2018-09-12-doan-minamino(C)Getty Images

良い仕掛けだけでは満足できない!結果の世界で生きる堂安のプロセス、南野のゴール

ドリブルでワンツーで。あくまでもゴールに向かう。前を向き球際でも戦う選手たちのプレーはまさに「新生」という形容にふさわしいものだった。期待感に満ちていた森保ジャパンの初陣。その立役者でもある堂安律(フローニンゲン/オランダ)と南野拓実(ザルツブルク/オーストリア)。10代で欧州に渡ったこの2人には共通したこだわりがある。彼らを育成年代からつぶさに取材してきた川端暁彦氏が見た2人の決意と変化とは。

■「微妙」だった堂安の表情

もちろん、「そりゃどっちも大切だろう」と言ってしまえばそこまでの話なのだが、重さの置き方の程度問題である。

欧州へ渡った日本人アタッカー(そして実はGK)がそろって語るのは、「ゴール」という結果の重みと、そこに対する考え方、価値観の決定的なまでの違いだ。「アタッカーは数字で評価されるものなので」と語っていたのは伊藤達哉(ハンブルク/ドイツ)だが、堂安律もまた「(欧州に行って)得点に対する考え方は変わった」と言っていた。

ミックスゾーンでの囲み取材を終えて、引き上げていこうとする堂安を捕まえて話を聞いてみたのだが、その表情を言葉にするなら「微妙」とでもいったところだろうか。日本にいたころは自分の中で納得できるプレーをしていればという考え方を持っていたと言うが、今は違うのだと言う。

「海外に行って感覚が変わってきて、調子良くても点取らんかったら自分が調子悪いみたいな感じになる。100か0か。だから今は0です」

別に個人的に内容を全否定しているわけではない。

「初戦としては(連係面が)良かったと思うし……」と言うように、そもそも堂安に二つの決定機が生まれた攻撃の流れ自体は、急造コンビネーションとは思えないもの。プロセスを評価する日本的な発想に基づけば、決め切れなかったことだけにフォーカスし過ぎるのはむしろ良くないことだとされるかもしれない。ただ、やっぱり堂安は言う。

「点、取れなかったんで」

試合前にもこうした発想・価値観の変化を裏付けるようなコメントを残している。

「たとえば、89分自分の調子が悪くても残り1分で点を取れるという感覚が今の自分にはある。もちろん90分通していいプレーできるのが一番いいんですけれど、最悪そういうふうになってもいいという感覚がある」

よく言われる「決定力不足」の源泉も、こうした考え方を裏返したところにあるのかもしれない。

「良い崩し」「良い仕掛け」があれば、「たとえ決まらなくとも」評価される世界と、どれほど良いプロセスがあろうと「決まらないことには」評価されない世界があったとき、どちらでより「決める」能力を持った選手が育ってくるかと言えば、やはり後者の世界だろう。

これはプロセスが大事でないという話ではまったくないが、「結果」にこだわらないことには、「結果」を出せる選手も育ってこないのは真理だとも思う。古くは本田圭佑や中田英寿も、渡欧後から得点に対するスタンスが大きく変わり、プレースタイルまでをもブラッシュアップさせていったが、堂安もまた、そうした先人たちと似たようなプロセスを踏みつつある(そう、プロセスは大事だ)。

■南野はかつて生粋の点取り屋ではなかった

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そうした意味から言えば、この日の試合で紛れもない「結果」を見せたのは、南野拓実その人だった。

まだ19歳だった2014年にA代表候補にも選ばれていた「イケメン・スーパーエース」(命名:高木大輔=レノファ山口FC)だが、実際に試合へ出たのは2015年の2試合のみ。そしてゴールという結果は残らぬまま、日本代表のメンバーリストから南野の名前は消え続けることとなった。

思うところがないはずもないが、強気にこう言い切る。

「個人的にはそこ(選ばれなかった期間)に関してはどうでもいいですね。空いた期間、悔しい思いもしましたけど、ここからなんで」

強調するのは、やはり結果へのこだわりだ。

「初戦で大事なのは、分かりやすい結果を残すこと、何よりもチームが勝つことだった」

生粋の点取り屋ではなかった南野だが、今はゴールへの思考法が確立されているようにも見える。

この日は再三のチャンスを逃しているようにも見えたが、「外してしまっているという気は全くしてないですね。ゴールに近いなと感じていただけ」とポジティブに捉え続け、そして実際、巡ってきたチャンスでクールに決めてみせた。

相手DFと競り合ってまったく動じない様を見れば、欧州での日々を通じて肉体的にも強さを増したのは明らかで、ゴールに対する考え方がすっかり整理されている点を含めて、結果を残せる選手としての風格を感じさせるものだった。

セカンドボールを拾うポジション取り、守備面を本人は課題に挙げていたが、逆に言うとボールを運んで崩して「結果を出す」攻撃面についてはある種の手ごたえを得ていたということでもある。

この日、2列目に並んだ先発アタッカー陣を比べると、決めるチャンス自体は全員にあった。そのプロセスにおいて中島翔哉の技巧に見惚れた人もいれば、堂安律のチャレンジャー魂に感じ入った人もいるだろう。

ただ、やはり結果を残した男、南野拓実が最も評価されるべきだ。

少なくとも本人たちは自分たちがそういう世界で戦っていて、そこで自分が磨かれていることに自覚的なのだから。それでこそ競争が生まれ、成長が始まる。

文=川端暁彦

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