2018-05-21-ryota-morioka(C)Getty Images

活躍し続けたファンタジスタ、なぜ森岡亮太はベルギーでここまで輝いたのか…

■ブレイクからステップアップへ

2018-05-05 Morioka Ryota

森岡亮太のベルギーでの立場は、わずか1年で大きく変わった。

ワースランド・ベフェレンに加入した当初、それほど注目度が高かったわけではない。ベルギー人記者も、入団時に森岡が口にした目標、10ゴール10アシストを軽く聞き流していたと後の記事の中で書いていたくらいだった。しかし、その目標はクリアされることになる。13得点13アシスト。森岡はベルギー初年度にして、冬にアンデルレヒトへと移籍して環境がさらに変わったにもかかわらず、活躍して数字を残し続けた。環境適応能力と安定感は抜群だった。

ワースランド・ベフェレンは下位から中位を伺うような小さなクラブだ。今季当初から指揮をとっていたフィリップ・クレメント監督が採用していたのは4-2-3-1のカウンターサッカー。リトリートしてコンパクトかつタイトに守って、カウンター。トップ下の森岡を経由してサイドへ。ワイドに、かつ縦に速い攻めでダイレクトに相手ゴールに迫った。森岡は完全に司令塔として君臨。セットプレーのキッカーを含め、あらゆるタクトを揮った。ワースランド・ベフェレン在籍中に森岡が残した数字は、7得点10アシストと圧倒的なものだった。

誰もが森岡の存在を無視できなくなっていた冬の移籍期間にアンデルレヒトへの移籍が決定する。わずか半年でステップアップを果たしたのだ。そして、ベルギーの首都のクラブであるアンデルレヒトの10番が日本人に託されることになった。

アンデルレヒトの指揮官はヘイン・ファンハーゼブルーク監督。3-4-2-1でパスをつなぐ攻撃的なサッカーを標榜する監督で、彼の戦術は細かな約束事が多い。にもかかわらず、2シャドーの一角として起用されるようになった森岡はそれほど大きな戸惑いを見せることなく適応していった。アンデルレヒト加入以降も6得点3アシストとコンスタントに数字を伸ばし続けて、今季合計13得点13アシストまで到達したのだ。

■厳しいプレッシャーの中で…

飄々とした森岡の風情からも、なんとなくサラッと適応しているように見えるが、実際のところ、ことはそう簡単なものではない。例えば4月21日のプレーオフ1第5節、森岡はスタメン落ちしている。「メンバーはいるんで」とは試合後の森岡のコメントだ。その日、森岡の代わりにスタメン出場したのは、背番号50番のラザル・マルコビッチ。「アイツは元々すごい良い選手ですし。まあ、リヴァプールから来てますからね」。森岡はリヴァプールからレンタルされているセルビア人選手といった強力なライバルとポジションを争っている。なんとなくコンスタントにスタメン出場しているが、激しいポジション争いを勝ち抜いて出場し、数字を積み重ねているのだ。

また、下位クラブだったベフェレンから勝利を義務つけられたアンデルレヒトへと移籍したことで、そのプレッシャーも大きくなっている。5月13日のプレーオフ1第9節、ヘント戦でアンデルレヒトは0-1で敗戦。森岡はサイドチェンジ、ラストパスと、らしいパスを配給し、巧みなチャンスメイクを何度も見せていた。

「やっぱり、そこだけじゃ、ってところですよね。結局、やっぱりこうやって1-0で負けたら何も残らないです。結局、決め切れないと、っていうレベルのチームやと思うんで。そこまでの過程が良くても、やっぱり、プラスアルファで間違いなく結果を持ってこないと、取らないと、というところだと思います」

今季、これほどに数字を残していても、1試合、チームとして結果が出ないと批判され、出場機会を減らされかねない。そんな厳しいプレッシャーの中で、森岡は戦っているのだ。

■守備でも存在感

2018-05-05 Kubo MoriokaGetty Images

ところで、この5月13日の試合で、後半20分頃、森岡が高い位置で相手ボールを奪い、ショートカウンターからチャンスを作った場面があった。森岡が球際の競り合いに勝ってマイボールにしていたのは、この場面だけではなかった。

球際のガチャッとなった時のボールの取り合いに苦手意識はないかと聞くと「いや、そんなにないですね」と森岡。「(得意という意識も)ないですけど、ディフェンスする時はガチャってなるところまで行けば、取り切れそうなイメージはありますね。もちろん取りきればチャンスですしね」。

プレスからのボール奪取という点においては、寄せる動きと寄せた後の球際の競り合いと2つのモーションがある。アジリティとスピードが高いわけではない森岡は、ボールに詰め寄る動きにはそれほどの鋭さはないかもしれない。しかし、森岡の身長は180cm。一旦体を寄せてしまえば、実は球際に強いのだ。このあたりも、森岡がコンスタントにベルギーリーグで活躍できている秘訣の一つなのだろう。

■思考力の高さ→適応力

2018-05-21-ryota-morioka(C)Getty Images

今季、森岡は新天地でありながら、さらに半年でチームを変えながら年間を通して安定した活躍を続けてきた。その適応力の高さは魅力だ。迎えるワールドカップにおいても、そういった資質は有益だ。自我を押し通すのではなく、環境に、チームに、監督に、森岡は即座に適応する。日本代表監督が西野朗監督に決まった後に、森岡はこんな風にコメントしていた。

「もちろん2カ月前っていう時間って、ネガティブに捉えようと思えば捉えられます。でも、正直、こっちサイドとしては、なってしまったものは、いかに割り切ってするしかないとは思う。そこはもちろん代表スタッフが色々考えているでしょうけど。あとはほんとに選手が西野さんのやろうとしていることをどれだけワールドカップで出せるかという。ハリルさんの時に出せなかったので解任になったわけで。それを選手がどれだけ出せるか、かなとは思います。まずはチームでよく言う、コンディションを上げてっていうやつですね」

森岡は考える人だ。毎試合後、その日は試合を振り返り、考え続けて夜は眠れないという。その思考力の高さが、森岡の適応力の高さの源泉であり、自身をこのレベルまで導いたのだろう。

文=堀秀年

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