まさにリベンジ。バイエルン・ミュンヘンの赤い戦士たちは決戦へ向けて息巻いている。
「仕返し、復讐」といった強い意味を持つリベンジは安易に使われるべき言葉ではないが、バイエルンにとってレアル・マドリーは近年再び強い思いを持つべき相手となっている。
ここ5シーズンで顔を合わせるのは3度目。過去2回は準決勝、準々決勝でともにレアル・マドリーがバイエルンを沈め、いずれもビッグイヤーを掲げた。しかし、バイエルンに苦手意識があるわけではなく、思いだけが溜め込まれている。特に昨年のラウンド8ではいくつかの疑惑の判定が結果に大きな影響を及ぼした。
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ファーストレグでのハビ・マルティネス退場を看過したとしても、セカンドレグでのアルトゥーロ・ビダルのレッドカードは疑問が残るものであった。加えて、延長戦で生まれた3ゴールのうち2つはオフサイドにも見え、当時の指揮官カルロ・アンチェロッティは判定に不満を漏らしている。
こういった背景もあってか、バイエルンの選手たちはベスト4の抽選会が終わり、おそらく最も“ハズレくじ”となったにもかかわらず、反応はポジティブであった。ヨシュア・キミヒは組み合わせが決まる前から「レアルにリベンジしたい」と力強く語り、トーマス・ミュラーも「2012年に決勝へ行ったとき、準決勝でレアルを倒したから良いイメージがあるよ」と話した。
昨季、レアル相手にゴールを挙げ、退場も経験したビダルはTwitterで「リベンジ」と息巻いていたものの、右膝のケガで欠場が決定。不安要素もあるが、今回は頼れる指揮官がいる。2013年に欧州の頂点に立ってからは、いずれもスペイン勢の前に敗退を余儀なくされているが、ユップ・ハインケス監督にとってはどこ吹く風。セビージャ戦の前に近年の相性の悪さについてコメントを求められた老将は「2012年、2013年はレアル・マドリー、バルセロナを倒して決勝へと進んでいる。私にとって4年の過去は関係ない。今とは全く異なるチームだしね」と語り、圧倒的な説得力を示す。
一方のレアル・マドリーは、直前の試合でビルバオを相手に引き分けたが、リーガでの成績はさほど関係ないだろう。欧州の舞台となれば、エースのクリスティアーノ・ロナウドを筆頭に驚異的とも呼べる神通力を発揮するのが白い巨人だ。準々決勝のユヴェントス戦では付け入る隙も見せてしまったが、3連覇へ向けて大きな不安要素はない。
それでも、今のバイエルンにはドイツ勢初の3冠を達成した2013年の雰囲気が流れる。もちろん確信は持てないが、バイエルンが来シーズンの監督（ニコ・コバチ）を発表したのは抽選会の直前で、首脳陣が選手たちに勇退する指揮官を送り出すため奮起を促すようなタイミングでもあった。
Getty Imagesまさに5年前、指揮官にゴールという形で3冠目をもたらしたアリエン・ロッベンは「もう1つか2つタイトルを取ってユップにお別れを言えたらいいね。彼がチームにとってどれだけ重要か全員がわかっている。クラブのハートを知っていて、常に必要なことがわかっているんだ。最高の監督だよ」と語る。
先発出場が濃厚で、個人として準決勝の舞台を初めて踏むキミヒも「僕らはロナウドを止められる。この2試合がとても楽しみだよ」と、23歳と若さにそぐわない大胆な言葉を口にする。
準備は整った。燃えるミュンヘンで、王者を迎え撃つ。25日、“復讐劇”の火蓋が切って落とされる。
文＝平松凌（Goal編集部）
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