【森岡隆三が見る】堅い守備を崩す“技”が光ったフランスの2得点/ウルグアイvsフランス戦評

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(C)Getty Images
ロシア・ワールドカップも、準々決勝4試合が終了し、べスト4が決定した。ここでは6日に行われた準々決勝・ウルグアイvsフランスについて、前ガイナーレ鳥取監督であり現在はサッカー解説者を務める森岡隆三氏に、試合の流れを変えたフランスの得点シーンを中心に分析してもらった。

■互いに守備組織がしっかりしているチーム同士の戦い

フランスは、(キリアン・)ムバッペ選手(パリ・サンジェルマン)、(アントワーヌ・)グリーズマン選手(アトレティコ・マドリ―)というアタッカーはもちろん、ボランチの(ポール・)ポグバ選手(マンチェスター・ユナイテッド)も、攻撃力がありダイナミックで迫力がある。守備では中盤の底に(ヌゴロ・)カンテ選手(チェルシー)、その後ろにいるセンターバック2人は世界でもトップクラブでプレーするサムエル・ウムティティ選手(バルセロナ)とラファエル・ヴァラン選手(レアル・マドリ―)。GKウーゴ・ロリス選手(トッテナム)も含めてセンターラインの安定感は今大会屈指です。

世界的にもトップクラスのフォワード、ルイス・スアレス選手(バルセロナ)にもほとんど仕事をさせなかったこの試合は、会心の手応えがあったのではないでしょうか。

対するウルグアイも、ディエゴ・ゴディン選手(アトレティコ・マドリ―)、ホセ・ヒメネス選手(アトレティコ・マドリ―)を中心に守備の堅さが今大会の躍進を支えて来たチーム。互いに守備組織がしっかりしているチーム同士の戦いでした。最終ラインは互いに決して不用意なプレーはせず簡単にバランスを崩さない。ただしお互いの中盤は球際も含めてものすごく厳しくやり合う。一見、ゲームの展開がのんびりしているようで、すごく研ぎ澄まされた、そういったゲームに見えました。

この中で特に注目していたのは、ウルグアイCBのヒメネス選手。4年前ブラジル大会でディエゴ・ルガーノ選手(当時ウエストブロミッチ、現サンパウロ)が負傷して、途中からプレーしました。当時19歳で「こんな若いCBがこの舞台でプレーするんだ」という驚きと、堂々たるプレーにワクワクした記憶がありました。当時からアトレティコ・マドリーにいましたが、クラブでは出場もあまりなく、ゴディン選手ともまだCBのコンビを組んでいなかった。それが4年間たったらW杯屈指の名コンビとなっている。

よくアタッカーのパス交換、コンビネーションなどで、以心伝心、「あうんの呼吸」という例えが使われますが、守備においても「あうんの呼吸」というものはあるんです。

「ここでボールに厳しくいっても、きっとカバーにいてくれる」そんな関係が築けると互いの守備力はグッと上がるものです。所属クラブも同じで互いのクセも手に取るように分かる。そんな関係をゴディンとヒメネスのコンビにも感じました。もちろん、フランスのウムティティ選手とヴァラン選手、彼らは違うチームではありますが、同じリーガでプレーしている。CBコンビというところでも、優劣つけがたい、守備面にクローズアップしても見どころ満載のゲームだったと思います。

また、グリーズマン選手はアトレティコの選手ですし、ゴディン選手、ヒメネス選手とはチームメート。お互いにストロングポイントは大いに分かっている、そんな中でのゲーム、お互いの出方を見るような手堅いゲームになるだろうと予想していました。

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■デザインされたように見えたセットプレー

前半、開始から互いに見事に機能したソリッドな守備を見せていただけに「互いにこの堅い守備をどうこじ開けるか」と考えた時、勝敗を左右するモーションとして、《セットプレー》《個の仕掛け(ドリブル・ミドルシュート)》《ショートカウンター(※組織が整わないうちに攻める)》この3点がカギになると考えました。

