2018-05-26-zidane(C)Getty Images

白か黒か、伝説か失敗か…CL三連覇に挑むジダン・マドリーは「不撓不屈の精神」体現できるか

レアル・マドリーが最後にチャンピオンズリーグ(CL)で敗退したのは、2015年5月。ユヴェントスとの準決勝、本拠地サンティアゴ・ベルナベウでのセカンドレグを1-1で終え、2戦合計2-3で決勝進出を逃した。試合直後のカルロ・アンチェロッティの様子は、いまだ鮮明に覚えている。

会見で、いつも物腰柔らかにイタリア語訛りのスペイン語を使い、毎回と言っていいほど笑いを振りまいてきたアンチェロッティだが、そのユヴェントス戦直後の会見場は緊張に支配されていた。彼の表情は起こってしまったことへの動揺を隠せず、顔を紅潮させ、語気は普段よりも荒かった。その前のシーズンにはマドリーに通算10度目のチャンピオンズ制覇に導いた名将だが、ついにマドリーの重圧に飲み込まれた瞬間を見たように思えた。

結局、シーズン終了後に解任の憂き目に遭ったアンチェロッティ、その後任のラファ・ベニテスは半年も持たずにこのクラブを去り、マドリーというクラブで監督を務める困難さは、さらに強調された。勝ち続けることを至上命題とするマドリーには、灰色という中間色が存在せず、白か黒、成功か失敗しかない。白は白のままであり続けなければならない。

この条件下で、マドリーが長きにわたって穏やかで安定した日々を過ごすことは容易ではなかった。だからこそ、ベニテスの後釜としてチームの手綱を握ったジネディーヌ・ジダンが、刺々しい雰囲気とは無縁の日々を過ごしてきたことは驚嘆する。この新米監督は、昨季に史上初のCL連覇含め、マドリーのトップチームの監督就任からから23カ月間で8タイトルを獲得した。彼のチームは勝ち続けることを止めず、マドリーの純白を可能な限り貫いてきた。

■陰りが見え始めたジダン・マドリー

しかしながら、今季に入ってジダン・マドリーの勢いに陰りが見えた。リーガ・エスパニョーラではバルセロナに早々に大差を付けられて優勝を逃し(最終的には首位バルセロナに勝ち点17差、2位アトレティコ・マドリーと勝ち点3差の3位でフィニッシュ)、コパ・デル・レイでは準々決勝でレガネスに敗退……。その要因は昨夏のチームプランニングか、もっと言えば、昨季に絶対王者となったときに生まれた慢心がしからしめたのかもしれない。

昨夏にはペペが契約延長交渉の破断、アルバロ・モラタ、ハメス・ロドリゲスが出場機会の少なさに対する不満でクラブを後にしたが、代わりに加わったのはダニ・セバジョス、テオ・エルナンデス、ヘスス・バジェホ、ボルハ・マジョラルと将来有望な若手ばかり。昨季、選手層の厚さによって実現に至り、革命的とも持て囃されたプランA&Bの使い分けは、今季に入り機能しなくなった。また主力選手たちも個人技頼みの攻撃が目立ち、強引な形でフィニッシュまで持ち込もうとして「ボールがゴールに入りたがらない」現象も生じている。

だがしかし、成功に彩られてきたジダン率いるチームの地力には疑いの余地がない。また、こうした混沌の中ではチーム内不和もささやかれるものだが、主力選手たちはジダンを擁護することに全力を尽くした。崖っぷちに立たされながらも団結するマドリーは、チャンピオンズにすべての望みをかける。決勝トーナメントでパリ・サンジェルマン、ユヴェントス、バイエルン・ミュンヘンと各国王者を打ち破りながら、三連覇まであと一歩のところまで迫ったのだった。

■タフに生き延びて到達したCL決勝

Cristiano Ronaldo Real Madrid Bayern Champions League 01 05 2018

それでもマドリーの強さは、昨季にリーガ&チャンピオンズの二冠を達成したチームと比べて印象的には劣っている。昨季同様、後半戦からコンディションがピークに達したクリスティアーノ・ロナウドらの決め切る力は凄まじい。が、90分間の大半をコントロールすることはできず浮き沈みがあり、簡単なミスや集中力の欠如からの失点も目立った。

ユヴェントス、バイエルンとのセカンドレグは、ことチャンピオンズにおいて脅威的な熱狂が生み出されるベルナベウで行われたが、ユヴェントス戦1-3、バイエルン戦2-2とどちらも勝利を奪えず、追いすがる相手から何とか逃げ切る形で次戦突破を決めた。バイエルンとのセカンドレグ後、ベルナベウの観衆は普段通り「アシ・ガナ・エル・マドリー(マドリーはこうやって勝つ)!」と叫んだが、どちらかと言えば伝説の7番、故フアニートの言葉「ベルナベウの90分間はとても長い」を逆に体験する形になった。

兎にも角にもマドリーはタフに生き残り、最後の最後でシーズンの成否を決められる権利を得た。このチャンピオンズ決勝リヴァプール戦は、ジダン・マドリー黄金期が継続するかどうかがかかった一戦となる。昨季、リーガ優勝を決めている状況で臨んだチャンピオンズ決勝ユヴェントス戦では、負けてもそこまでの批判は出なかったろう。だが反対に今回のリヴァプール戦を落とせば、それが一気に噴出すること必至。チャンピオンズ三連覇という歴史的な偉業の達成か、失敗のシーズンとの烙印を押されるか……キエフでの一戦では、まさに白か黒かが決まることになる。

■ジダンが大きく笑うとき

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白を白のままとしてきたジダンはこれまで、公の場でずっと笑みをたたえていたが、この決戦の前でもその様子は変わらない。「明日、重圧がのしかかったとしても何でもない。少し重圧を感じていた方がいいね」「私にとって結果はさほど重要ではない。全力を尽くすことこそが大切なんだ。選手たちにも、全力を尽くすならば、そのほかはどうでもいいと言っている」などと語りながら、目尻にしわをつくった。

あふれんばかりのエネルギーを発する闘将、ヒステリックさを隠せない戦術家のどちらの雰囲気も持ち併せていない極めて自然体な監督、ジダン。だが彼ほどやわらかに、しなやかに強い指揮官も珍しい。その素朴な性格と元世界最高の選手という肩書きは、マドリーの選手たちという強烈なエゴ集団をも従わせる。奇抜、特異な戦術がなくとも、そうした選手たちが素直に規律を守り、慢心なくその力を発揮するならば、マドリーは間違いなく強い。それはもう、チャンピオンズ三連覇という伝説を築くくらいに。

果たして、結末は白か黒か、伝説か失敗か。もしジダンがこの決戦後に大きく笑うのならば、自分たちの力を信じ、最後の1分まで決してあきらめないことで達成されるマドリーお得意の劇的逆転勝利を、マドリディスモの根幹である不撓不屈の精神を、一シーズンを通して体現することになるだろう。

文=江間慎一郎

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