4年に一度の祭典が、間もなくやってくる。
『Goal』はFIFAワールドカップの開幕を前に、開催国ロシアのレジェンドたちにインタビューを行った。全世界の目がロシアに集まる特別な1カ月。レジェンドたちの現在や、ワールドカップに抱く期待、願い、思いとは?
「スペシャルウィーク・ロシア」の第6弾はアレクサンドル・モストヴォイ。“皇帝”としてロシア代表では1994年から2004年まで“君臨”。また、ロシア人としては初めてとも言えるべき、スペインの地で大きな成功を収め、セルタでヴァレリー・カルピンとともにチャンピオンズリーグ出場に導いている。2005年にスパイクを脱いだ「エル・ツァー」は母国開催を迎えるロシア代表をどのように見ているのだろうか。
■フランスでの2年半は「とても楽しいものだった」
――サッカーをやめてから何をしていましたか? 今は何をしているのですか?
実際のところ、私が現役を退いたのは、ずいぶん前のことだよ。10年以上前だ。引退してから最初の3、4年は、少しゆっくりしていた。今は、少しはサッカーに近いところにいるよ。チームに属してはいないけどね。
Gettyimages――フランス、ストラスブールにいた頃の思い出といえば、何でしょう?
フランスでの思い出はとても楽しいものだね。ポルトガルでプレーした後、新しい刺激が欲しくてフランスに来たんだ。ベンフィカではちょっとしたトラブルがあって、あまりプレーできなかったからね。フランスには2年半いたけど、良いキャリアを積めたと満足している。試合はかなりハードだったけど、リーグのレベルは高かった。カーンに6カ月いて、ストラスブールには2年いた。チームにも街にもチームメイトにも、素晴らしい思い出しかないよ。
――ストラスブールのチームメイトで、もう一度会いたい人はいますか?
そうだね、たくさんの選手と一緒にプレーしたけど、誰と再会できても、とても嬉しいだろうな。よく覚えているのは、フランク・ルブーフ、攻撃のパートナーだったウィルフリット・ゴエル、それと、デイビット・レジス。アレクサンデル・ヴェンツェルとも気が合った。スロバキア人のゴールキーパーだったけど、ロシア語が話せたからね。私は若くて、(フランスに)来たばかりだったから、フランス語があまりうまく話せなかった。結局のところ、そうだね、ほとんど全員のことを覚えているよ(笑)。
――ストラスブールのことは、今でも気にしていますか? リーグ・アンに復帰できて、あなたも嬉しいのでは?
もちろん! ストラスブールを去った後も、チームの試合結果は気にしている。何度も不運に見舞われて、リーグ・アンとドゥを行ったり来たり、3部に降格したこともあったね。あそこでプレーできたのは最高だった。豊かで美しい街のクラブで、スタジアムも美しくて近代的だった。最近ストラスブールの試合を見ていて思い出したんだけど、1995年のカップ戦の準決勝でメスと戦ったとき、サポーターはスタジアムで素晴らしい雰囲気を作ってくれた。20年経っても、スタジアムには、まだ多くのファンの熱気が満ちているよね。もちろん、これからも私の記憶に刻まれ続けるよ。
――これまでにフランスでプレーしたロシア人選手が少ないのは、どうしてだと思いますか? あなた以外には(ドミトリー)シチョフや(アレクセイ)スメルティンなど、わずかしかいません。
ロシアの選手たちは、フランスのリーグを少しハードなリーグだと思っているんじゃないかな。イングランドやイタリアのリーグほど、リーグ・アンを(テレビで)見る機会は少ないしね。フランスのリーグは、ドイツのリーグに近い。それに、今のロシア人選手は、ヨーロッパでプレーしたがらない。どうしてかって? どこへ行ってもロシアよりも騒がしいし、レベルが高いわりに報酬は多くない。特にフランスはね。だけど(フランスの)リーグはとてもレベルが高い。あそこでプレーするのは、大変だと思うよ。
■「W杯はアドバンテージがある。絶対に決勝Tへ」
Gettyimages――今年はロシアでワールドカップが開催されます。ロシア代表にチャンスはあると思いますか?
そうだね、ロシア代表はホームで試合ができる。どの国にとっても、ホームで試合ができるのはプラスに働く。それに、参加国の3分の2は実力が拮抗していると思う。ブラジルやスペイン、フランスを除けば、他はほとんど同じレベルだ。たぶん、ロシアにはアドバンテージがあるだろう。グループステージで対戦するサウジアラビア、エジプト、ウルグアイは、決して歯が立たない相手じゃない。ホスト国として、絶対に決勝トーナメントに進出しなければならない。その後は簡単じゃないだろうけど、新しいスタジアムにファンが大勢来てくれれば、勝ち進んでいけるだろう。
――現在、ロシアを率いるのはスタニスラフ・チェルチェソフ監督です。あなたの元チームメイトで、ゴールキーパーでした。フィールドプレーヤーでなかった監督が代表を率いるのは、難しいとは思いませんか?
とても良い質問だ。彼が監督に就任してから、何度もその話が出ている。まず言いたいのは、チェルチェソフの前の監督(レオニード・スルツキー)はそもそもサッカー経験がなかった。これはとても驚くべきことだよ。チェルチェソフには多くの困難が待ち受けているだろうけど、チームを率いること、特に国の代表チームを率いることは、いつだってとても難しいことだ。現実を見れば、ロシアは予選を免除されていて、本大会を開催国として参加する。多くの監督が憧れるような状態であり、実際にその状況にいあわせているんだ。彼が成功するかどうかはともかく、懸念材料のある監督は彼だけじゃない。大勢いる。

――とても若いチームですが、実力については心配していないんでしょうか? ロシアのリーグには外国籍選手が多いことで知られていますが。
心配なんてないよ。今回のワールドカップがロシアで開催されることを忘れちゃいけない。日韓(2002年)のときとは違う。私たちは、あそこのことを何も知らなかった。自分の国でプレーするときは、いろんなことができる。それに、ロシアには欧州のカップ戦に出場したクラブがたくさんある。国際的に活躍する選手も多いし、ロシアのレベルは十分に高いよ。
■1994年W杯の苦い思い出も…
――ワールドカップでのフーリガンの問題は心配ではありませんか?
全然。コンフェデレーションズカップでも、熱い試合はたくさんあったのに、何も起こらなかった。スタジアムの建設にはお金がかかったけど、とてもうまくいったし、そういう問題を防ぐための対策はすべてやってきた。ロシアは大国だ。何も起こりはしないよ。

――あなたは2回、ワールドカップに出場しました。最初の1994年大会では、あまり長くプレーできませんでした。それどころか、13人もの選手のストライキで、大会出場さえ危うい状態でした。あのときのことを少し話していただけませんか?
(ロシア代表の)全員が、問題があることをわかっていた。あの当時、ロシアは混乱した状態にあった。多くの選手が外国でプレーしていて、みんなサッカーがしたくて仕方がなかった。ソビエト連邦のやり方が、漂流しつつもまだ残っていた。すべての問題に慣れることは難しかった。代表でも問題が起きていた。代表選手の半分がワールドカップに行かなかった。カンチェルスキス、シャリモフ、コリヴァノフといった選手たちだ。個人的には、私はあのチームを観光客の集まりと呼んでいたよ。今じゃあんなことが起こりうるなんて想像もできないだろうね。そう、でも、あれは過去のことだよ。
インタビュー=ナイーム・ベネドラ/Naim Beneddra

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