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浦和がACLへ近づく勝利を呼んだ二つの理由。プランBの遂行、それを可能にした長澤の存在

■柏の対策に苦戦も、Bプランが奏功

ACLへ望みをつなぐか、残留争いへ巻き込まれるか――。

浦和レッズにとって、柏レイソル戦は今後を占う重要な一戦だった。台風24号接近による影響で強雨に見舞われながらも、終わってみれば粘る柏を3-2で振り切り、3連勝を達成。
暫定6位に浮上し、ACL圏の3位・鹿島アントラーズとの勝ち点差を4とし、アジア行きを射程圏内に捉えた。苦しい戦いを制した要因はどこにあったのか。その答えは長澤和輝にあった。

浦和は前節のヴィッセル神戸戦(4-0)と同じスタメンでスタート。イニエスタ対策として構築した柏木陽介、長澤和輝、青木拓矢の3ボランチを柏戦でも採用した。

前半序盤から背後を狙う姿勢を強める浦和。神戸戦で何度も裏を突くパスを通していた柏木にボールを集めるが、柏の鈴木大輔とパク・ジョンスのセンターバックコンビが、柏木からの興梠慎三の裏抜けを警戒。柏がラインを低く敷いたことでスペースを消されてしまい、形を作れない。

「柏木選手が持った時は当然裏を狙っている。裏を中々狙えなくてストレス溜まっている感じはあって、どんどん下に降りてきていた。そのプランは別に悪くなかった」と鈴木が語るように、序盤は柏の読みがハマる形となった。

神戸戦でも柏木と興梠のホットラインでゴールを奪っていただけに、相手がそのストロングポイントを潰してくるのは当然だった。ならばと、浦和はすぐにアプローチの仕方を変える。興梠・武藤の2トップが降りてきてDFを背負い、ポストプレーでリターン。釣られたDFの裏に2列目の選手が飛び出していくBプランを遂行する。

「俺から慎三のラインに関して相手は警戒していた。だから1本で狙うのをやめた。縦にパスを当てながら、前に行くことを心がけていた」(柏木)

「特に陽介が持ったときに、自分は裏に抜け出そうと思っていた。でも、向こうも研究していて、結構引いてきたのでなかなか裏でもらうチャンスがなかった。だから、2列目の選手が飛び出したら(自分は)落ちて組み立てに入った」(興梠)

すると、その狙いが早くも奏功する。

38分、橋岡大樹が縦パスを送ると、受けた興梠が武藤へ散らす。興梠へのチェックで釣り出されたパク・ジョンスの背後にスペースが生まれる。武藤はそのスペースに走り込んでいた長澤にクロスを送ると、これをうまく収めた長澤が冷静にゴールへ流し込んだ。2列目の飛び出しから生まれた狙い通りの同点弾だった。

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その3分後には、相手のミスを突いて興梠が絶妙なループシュートで逆転ゴールを奪取し、前半は1点リードで折り返したが、60分にサイドからのクロスを対応し切れず、同点ゴールを献上。試合は振り出しに戻った。時間が経つとともに、強い雨が降りつけて消耗戦の様相を呈すると、タイトだった柏のプレスも徐々に強度を失っていく。

ここでオズワルド・オリヴェイラ監督が勝負に出る。橋岡に代えて李忠成を投入。武藤を右ウイングバックに配置し、前への推進力を高めつつ、右サイドの活性化を図った。

すると81分、エースがチームを救う。宇賀神友弥のクロスが右に流れると、収めた武藤が左足でクロス。これに興梠がボレーで合わせて勝ち越した。「リードしているなかで、中盤の枚数を増やして、プレーの起点のところを止めよう」(オリヴェイラ監督)という狙いの下、阿部勇樹を投入。守備時に5-4-1で固め、パワープレーに転じる柏に最後までゴールを許さなかった。

■長澤和輝。リンクマンとしての真骨頂

得意な形を対策されながらも、勝ち切った浦和。その要因はリンクマン的な役割を果たした長澤にあった。オリヴェイラ監督も「長澤にはタイミングを見て後ろからペナルティーエリアに進入していくことを求めていた」という。

66分に、興梠がボレーをクロスバーに叩いたシーンで、長澤はまるでストライカーのごとくゴール前に飛び込んでいた。さらに、本来の役割であるセカンドボールを拾う役割も忠実にこなし、青木の惜しいミドルシュートにもつなげた。役割が過多なのでは、と感じてもおかしくないが、長澤本人はそれも「タスクの一つ」であると、表情を変えることなく、淡々と言葉をつなげる。

「(前に)出ていくことで(攻めの人数が)プラスワンとなり、中のFWに対して選択肢が増える。これは中盤の選手がやらなきゃいけないこと。2列目から出ていくことで、相手は(マークに)つきにくい。ボランチの選手で3人目の動きができれば、攻撃に深みも出ます」(長澤)

長澤の1点目で起点となった興梠も「アイツは後ろで組み立てるよりか、ああいうバイタルに入るのが持ち味だと思うので、どんどん入ってきてほしい」と期待を寄せる。その興梠の決勝点をアシストした武藤は、中盤の3人が追い越すシーンが増えたことが、攻撃に厚みをもたらしたと語る。

「なかなか上手くいかないときは、攻撃の厚みがなかったと思いますし、個人でバーッと行っちゃうようなシーンが多かった。今は前がボールを引き出した時にしっかりタメを作ることで、後ろの選手たちが追い越していくようなシーンが増えている。前に人数を掛けられるようになってきたかなと思います」(武藤)

武藤の言う「攻撃の厚み」は、ファブリシオ離脱で失っていたものの一つでもあるが、2列目の猛烈な飛び出しによって、攻撃に迫力を取り戻した。神戸戦に続いて2試合連続ゴールをマークした長澤。それでも現状に満足せず、さらなるゴール奪取を誓った。

「タイミングを見て、チャンスのときにああやって出ていきたい。次もチャンスで決められるようにしたい」(長澤)

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一時はオリヴェイラ監督のベンチ入り停止処分や、3試合未勝利で揺れたが、これで3連勝。ACL出場圏まで勝ち点4差で猛追している。

この後は、10月7日に勝ち点41で並ぶベガルタ仙台とのアウェイゲームを控え、インターナショナルマッチウィーク後の同20日には、宿敵・鹿島アントラーズとのACL出場権を懸けた直接対決が待つ。

この勝負強さを継続できるか――。本当の意味での戦いがいよいよ始まる。

取材・文=大西勇輝(Goal編集部)

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