ついに欧州サッカーのシーズンが幕を開けた。日本のサッカーファンにとっても熱い週末が続く。
『Goal』では、ポルト大学大学院でサッカー指導者として学び、昨季はポルトガル1部リーグ、ボアヴィスタU-22でアシスタントコーチを務めた林舞輝氏にインタビューを実施。各国リーグの魅力と観戦のコツを語ってもらった。
第3弾はブンデスリーガ。バイエルン・ミュンヘンがリーグ6連覇中と、“1強体制”を築いているが、注目すべきポイントはどこにあるのか。林氏はニッチな部分に着目した。
(C)Goal■ブンデスリーガで見るべきポイント
Getty Imagesまず、ブンデスリーガは5大リーグの中で、前線からのプレスがうまいクラブが最も多いと思います。シャルケやレヴァークーゼン、RBライプツィヒやドルトムントなどが鋭いカウンターでよく知られていますが、どのチームもハイプレスをうまく使いこなしています。
ジョゼップ・グアルディオラ監督もバイエルンを率いていたとき(2013~2016年)、国内リーグで度々、相手チームの切り替えの速さやカウンターの鋭さを称賛していました。もちろん、ボールを奪ってからのカウンターの精度の高さを指していたのかと思いますが、それもプレスの枠組みがチームとしてあってのものですからね。
Getty Images日本人選手にしても、大迫勇也選手や香川真司選手、原口元気選手はドイツに渡ってから、プレスのかけ方がとても上手くなったと思います。例えば、香川選手はドルトムントでプレーしているので、チャンピオンズリーグで実力的には格上のクラブと対戦することがあります。そのときには、中盤の高い位置で先発しつつ、相手の核となるアンカーの選手のマークも任されていました。こういったマンマーク自体はさほど珍しいことでもなくなりましたが、小柄で欧州の選手に比べると、フィジカルで見劣りする香川選手が任されているということに意味があると思います。戦術理解度が高く、どの監督からも守備に関して一定の信頼があったからでしょう。
相手の追い込み方やパスコースの切り方、前線からのプレスがあれだけうまくなるというのは、やはり練習から入念に仕込まれているのだと思います。見て学ぶことができれば、プロに限らず高校サッカーなどでもできることだと思うので、注目してほしいですね。
■注目は2チーム
Gettyどの選手が、ということではなく、チーム全体を見てほしいのがシャルケですね。相手の追い込み方やマーカーのつかみ方などが特徴的かなと思います。
例えば、前線からのプレスによってパスコースを切る守備ってありますよね。実際、サッカー経験者であれば、コーチングで「右切れ」、「左切れ」と言ったこと、言われたことがあるかと思います。右(左)のパスコースを塞いで、限定されたエリアでボールを奪いに行くというやり方ですが、 目的そのものがパスコースを塞ぐことになることが往々にしてあります。でも、究極の目標は当然ボールを奪うことであり、そこからゴールにつなげることですよね。その究極の目標を、シャルケはピッチで良く体現できていると思います。
シャルケでは、右のパスコースを切って後ろの選手でボールを奪うというよりも、右を切りながら、最初の選手で取りに行くというような形が多いですね。他のチームならグループで実践するハイプレスを、シャルケの場合は一人ひとりの個人ができるというイメージです。1対1で勝つ(ボールを奪う)という責任感が、シャルケのハイプレスの強度を支えているのでは、と思います。
Getty Imagesまた、前線からのプレスと言えば、ホッフェンハイムと監督のユリアン・ナーゲルスマンです。ロシア・ワールドカップでメキシコがドイツを破った試合(1-0)でのカウンターが話題になりましたが、メキシコはホッフェンハイムからもインスパイアされたのではないかと私は推測しています。
メキシコが参考にしたと僕がみている試合が、昨シーズンの第20節バイエルン・ミュンヘンvsホッフェンハイムの一戦です。最終的にはホッフェンハイムが2-5で負けてしまった試合でしたが、開始10分で2点先制するんですよね。どちらもボールを奪ってからの速攻で生まれたものでした。
バイエルン戦でのナーゲルスマンには一つの狙いがありました。
前線からプレスをかけるのですが、右センターバックの(ジェローム)ボアテングだけにはマークを付けず、ボールをあえて持たせてドリブルで運ばせます。でも、全選手にマンマークが付いているので、ボアテングは最も安全なパスコースを確保できる右サイドバックの(ヨシュア)キミッヒに出すことになります。
しかし、それは仕掛けられた罠なんですよね。キミッヒはキックの精度はとても高い選手ですが、欧州の選手としては小柄で(176cm)、フィジカルに優れた選手ではありません。ホッフェンハイムはそこで人とパワーをかけてボールを奪います。そこから、ボアテングとキミッヒが上がってできた左サイドのスペースを活用する、というやり方をこの試合で何度か見せていました。メキシコもホッフェンハイムと同様に、ボアテングとキミッヒのところを同じような仕組みのハイプレスから狙っていましたね。
このようなことは、彼らが持っている戦術の一つに過ぎません。ブンデスリーガには、ワールドカップのときのメキシコのような準備を毎試合、日常的にやっているクラブが多いのだと思います。相手によってどういうプレスをかけ、誰を余らせ、誰がボールを持ったときに奪いに行くかという指示ですね。ブンデスリーガは戦術面でとても発展しているリーグだと思います。特にハイプレスのやり方などを見てみると、面白いと思います。
ブンデスリーガには、ナーゲルスマンを筆頭に、シャルケのドメニコ・テデスコ監督(33歳)やブレーメンのフロリアン・コーフェルト監督(35歳)など若くて最先端の戦術を取り入れている指揮官が活躍しています。将来的にビッグクラブに行く可能性のある指揮官だと思いますので、先物買い的に彼らのような青年監督の戦術に注目してみるのもいいかもしれません。
インタビュー・文=Goal編集部
【プロフィール】
林 舞輝 Maiki Hayashi
1994年12月11日生まれ、23歳。イギリスの大学でスポーツ科学を専攻。在学中にチャールトンのアカデミー(U-10)とスクールでコーチ。2017年よりポルト大学スポーツ学部大学院に進学。同時にポルトガル1部ボアヴィスタのBチーム(U-22)のアシスタントコーチを務め、主に対戦相手の分析・対策を担当。モウリーニョが責任者・講師を務めるリスボン大学とポルトガルサッカー協会主催の指導者養成コースに合格。
Twitterアカウントは @Hayashi_BFC
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