【森岡隆三が見る】ベルギー戦戦評。日本代表が世界の高みを感じ、視野に入れた大会

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(C)Getty Images
西野ジャパンは2日(現地時間)、ロシア・ワールドカップ決勝トーナメント1回戦でベルギーに敗れた。しかし、大会を通じてチームが見せたサッカーは、多くの気づきに満ちていた。前ガイナーレ鳥取監督であり現在はサッカー解説者を務める森岡隆三氏に振り返ってもらった。

■ラッキーや偶然で結果を出せるほど甘くない

まず日本代表がW杯の決勝トーナメントという舞台で、まぎれもなく優勝候補と呼ばれるチームと戦えることの素晴らしさ、喜びとともに、選手の市場価格が日本の10倍とされているスーパースター軍団を相手にどのような戦いができるのか、不安と期待の入り混じった中、試合に見入りました。

試合は日本が2点のリードを奪う期待以上とも言える展開から、アディショナルタイムに逆転を許すという、起きた事実を受け入れるにはあまりにも残酷な展開でのタイムアップ。しかし、世界のサッカーの高みを感じたとともに、世界の高みを現実的に視野に入れた、そんな時間であり、今大会はそういう大会だったと思います。

W杯の舞台は、ラッキーや偶然で結果を出せるほど甘くない。ベルギーのアディショナルタイムでのカウンターは、まさに世界最高峰の戦術、技術、フィジカルも含めたクオリティーの結晶であり、そしてまた日本がそのベルギーから奪った2点も、ラッキーや偶然なんかではなく、日本サッカー成長と躍進の産物であり、確かな実力であげた2点であり、ベスト16であるということ。

本当に悔しい敗戦であると思いますが、胸を張って帰ってきてほしいと思います。

このような試合ができた要因として、やはりグループリーグ第1戦・コロンビア戦で勝ったこと、もっといえば自分たちでアクションをおこす、受け身ではなく能動的に戦うこと、大会前から西野朗監督が話していたことを実践し、結果につなげたことが大きいでしょう。

良い形で大会に入り、第2戦・セネガル戦で2度のビハインドを追いつき、さらに自信につながった。自信は選手の躍動となり、2試合で勝ち点4を得た。そしてこのベルギー戦も戦う姿勢を変えずに挑んだこと、手ごたえが確信に変わったように見えました。

■2つの守備プランのしっかりとした使い分け

まずは立ち上がり、前線からの厳しいフロントプレスによって、ベルギーに「この試合は簡単でない」と思わせたと思います。

そしてこの試合も、日本は2つの守備プランをしっかりと使い分けていました。

前線からプレッシャーを掛けるフロントプレス、もう一つは、相手にミドルサード(真ん中のエリア)まで運ばれたときは、自陣でしっかりバランスを保って守るソリッドなブロックディフェンスです。

またディフェンシングサード、特にペナルティーエリア付近では簡単に1vs1にしない、必ず誰かがカバーに入ることも徹底できていました。相手はエデン・アザール選手(チェルシー)やドリース・メルテンス選手(ナポリ)、ロメル・ルカク選手(マンチェスター・ユナイテッド)を相手に1vs1で勝つには難しくとも組織としてどう抑えるか、この試合における最大のタスクでした。

守備は粘り強く、冷静によくできていたと思います。今大会で続けてきたラインコントロール、コンパクトを保つことも、チャレンジ&カバーもしっかりできていました。

前半、受けに回る時間帯はありましたが、そこは相手との力関係や、試合の流れによるもの。ベルギーは複数人が絡むコンビネーションも巧みなものがありますが、世界の舞台で決定的な仕事をする選手たちのシンプルなドリブルの仕掛けやクロスからのアタックなども迫力満点で、粘り強く冷静に個でも組織でも守れた、前半の0-0という結果は非常にポジティブなものでした。

■素早い切り替えから挙げた2得点

前半の課題を挙げるとすれば、自陣でボールを奪った後です。

押し込まれていたせいもありますが、前線には大迫勇也選手しかいない状態が多く、ボールを奪ったとしてもなかなかボールを前に運べなかった。逆に、奪った後に相手の速い切り替えで奪い返されたシーンが多かった。

ではどうやってボールを保持し前に運んで行くか。ボール奪取した時の状況にもよりますが、ボールが前向きなら、ボールより前にいかにポジションを取り、人数をかけることができるか。守備で労力を使うぶん、そこから攻撃にいくのは容易ではないのですが、相手の攻撃から守備の切り替えを上回らなくては、当然攻撃はできない。これはハーフタイムでスタッフから修正があったかと思いますが、選手個々も感じていたと思います。

