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監督交代で巡ってきた絶好機。武藤嘉紀が語るストライカーとしての強烈な矜持

■ケガに悩まされるも、ドイツキャリアハイの8発

ドイツで3シーズン目となった今季も、マインツFW武藤嘉紀はケガと無縁の生活を送ることはできなかった。

ブンデスリーガ第3節のレヴァークーゼン戦で鮮やかなダイレクトボレーを叩き込んだのを皮切りに、第5節のホッフェンハイム戦、第7節のヴォルフスブルク戦とコンスタントにゴールを記録するなど、シーズン序盤はまさに絶好調と呼べる状態だった。

しかし、10月に入ると突如失速し、11月には腰を痛めて離脱。マインツのエース格に成長しながら、過去2シーズンと同様に、故障によってその能力を十分に発揮するには至らなかった。

それでも2018年に入ると、武藤は再び力強さを取り戻していく。年明け初戦のハノーファー戦でおよそ3カ月ぶりに得点を奪うと、続くシュツットガルト戦では、ドイツ代表にも選出経験のあるGKロン=ロバート・ツィーラーから2ゴールを奪う活躍を見せ、逆転勝利の立役者となっている。2月のヴォルフスブルク戦でもゴールを決めた武藤は、苦境にあえぐチームにおいて、再びその存在感を放ち始めていた。

ところがシーズンも佳境を迎えた4月に入ると太ももを痛めて、再離脱。またしても、武藤に試練は与えられたのだ。

2018-06-05-muto02©Getty Images

もっとも、浮き沈みの激しいシーズンは、最後にハッピーエンドが待ち受けていた。第34節のドルトムント戦、スタメン出場を果たした武藤は13分に見事な追加点を決めて、2-1の勝利に貢献。降格の可能性もあったマインツを残留に導く救世主となったのだ。

結局今季の武藤は、リーグ戦で27試合に出場し、8ゴールをマーク。ドイツでのキャリアハイの成績を残した。

■監督交代でつかんだチャンス

その活躍が認められ、西野朗体制となった日本代表に、8カ月ぶりに復帰を果たす。前体制では不遇をかこっていたなか、復権のチャンスを手に入れたのだった。ガーナ戦に向けた合宿で、武藤は「コンディションの良さ」を強調した。

「リーグ戦の最後の3試合はボールを取られる気もしなかったですし、ゴールも取れる気がしていた。今までのサッカー人生の中でないくらい、冴えていたというか、良かったかなと思いますね」

しかし、日本代表での立場が確立されているわけではない。武藤が本職とする1トップは、大迫勇也という絶対軸が存在する。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の下、主にポストワークを求められたこのポジションで、大迫はまさに替えの利かない存在であり、武藤はその牙城を崩せずにいた。

その意味で、武藤にとっての好転はやはり監督の交代だろう。これまでの4-2-3-1の布陣から、3-4-2-1がベースとなりつつある西野体制下では、1トップに求められる役割は多岐にわたる。前線で起点となるのはもちろん、2シャドーとの距離を保ちながら、連動性による局面打開、裏への飛び出し、さらにはファーストディフェンダーとしての献身性も備えていなければならない。

「あそこのポジションは全部できないといけない。前でしっかりと収めて、そこで簡単にはたいて、裏にも抜けなければいけない。あそこからプレスも始まりますし、守備もしっかりとやらなければいけない。やることは多いですけど、こなせる自信はありますし、楽しみです」

技術とスピード、さらに力強さを備えた武藤は、大迫とも岡崎慎司とも異なる万能型のストライカーと言えるだろう。そのオールマイティな能力こそ、武藤の最大のストロングポイントである。

■ストライカーとしての責任感

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5月30日に行われたキリンチャレンジカップ2018のガーナ戦でも、武藤はその持ち味を存分に発揮した。後半から大迫に代わってピッチに立つと、山口蛍のクロスに飛び込んで、いきなり惜しいシュートを放つ。香川真司との連係で密集地帯を切り崩せば、前線からのプレスでボール奪い、ショートカウンターを導き出す。

また、岡崎慎司の投入により2トップとなってからも、武藤は対応力の高さを見せつけた。高い位置で起点となる一方で、鋭い動き出しでスペースに飛び込み、相手守備陣に揺さぶりをかける。終了間際には岡崎との連係から決定的なシュートを放つなど、ゴールの匂いを充分に漂わせていた。

効果的な動き出しを何度も見せ、随所にコンディションの良さを窺わせた武藤だったが、連係面には課題を残した。

「どこで受けて、どこにサポートが来るか。コンビネーションの部分では、まだ不透明なところはあります。オカちゃん(岡崎)との連係も、自分が裏に出るのか、足もとで受けるのか。そこでミスも生まれてしまった。2トップはサコ君(大迫)と組むかもしれないし、オカちゃんと組むかもしれないですけど、誰と組んでもしっかりと話し合い、コンビネーションを深めて、本番で素晴らしいプレーができるようにしていきたい」

とはいえ、武藤が最も反省したのは、やはりゴールを奪えないことだった。ガーナ戦ではチーム最多のシュート3本を放ちながら、無得点。多くの決定機に絡んだことは評価に値するが、日本代表では2015年10月のイラン戦以来、ゴールから見放されている。

「やっぱり点を取らないと、FWで使われる意味はない。チャンスはできているので、後は冷静さが必要。そこの集中力を高めていかなければいけない」

武藤の胸のうちにあるのは、ストライカーとしての強烈な矜持である。それは責任感という言葉にも置き換えられるだろう。

点を取らなければ意味がない――。

そう主張する25歳のストライカーは、果たして日本代表でも救世主となれるだろうか。

文=原山裕平

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