっていきたい」と、リベロに入るキャプテン・長谷部はポジティブに語る。

6月19日のW杯初戦・コロンビア戦(サランスク)まで3週間という中、新たな戦術に取り組むのは無謀にも思えるが、選手たちは大きな目標が示されたことで、より新鮮にトレーニングに向かえている様子。ピッチ内外でのコミュニケーションも増え、選手同士が話し合いをする機会も目に見えて多くなった。

それはハリル時代との明らかな変化だ。日本代表がWで成功しようと思うなら、こういった一体感や結束力ある雰囲気が必要不可欠と言える。

ただ、3-4-3が短期間で使える状態になるのかどうかはまったくの未知数。ガーナ戦は長谷部がリベロを務め、右ストッパーに吉田、左ストッパーに槙野、右ウイングバックに酒井宏樹(マルセイユ)か原口、左ウイングバックに長友、ボランチに山口蛍(セレッソ大阪)と柴崎、2シャドーに宇佐美と原口、もしくは本田、1トップに大迫という陣容でスタートすると見られるが、全体が引きすぎて5バック気味になったり、中途半端な位置にいる相手へのチェックが遅れたり、攻撃に厚みが出ないなどの問題も想定される。

そこで選手たちがどう判断し、修正していくのか。「自己判断力」は、決め事の多かったハリル時代以上に求められてくる。もともと日本人は自由を苦手とする傾向が強く、むしろ規律が多いほうがやりやすいと感じがち。だが、今回は細かいルールを設定し、徹底している時間の余裕がない。だからこそ、臨機応変さが強く要求される。3バックに慣れている長谷部や吉田が中心になって、自分たちで解決策を見いだしていくしかない。

26、27日の練習では、サブ組が4-2-3-1、アンカーを置いた4-3-3、中盤ボックス型の4-4-2なども試された。西野監督は3バックのみならず、4バックにも変化をつけていこうという姿勢を見せている。そういった「カメレオン的な戦い方」が今の日本は可能なのか。いずれにせよ、今回のガーナ戦はフィジカル・戦術の両面で重要な試金石になるのは間違いない。

文=元川悦子

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