Julian Draxler PSG 14092018

苦境に立たされるドラクスラー…ドイツ代表とPSGで置かれる難しい状況とは?

現地時間13日に行われたUEFAネーションズリーグのドイツとオランダの一戦は、0-3でドイツの完敗に終わった。試合後、のろのろとピッチから引き上げる選手たちの中で、カメラが捉えたのはユリアン・ドラクスラーとリロイ・サネの姿だった。試合前の記者会見では明るい表情を浮かべていた2人だが、このときのサネは唇の動きから発言を読み取られるのを恐れるかのように口元を手で覆い、対するドラクスラーは興奮した身振りを見せていた。

■口にしたドイツ代表への遠慮なき批判

2人が何を話し合っていたのかはわからない。しかしおそらくドラクスラーは、ネガティブな言葉を発していたに違いない。実際、その後のミックスゾーンで思いをぶちまけている。

「僕たちはあまりにも相手にとって無害で、あっと驚くようなプレーがほんの少ししかできていない。何か際立ったことをやってのけるアイデアが欠けているんだ。パスを回し続けていても、最後にはボールを奪われてカウンターを仕掛けられる。こんな調子で続けていくわけにはいかないよ」

この発言は、以前トニ・クロースやマッツ・フンメルスが批判を口にしたときのように、仲間を奮起させるため、準備した言葉には聞こえなかった。ドラクスラーは、ただ自分の目に映ったままの真実を語ったにすぎなかったのだ。

おそらくこの発言は、敗戦後に聞かれた様々な選手のコメントの中で、最も衝撃的な発言だったといえよう。それはあまりにも遠慮がなく、まさに赤裸々な批判であったからだ。それにこの日、ドラクスラー自身も2度に渡る大きなミスを犯し、失点を招いた張本人だった。批判の声が挙がるのも理解できる。

普通ならオランダ戦のようなひどい試合の後では、チームの主力となって戦ったとは言えない選手は沈黙したまま報道陣のそばを通り過ぎてしまうところだろう。ところがドラクスラーは、率直に2度の失点の責任を認めはしたものの、チームに対して抱いている自らの根本的な不満を言わずにはいられなかったようだ。それによって自分のミスがいっそう脚光を浴びることになるのを知っていたにも関わらず……。

■自らの役割を模索するとき

このように、代表チームの中でドラクスラーは現在微妙な立場にある。確かに彼はマヌエル・ノイアー、クロース、トーマス・ミュラーらとともに2014年のブラジルW杯で優勝を果たしたメンバーの一人だ。そのため、チームの分裂問題が取りざたされる際には、ドラクスラーは成功を収めたベテランたちの一人だと見なされるが、一方で新たな問題が話題に上ると、ベテランのうちには数えられず、今度はサネやユリアン・ブラントらを中心とする新世代の一人として扱われてしまうのだ。

例えばそれは、ヨアヒム・レーブ監督の試合後の言葉からも受け取れる。レーブ監督は試合後、途中出場した選手たち――サネ、ブラント、ドラクスラーがゲームを活気づけたことを評価した。しかしレーブは「若い選手たちにはまだまだ多くの時間が必要だ。彼らに目を見張るような働きを期待するわけにはいかない」とも付け加えており、監督の言う若い選手の中にはドラクスラーも含まれていたことが伺える。

Julian Draxler GER NEDGetty

一方で、以前のドラクスラーはチームの中で今とは全く異なる役割を果たしていた事実がある。2017年のコンフェデレーションズカップでは、彼はキャプテンとしてベテラン不在のドイツ代表を率いて優勝へ導き、最終的には大会最優秀選手にも選ばれた。それから指揮官はドラクスラーを完全に信頼し、左サイドのポジションにおける第一の選択肢とした…はずだった。

だが、今は事情が変わっている。W杯では、胸躍るアイデアを追い求めるレーブはドラクスラーに代わってマルコ・ロイスを配し、次にはティモ・ヴェルナーを置いた。今のところウィングのポジションではヴェルナーが頭一つ抜けており、もはや昔ながらの10番の役割は存在しない。ドラクスラーは代表チームの構成メンバーとしても、ピッチ上のポジションにおいても、自分の役割を探さなければならない状況にあるのだ。

■ドイツ代表としての“自覚”

