■勝利の要因は、まずポジティブな試合の入りができたこと
西野朗監督はコロンビア戦の前日会見で「自分たちでアクションを起こしていきたい」と話していましたが、まさにそのとおりの立ち上がりでした。「自分たちで‥」と言っても世界最高峰の舞台ではなかなかそのとおりにはいかないもの。前回大会の初戦、コートジボワール戦と比べても積極的な試合の入りだったと思います。(※)
※2014年ブラジルW杯グループステージ第1戦・コートジボワール戦。序盤から守備のプレスが連動せず引き気味になり、攻撃の核である香川真司・長友佑都の左サイドを押し込まれた。本田圭佑の見事なゴールで先制はしたものの、後半になりエース、ディディエ・ドログバの投入で一気に試合をひっくり返され、結果1-2で惜敗。ボール支配率43%対57%、シュート7本対20本。1試合を通して劣勢を覆せなかった。
今回は立ち上がりからハッキリと「攻守で積極的に」という意図を感じました。守備はもちろん、攻撃でも積極的な姿勢というのは、開始3分のゴールに結びついたプレーがまさにそうでした。
Getty Images守備から攻撃の切り替え時、香川選手のワンタッチパスに、大迫(勇也)選手がうまく相手の背後を盗りにいき、そのままシュート。そしてPKを獲得する要因となったシュートを打ったのは、パスを出した香川選手。パスを出した後、しっかりと前線についていったからこそ生まれたシュートであり、近くには乾(貴士)選手もいるなど、チャンスを逃さないという、攻撃陣のゴールへの意欲が見えたシーンでした。
PK獲得のみならず、決定機阻止ということでの退場、試合開始早々に数的優位になったことが、日本の勝利をグッと引き寄せたのは間違いありませんが、その要因を生んだのはまぎれもなく「相手に簡単にはプレーさせない」「自分たちでアクションを起こす!」といったポジティブなゲームの入りがあったからこそ、生まれた状況でした。
■納得の先発メンバー。驚きはなかった
先発メンバーに関していえば、個人的には驚きはありませんでした。攻撃陣でいうと、このゲームでも勝利のカギとなった、乾選手と香川選手。この二人は12日のテストマッチ・パラグアイ戦でのコンビネーションも素晴らしかった。各々にこのクオリティが高いことはもちろん、セレッソ時代からの信頼関係もあり、お互いが通じ合う「阿吽の呼吸」はこの先も日本の大きな武器となることと思います。
守備陣では昌子(源)選手。パラグアイ戦のパフォーマンスはもちろん、西野監督が「ボールを自分たちで持つ、受け身に回らない」と言っていたことからも、納得の起用。ボールを持てる選手であり、リスクマネジメントに長けた選手を使ったということ。
昌子選手はこの試合に先発した唯一のJリーガーですが、鹿島が2016年のクラブワールドカップ決勝でレアル・マドリーと戦った際、クリスティアーノ・ロナウドと対峙しても慌てることなく、冷静に対応し仕事をさせなかった。吉田(麻也)選手とのコンビネーションもよく、1人多かったとはいえ、特に後半は2人でうまく相手アタッカー陣をコントロールできていました。
ボランチの柴崎(岳)選手もよかった。彼の持ち味である、縦パスを織り交ぜたゲームメークはもちろん、守備面でも今までにないくらい、危ないところをきっちり抑えていた。西野さんの頭の中には、勝っている時なら山口(蛍)選手、攻撃的に行きたいときは大島(僚太)選手といろんな交代プランを考えていたと思いますが、短期間でこういったバランスを見いだしたというのはさすがの一言。
そして選手たちがが気持ちよく躍動感のあるプレーができた。これは間違いなく、勝利の要因の一つであり、そういったチームの空気を作り上げたのは、西野監督はじめスタッフの努力のたまものだと思います。
■ホセ・ペケルマン監督の采配、決断力
コロンビアは31分、攻撃の核となっていた(フアン・)クアドラード(ユベントス)を代えましたが、「大胆なことをするな」と思いましたね。
コロンビアとしては、早々に1点を取られ、バタバタしていた時間帯であり、実際、日本が追加点を決めてもおかしくないくらい統制が取れていなかった。そこですかさず動いた(ホセ・)ペケルマン監督、それも攻撃の核を代えてきた。