実力が拮抗するチーム同士の戦いでは、ノーマークでボールを蹴ることのできる《セットプレー》が試合を大きく左右するのは言うまでもありません。そして《個の仕掛け》というのは、例えば日本代表で乾貴士選手が見せたドリブルでしかけて、相手を抜き去るといったプレー。ドリブルの仕掛けで先手を取ることができれば、抜き去ることで守備の組織に穴を開けることはもちろん、それを嫌がって1枚カバーリングに来た際に組織に綻びが出るので有効です。

またミドルシュートは引いている相手を釣り出すという点でも有効になります。そういった個の仕掛けは、対応するディフェンスのミスを誘い、セットプレーを獲得することにも繋がります。そして最後に《ショートカウンター》。どれだけ相手の守備組織が堅くても、組織が整っていないうちに攻めることが出来れば関係ないわけで、ゴールに近い位置で奪えばさらに守備を組織する暇を与えずシュートまで行く可能性も上がるわけです。

得点シーンはまさにそんな形、展開から生まれました。

40分、グリーズマン選手のFKからヴァラン選手が見事に決めてフランスが先制します。

フランスのヴァラン選手、ウムティティ選手はレアル・マドリ―とバルセロナ。グリーズマン選手はアトレティコ。対するウルグアイのゴディン選手とヒメネス選手はアトレティコ。同じリーグ、同じチームでプレーするからこそ、それぞれ特徴、強さはもうよく分かっているはず。だからこそのトリックだったと思います。

まずFKを蹴る際にグリーズマン選手にもう1枚(パンジャマン・パヴァール選手/シュツットガルト)がほのかに寄って行きました。そのためウルグアイは壁を2枚作ります。その時私は、距離、アングル的にも直接の可能性が低く「壁は2枚もいらないのでは」と思いました。グリーズマン選手の左足に敬意を払ってのことでしょうが、壁が2枚いることによって、当然のことながらウルグアイは中にかける枚数が減ってしまいます。

■グリーズマン選手のフェイクの効果

そしてグリーズマン選手がワンフェイク入れて蹴った。ウルグアイはゾーンとマンマークの併用で守っていましたが、ヴァラン選手にはマークをつけていたけど決められてしまった。

ゾーンは基本スペースマーク。皆で同じように距離を保って動き、相手にスペースを与えないようにするのですが、ボールが蹴られるタイミングで相手のスピードを吸収しながらボールに対してプレーすると、必然的にラインは下がるもの。

グリーズマン選手がボールを蹴る前にワンフェイクした狙いは、ウルグアイの強く高い壁とも言えるラインをほんの数メートル下げさせて、味方がパワーを持って入っていけるスペースを作り出したこと。一方で守備陣はタイミングがズラされたあと、一生懸命ラインを保とうとして止まる。止まってスピードがゼロになったところにヴァランが後ろからパワーを持って走り込み、ゾーンで守る選手の前に入り込みマーカーをはがし、見事鼻先で合わせゴール!

キッカーが2枚、左、右で2人が立って、どちらかの選手が蹴らずにまたぐことによって時間差をつくり、ラインが少し下がったところにマイナス気味に速いボールを入れるなど、ゾーンを相手にする際の工夫はいろいろあります。しかし1枚でフェイントをかけてうまく駆け引きして時間差を使ったものはあまり見ないので、ウルグアイの堅い守備を崩すために、これはチームとしてしっかりデザインしてきたトリックプレーであり、この局面で見事に決めたなと思っていました。

ただ、あとでグリーズマン選手のコメントを見たら、「ヴァランがフェイントを入れてくれというからフェイントを入れたら、いいところに走ってきてくれた」って言っていたので、即興でやったものなんだと知り、なおさら驚きました(笑)。