JULIAN DRAXLER GERMANY

では、ドラクスラーの明白な批判をどう評価すればよいのだろうか。問題の発言から、「ドラクスラーがはっきりした目標を持ち、自分を顧みる若者であることがわかる」と読み解いたのは、ユース時代に指導していたディルク・ライメラー氏である。

ライメラー氏は現在、シャルケのU17チームで若手育成部門の責任者を務め、ヘッセン州フットボール連盟でチームコーディネートを担当する指導者となっている。ドラクスラーについてこのように説明する。

「忘れてはならないのは、ドラクスラーには多くの経験があり、必ずしも平坦ではない道のりを経てきたということだ。彼はフェリックス・マガトの率いるシャルケでプロの道を歩み始め、パリで国際的な経験を積み、ついにコンフェデレーションズカップでキャプテンを任されるところまでたどり着いた」

同氏はオランダ戦後のドラクスラーの発言を「国を代表するチームという重要な問題と根本から取り組んでいる証拠」と捉えているという。

「ドラクスラーは自分がフットボールの分野でドイツという国に対して責任を負っていることを自覚しているんだよ。彼は子供たちや少年たちの手本になる存在なのだから。少年時代の彼は、自分が一番すごい選手なんだと吹きこまれるようなことがたびたびあって、だからヴェストファーレン州代表ではうまくやっていくことができず、代表選手になるのも遅れてしまった。ドラクスラーは非常に困難な道のり乗り越えたからこそ、ドイツを担うフットボーラーとしての自覚が育ったんだと思う」

■PSGでの立場も危うく…

ドラクスラーにとって深刻なのは、代表での立ち位置だけではなく、所属クラブであるパリ・サンジェルマン(PSG)でも困難な状況に置かれているということだ。昨シーズンはウナイ・エメリ監督のもとでレギュラーメンバーの一人となり、多くの試合に出場することができた。だがトーマス・トゥヘル監督指揮下では、難しい状況がドラクスラーを待ち受けており、出場時間が限られている。

彼の役割が小さくなりつつあるという状況は、クラブと代表の共通点である。要するに、ドラクスラーはPSGでの活躍によってレーブ監督にアピールする必要があるだけでなく、ドイツ代表で活躍してPSGにアピールする必要もあるということだ。

Julian Draxler PSG 14092018

これまでマリオ・ゲッツェやイルカイ・ギュンドアンのようなビッグネームとも関わったことのあるライメラー氏は、「トップチームに目を向ければ、中心的な役割を果たすクリエイティブな選手の置かれた状況はどんどん難しいものになっている」と説明する。

「そういう事情のもとでは、クラブを移すことも役に立つかもしれない。ドラクスラーやマリオのような選手がヨーロッパのトップチームでプレーせずに、彼らなしでは結果を出せないような中堅クラブでプレーすれば、創造性は伸びるかもしれない。そうすれば、いずれは代表でも中心になって活躍することができるだろう」

少しずつではあるものの、ドラクスラーはPSGで前進する様子を見せている。先日のリーグ・アン第10節アミアン戦では久々にゴールを決め、アピールにも成功した。これがドラクスラーが再び息を吹き返すきっかけになれば、代表でのプレーにも変化が現れるはずだ。

■“本拠地”でアピールならず

とはいえ、今の“ドイツ代表”でのドラクスラーはレーブのスターティングイレブンの中に再びポジションを勝ち取らなければならない立場にいる。

Antoine Griezmann France Germany Nations League

フランス戦で、ドラクスラーはスターティングメンバーに戻ることが期待されたが、再びベンチスタートとなり、ドイツは1-2で敗れた。彼は自らのクラブの本拠地であるパリの観衆の前で晴れ姿を見せるチャンスだったが、途中出場しながらそれもかなわず。レーブは試合後に「ベテランと若手をミックスしなければならない」と述べており、またもやドラクスラーの“微妙な立場”を指摘されているようだった。

13日のオランダ戦後、ドラクスラーは「こんな調子で続けていけば、僕たちが世界王者の座を取り戻すのはずっと先のことになるだろう」と話したが、まさにそれが現実になろうとしている。

ライメラー氏は「彼は危機を回避するのに驚くような解決策を見つけ出すし、自分でも相手ゴールを脅かすことができる。何より大事なのは監督に信頼されることだ」と助言するが、多くの問題を抱える今のドラクスラーにとっては決して簡単なタスクではない。

文=ステファン・ペトリ/Stefan Petri

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