ついに欧州サッカーのシーズンが幕を開けた。日本のサッカーファンにとっても熱い週末が続く。
『Goal』では、ポルト大学大学院でサッカー指導者として学び、昨季はポルトガル1部リーグ、ボアヴィスタU-22でアシスタントコーチを務めた林舞輝氏にインタビューを実施。各国リーグの魅力と観戦のコツを語ってもらった。
第2弾はフランスのリーグ・アン。パリ・サンジェルマンが豪華な戦力で他を圧倒しているが、林氏はある意外な? クラブを熱く推す。また、2016年の夏からマルセイユでプレーする日本代表DF酒井宏樹が大きく躍進した理由は、何だったのだろうか。
(C)Goal■注目するのは意外なクラブ
リーグ・アンはどこよりもナントに注目しています。その理由は、監督です。
今シーズンからクラウディオ・ラニエリ監督の後任として指揮官を務めるポルトガル人のミゲル・カルドソ監督は本当にすごいです。先日、この人の授業をモウリーニョ講座の一環としてリスボンで受講しました。全てに衝撃を受けましたね。話し方とか、カリスマ性も非常に感じました。戦術もとても詳しいし、出てくる言葉もかっこいいんです。

もちろんそれだけではなくて、残した成績も素晴らしいものです。去年はポルトガル1部のリオ・アヴェで、5位という成績を残し、クラブ史上最多の勝ち点を記録しました。僕と同じポルト大学の大学院卒で、彼の場合は在学中からFCポルトでアシスタントコーチやコーチを務め、フィジカルコーチなど色々な役職を経験しています。それから、シャフタール・ドネツクのアカデミーダイレクターを経て、そして、監督初挑戦の昨シーズンに素晴らしい成績を残したんです。まだ46歳ですよ。
去年のリオ・アヴェは僅差のゲームをものにする強さがありました。やはりポルトガルは3強(ポルト、ベンフィカ、スポルティング・リスボン)とその他のクラブに戦力差があるので、上位以外のチームからどれだけ勝ち点を奪えるかが重要になってきます。その点で、カルドソ監督は勝負強いチームを作っていました。
得点数も失点数も、前年度と大差はありません(※2016-17シーズン得点41失点39、2017-18シーズン、得点40失点42)。それでいて、クラブを史上最高位に導いた。“勝てる”チームに変えたんです。
また、戦術的にも興味深かったです。フォーメーションで言うと、ビルドアップ時には3-1-5-1になっていました。カルドソ監督は4-2-3-1を好んでいるのですが、ビルドアップの時は中央に人数をかけ、大外に一人ずつ配置していました。
これがポルトガルリーグで面白いようにハマりました。対戦相手は、初見ではなかなか対応できないんですよ。あくまでもこのビルドアップは一例ですが、そういった戦術の引き出しもすごく多いんですよね。
カルドソ監督の戦術の色が出てくるまでには時間がかかると思いますが、ナントでも徐々に勝てるチームを作ると思います。ナントはルネ・ジラール(2016)、セルジオ・コンセイソン(2016-2017)、ラニエリ(2017-2018)と歴代の監督も素晴らしい。理論派のカルドソ監督もすんなり受け入れられるはずですし、成功できる土壌があります。
ヨーロッパリーグ(EL)出場圏(4位)には入ると予想しています。ただ、その上は厳しいと思います…。パリ・サンジェルマンは手堅いですし、モナコも強いですからね。それでも、カルドソ監督の手腕に期待しています。
話したからには、頑張ってほしいです。日本でこんなに宣伝されていることなんて知る由もないでしょう…(笑)。個人的に「いつかプレミアリーグで監督を務めることになるはず」と、以前から言っているのですが、僕の予想は当たりますかね(笑)。
■なぜ酒井宏樹はフランスで成長できた?

フランスリーグへ来たから、というよりマルセイユに在籍していることの影響が大きいと思います。マルセイユはフランスの中でも異色なクラブです。サポーターもとても熱いし、そのぶんプレッシャーも半端ではありません。
酒井宏樹選手はフランスへ行って、ハリル(ヴァイッド・ハリルホジッチ元日本代表監督)監督があれほど口を酸っぱくして「デュエル」と言う意味がよくわかったと思います。リーグ・アンはとても“泥臭い”ですからね。皆が思っているフランス像とは全然違うサッカーをほとんどのチームがしています。だからこそ、デュエルの大切さを、身をもって知って実践できる能力があったのだと思います。以前に在籍していたハノーファーより上のカテゴリと言えるクラブなので、細かいポジショニングや戦術など、もちろんそういうことも学んで自分のものにできたと思います。
フランス代表は、華麗なパス回しを見せる「シャンパン・サッカー」などと言われた時代もありますが、同時に泥臭さみたいなものがずっと根付いているんだと思います。だからこそ、(ヌゴロ)カンテや、昔で言うと(クロード)マケレレ、(パトリック)ヴィエラのような選手が出てくるんですよね。足元の技術がしっかりしている中でも、体を張って、“泥臭く”ピッチで戦える選手たちです。ストライカーとして、世界最高の選手の一人に成長しつつある(アントワーヌ)グリーズマンも潜在的にそのような部分があると思います。ディエゴ・シメオネ監督率いるアトレティコ・マドリーで、嫌な顔一つせずしっかりと守備のタスクをこなしていることからもそう感じます。
Getty加えて、リーグ・アンでプレーする選手は皆、ハングリーです。リーグ・アン自体が欧州のトップ・オブ・トップではないので、多くの選手がフランスより上のレベルのリーグに行きたくて、プレーしていると思うんです。だから、EL(ヨーロッパリーグ)なんて出ようものなら、万々歳です。彼らにとってそこがアピールの場になりますから。一方で、イングランドのビッグクラブなんて「ヨーロッパリーグなんて出たくない」と思っているでしょう。一時期、モウリーニョもそういった旨のコメントをしていましたから。
酒井選手は、そのようなハングリーな選手に囲まれて戦っているからこそ、ロシア・ワールドカップであれだけの好パフォーマンスを見せられたのだと思います。フランスでプレーしていれば、まだまだ成長できるのではないかと期待しています。今シーズンも楽しみですね。
インタビュー・文=Goal編集部
【プロフィール】
林 舞輝 Maiki Hayashi
1994年12月11日生まれ、23歳。イギリスの大学でスポーツ科学を専攻。在学中にチャールトンのアカデミー(U-10)とスクールでコーチ。2017年よりポルト大学スポーツ学部大学院に進学。同時にポルトガル1部ボアヴィスタのBチーム(U-22)のアシスタントコーチを務め、主に対戦相手の分析・対策を担当。モウリーニョが責任者・講師を務めるリスボン大学とポルトガルサッカー協会主催の指導者養成コースに合格。
Twitterアカウントは @Hayashi_BFC
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