ヴァラン選手の動きもうまかった。彼はマークをはがすために、ファーにマーカーを釣るところからスタートして、タイミング良くフリーマンに向かい走ることで、マーカーに競るチャンスすら与えなかった。

アイデア、技術(キックの技術、ヘディングの技術)、駆け引きがビタッとはまった、まさに会心の一撃!そんなFKでした。

ウルグアイには世界的にも有名な2人のストライカー、エディンソン・カバーニ選手(パリ・サンジェルマン)とスアレス選手がいますが、今大会ここまで4試合で1失点の自慢の堅守を破られ、そのうえエースのカバーニ選手が(負傷で)不在というのは精神的にもかなりダメージを受けたと思います。

GKフランスのロリス選手のパフォーマンスも、大きく試合の命運を分けました。

40分のフランスの先制点の後、44分、ウルグアイのセットプレーからの一連の流れです。FKからマルティン・カセレス選手(ラツィオ)が決定的なヘディングシュートを放ったものの、ロリス選手が右手1本、見事なセービング。はじいたところにすかさずゴディン選手が詰めますが、素早く体制を立て直しシュートコースを切り、事なきを得ました。

ウルグアイとしては、なかなかチャンスが作れない中でのビッグチャンスであり、前半ラストの時間帯で同点に追いつけば後半のゲームプランにも影響します。

ここをしのいだロリス選手のあのセーブは、とても価値のあるプレーであり、同じように前半からあったチャンスをものにしたフランスに試合の流れが傾くのは必然だったに間違いない、と思います。

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■戦術眼と技術が融合。フランス2点目

61分のフランスの2点目は高い位置でボールを奪い、見事なショートカウンターからのミドルシュートでした。

1点先制されて、点を取るためには積極的にしかけなくてはならなくなったウルグアイ。しかしブロックを作ったときの守備は変わらず堅い。ではフランスとしたらどうすればチャンスをメイクしやすいか。それは先制したことによって、ウルグアイが点を取るべく重心を前にした際、ボールを奪ったら相手の陣形が整わないうちに攻めきってしまうということ。

2点目の得点シーンはまさにショートカウンターから生まれました。

中盤でポグバ選手がボールを奪うと、一気にペナルティーエリア前までボールを運び、最後はグリーズマンの一振り。ウルグアイはアタック時、サイドバックが高めのポジションをとっていて、攻撃から守備の切り替え時、両サイドも含めて必死にポジションを戻したので、数的不利な状況で失点したわけではありませんが、逆に戻してポジションを取った瞬間、ほんの少しのスペースと時間をグリーズマンに与えてしまうことになってしまった。

最初、素早い切り替えから相手の背後を突こうとした後、ディフェンスの戻しの速さを感じ、状況を把握し、ボールを受ける前にはシュートという意識があったのだと思います。時間もスペースもある、あとは1stコントロールを左足のいいところにさえ置けばシュートは打てると。

まったく無駄のないコントロールとシャープな振りからのブレ球は、見事にGKの手をはじいてゴールに吸い込まれました。

このシュートは入らなくてもチャンスで終われば、ブロックを引いて堅く守るディフェンスを引き出すという戦術的な面においても有効であり、厳しくいえば、シュートをはじき切れなかったGKのミスとも言えるのですが、ショートカウンターから相手の陣形が整う前に速く攻めることを試みて、相手が陣形を整えるのが速いとみるや、スペースと時間を作り迷わず振り抜いた、グリーズマン選手の「Great Try!」と言うべきではないでしょうか。

さて、フランスの準決勝の相手はブラジルを破ったベルギーになりました。

日本に勝ったベルギーを応援したい気持ちももちろんありますが、フランスがどこまでこの大会で覚醒していくかというかを見たいという気持ちもあります。

片方の山はクロアチアとイングランド。まだまだ見どころ、楽しみどころ満載、頂点に立つのはどのチームか、最後までW杯を心ゆくまで味わいたいと思います。

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