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西城秀樹さんに追悼の白星を捧げた川崎F…殊勲のヒーローは“37歳のヤングマン”

■重要なゲームで自身5度目の複数得点

「僕が1試合で2点取るなんて、めったにないこと。ひょっとしたら、西城さんが力を貸してくれたのかな」

気持ちの入った一戦だった。ゴールデンウィークに無得点で連敗を喫していたホームゲーム。そしてこの日は5月16日に急逝した西城秀樹さんの追悼試合でもあった。

清水エスパルスを等々力陸上競技場に迎えた明治安田生命J1リーグ第15節。ロシア・ワールドカップ開催に伴う中断前のラストゲームは、チームにとってもクラブにとって非常に重要となる試合。ここで37歳の中村憲剛が年齢を感じさせないプレーを見せつけた。

まずは19分。「ボールを置いた瞬間、これはいけるかもと思った」という直接FKが鮮やかな軌道を描いてゴールネットを揺らす。中村にとっては2016年3月のヴァンフォーレ甲府戦以来となる直接FKでのゴールとなった。

「壁に高い選手を並べていたので、最初は誰かに合わせようかなと思ったけど、GKがかなり壁を信頼しているポジショニングだった。だから、壁を越せばいけるんじゃないかと。2年前に甲府から決めた時も置いた瞬間に『入る』と思った。何かが降りてきた感じでした」

ゴールを決めた中村は、ピッチサイド中央に構えていた中継カメラマンから手招きを受けて走り、おなじみのBKBパフォーマンスを披露。場内をヒートアップさせる。

圧巻だったのは、57分に決めた自身2点目だ。一瞬のスキを見逃さず、前線から激しくチェイシング。河井陽介からボールを奪取し、試合を決める3点目を流し込んだ。

「相手選手が完全に背中を向けていて、僕の存在を感知してなかったと思った。トラップした瞬間に(ボールが)離れたんですけど、自分の存在を分かっていれば、ああいうトラップはしない。それで『もういける』と思いましたね」

今シーズンは主にトップ下で起用されている中村だが、試合展開に応じて臨機応変に役割を変えている。時には最終ライン近くまで戻ってボールをさばき、時には最前線まで全速力で駆け抜けて決定機に絡む。先のゴールシーンで見せたように、果敢なプレスで守備のスイッチを入れる役割を担うシーンも珍しくない。

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■進化し続ける“37歳のヤングマン”

試合展開を読んだ獅子奮迅の働きは、まさに機を見るに敏。一瞬で試合を決める怖さを持ち合わせた37歳は、チーム内の誰よりも動き、アグレッシブな姿勢を見せ続けている。西城さんのヒットソングでいうならば、“ヤングマン”だ。

試合を決める3点目をマークした中村は一目散にゴール裏へ走り出すと、BKBパフォーマンスにつづいて『ヤングマン』のYMCAポーズを見せ、腕に着けていた喪章を天に掲げた。

西城さんが初めて等々力で『ヤングマン』を披露したのは、川崎Fが初めてJ1に昇格した2000年。クラブ一筋16年目となる中村も西城さんへの思いを改めて口にする。

「すごくショックだったし、残念なニュースでした。西城さんは僕がフロンターレに入る前、3,000人とか4,000人の中でも歌っていただいていた。そんな中で昨シーズンは優勝を報告できましたし、今日も勝ちを報告できたのは個人的にはすごくうれしい。すごくご尽力いただいた方ですし、今の等々力の雰囲気を作るうえで、間違いなく大きな存在になった方だと思います」

西城さんに追悼の白星を捧げた清水戦、この試合でJ1通算419試合出場を記録した中村は、藤田俊哉(元名古屋グランパス)が持っていた大卒選手のJ1通算試合出場記録に並んだ。

「うれしいです(笑)。俊哉さんは419試合で終わった中で、まだ自分は2点取れている。まだまだやれることを見せたい。将来的には(車屋)紳太郎や(谷口)彰悟たちに抜かれると思いますけど、この後も試合に出続けて、どんどん積み重ねていきたい。毎日しっかりと練習することでこうやって結果も出る。だからサッカーはやめられないし、本当に楽しいと思う。負ければ一週間ずっと悔しい。選手はそうやって成長していく。四百何試合もやらせてもらって、すごくそう感じているし、ありがたい。だから楽しいんだなって。だから、これからも頑張ろうと思います」

周囲が期待を寄せていたロシア・ワールドカップ出場は難しくなったが、重要なゲームで改めて自身の存在価値をしっかりと見せつけた。清水戦の翌21日からはチームとして長らくサポートを続けてきた岩手の陸前高田へ足を運び、現地で東日本大震災の復興支援活動を行う予定になっている。中村はここで感じたものをも新たなパワーとするはずだ。西城さんへの感謝の思いとサッカーへの向き合い方を再認識した“37歳のヤングマン”。

J1での419試合で5度目の複数得点を決めた中村が、新たな刺激を受け続けながら、さらなる高みを目指し続ける。

取材・文=青山知雄

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