今チームに大事なのは守備の安定であり、センターラインを締め、[4-4]のブロックをソリッドにすれば、必ずチャンスは来るだろうという采配でしょう。案の定、日本はボールを動かすテンポが悪くなり、FKのチャンスも与え決められてしまいました。さすがペケルマン、名将の決断力に驚きました。
(C)Getty Images■同点に追いつかれた日本、後半どうするのか
相手のメンバー交代によって、日本のリズムは攻守においてやや悪くなってしまいました。
改善策としては、数的優位を活かして慌てずにボールを持つ。ファーストディフェンダーをしっかり定め、ボールに厳しくいく。そしてリスクマネジメント。後半、大事になるのはこの3点だなと思っていましたが、後半の立ち上がりから、日本はしっかりできていた。こういう修正は、監督をはじめスタッフの手腕であり、またプレーする選手個々の対応能力があってこそ。
実際ハーフタイムでは選手間で「相手もバテて前からプレッシャーに来られていないからボール回して‥」といった会話があり、みんなやることを整理できていたようです。そういった点も日本サッカー全体の成長と言えるのかもしれません。
実際、このゲームのスタメン11人中10人が海外でプレーしている事実は、Jリーグのレベル云々ではなく、個の質の向上を証明していると言えるでしょう。直前の監督交代もあり「チームとして積み上げた4年間」とは言えないかもしれませんが、この4年のみならず「日本のサッカー界の積み上げ」を感じた試合でもありました。
■興味深かった後半の采配、駆け引き
また後半の采配、駆け引きもとても興味深かった。
ぺケルマン監督は後半早いタイミング(59分)でハメス(・ロドリゲス/バイエルン)を入れ、立て続けに(カルロス・)バッカ(ビジャレアル)も入れてきた。強力な矛、攻撃陣を入れることによって、日本の攻勢を遮り重心を下げさせ、何とか自分たちのリズムにして得点のチャンスもうかがってきたわけです。
実際、あのクラスの選手に前線に残られると、「やられたくない」という思いから重心が後ろになり、リスクマネジメントとして必要以上に人数をかけ、結果として厚みのある攻撃ができなくなりがち。
しかし日本は堂々とボールを持ち、攻め切って、攻撃から守備への切り替え時でも簡単に重心を下げることなく、ファーストディフェンダーもきっちりプレスをかけ、相手のさらなる策にも怖じけずに戦えたことで、主導権を握り続けることができました。決勝点はCKから生まれましたが、日本のポジティブな姿勢から生まれた素晴らしいゴールでした。
©Getty Images課題を挙げるとすれば、アタックのときの3人目、4人目というつながりでしょうか。ここが出てくるとより深みのある攻撃が生まれるのではないかと思います。あとはピッチ上でのさらなるコミュニケーションですね。前半追いつかれたあとテンポが悪くなったとき、どうすればよかったのか。今回はハーフタイムを挟んで変わりましたが、流れが悪いときに誰が主導権を取ってやっていくのか。
簡単なことではありませんが、試合の流れをいかにコントロールできるか、センターラインの選手たちを中心に、日本の絆の強さを見せてもらいたいと思います。
最後にあらためてコロンビア戦勝利の要因をまとめると、
(1)PK獲得、数的優位など、圧倒的に有利な状況を作り出した、ポジティブな試合の入りができたこと。
(2)コロンビアのメンバー交代を含む策に対して、リズムを奪われたが、ハーフタイムでしっかり整理して後半に臨めたこと。
(3)相手が攻勢に出てきたところで、臆することなく自分たちのプレーをやりきり、2点目を奪えたこと。
そして、チームづくり。ポジティブな空気を作った西野監督の手腕、期待にこたえた選手たちの対応力、タフさ。それは、先ほども言いましたが、日本のサッカー界の積み上げ、この4年間だけではなく、歴代の選手たちがずっと積み上げてきた成果だと思います。
次に戦うセネガルは、先のチャンピオンズリーグ決勝で点を取れるタレント(サディオ・マネ/リヴァプール)がいるようなチーム。しかし、コロンビア戦のように臆せず自分たちの戦いができれば、勝機を引き寄せられでしょう。
勝負は時の運とも言いますが、そういったものを引き寄せるのは全員のポジティブな気持ち。前向きに、見ている人たちに勇気を与えてくれるようなプレーを、勝ち点3を期待します!

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