2018-07-02-japan- haraguchi

ベルギーのシステムは3-4-3、日本の選手たちには両ワイドが上がった際はチャンスだという共通理解があったのでしょう。

先制点のシーンはしっかりとした守備、速い切り替え、そしてチームとしての狙い所、プランからゴールに結びつきます。

自分たちの右サイド、相手の左サイド、アザール選手がドリブルで仕掛けてきた際、まず酒井宏樹選手が対応し、原口元気選手がカバーに入ってドリブルを食い止め、逆サイドに展開されると、今度は長友佑都選手と乾貴士選手が対応し、マイボールにします。

自陣左サイドでボールを奪った瞬間、いち早く反応し飛び出したのは右サイドの原口選手。乾選手が中央を走る柴崎岳選手につなぎ、受けた柴崎選手が素晴らしいパスを原口選手に通すと、原口選手は軽く切り返すワンフェイクを入れたことで相手DFの動きを一瞬止め、シュートコースを作ると迷わず振り抜きました。

全員攻撃全員守備、結束力、つながり、切り替えの速さ、日本のストロングポイントが見事にゴールに結びついたシーンでした。

決勝トーナメントの場で、優勝候補のベルギー相手に自分たちの狙いの形から点を取れた。これは今後の日本の大きな自信になることでしょう。

ベルギーは日本に先制されると、1トップ2シャドーの3人がさらに前線に残り気味になり、切り替えで上回るとより中盤で優位性が生まれ、2点目はまさにルーズボールをバイタルでうまく回収した香川選手が、乾選手につないだところから生まれました。

やや相手のアプローチが甘かったようにも感じましたが、きっとそれは乾選手のドリブルを警戒してのことだとも思います。それにしても、素晴らしいショットでした。リーガエスパニョーラの覇者・バルセロナ相手に堂々たるゴールを決めることのできる選手のクオリティーの高さを見せてくれました。今まで日本は「個の質」に関して多くの議論がなされてきましたが、個が十分、世界の舞台で戦っている力を見せてくれました。

■ミスから攻撃の糸口を与えてしまう

日本は2点のリードで流れも良く、さすがのベルギーもあせりが見られミスもあり、また追加点のチャンスもありました。

そんな中、中盤でのパス交換のミスが起きます(※)。その流れからベルギーにボールを運ばれるとクロスからチャンスを作られ、そこは吉田麻也選手が見事な対応を見せますが、最終的にセットプレー(CK)を取られてしまいます。

※センターサークル付近で長谷部誠選手から香川真司選手のパスが相手に当たり、香川選手がトラップしたが、ベルギーボールになる

ヤン・フェルトンゲン選手(トッテナム)のヘディングは狙いのあるシュートだったとは思いませんが、サッカーは時にああいったゴールが入ってしまうものであり、厳しい視点で見れば、失点シーンまでの過程において、結果的に自分たちの少しのミスから相手に攻撃の糸口を与えてしまった。

そしてその糸口からの流れを断てなかったことは残念なところです。しかし、サッカーにミスはつきものであり、ほんの少しの糸口からゴールを奪うまでもっていく、ベルギーの強さ、力はやはり本物でした。

ベルギーの2点目、セットプレーの流れからアザール選手にボールが渡り、個の突破からタイミング、質、ともに申し分のないクロスが上がると、中で合わせたのは途中出場のマルアン・フェライニ選手(マンチェスター・ユナイテッド)。彼がもし他のチームにいたとしたら、エース級の活躍をしている選手。そのあたりはサブメンバーも含めての優勝候補との選手層を見せつけられた、そういわざるを得ません。

2018-07-02-fellaini-japan

残念だったのは、ここまでアザール選手に対しては常に複数で対応できていたシーンが多かったのですが、失点シーンではセットプレーの流れということもありますが、1vs1を作られてしまい、決定的な仕事をされてしまった。ただ1vs1なら確実に仕事をしてくるあたり、ワールドクラスの質を見た気がします。

追いつかれた日本は、81分に柴崎選手が山口蛍選手に、原口選手が本田圭佑選手に交代します。

前半からかなりの運動量を求められていた両者の疲労を考慮したのだと思います。時間が時間ということもあり、山口選手には守備の面で期待しつつ、本田選手にはワンチャンスを求めたのもあるでしょう。実際、アディショナルタイムにFKから本田選手のシュートが枠を捉え、並みのキーパーなら入ってもおかしくないチャンスがありました。

しかしそのあと、攻撃のCKから逆転を許してしまった。

試合状況は2-2で迎えたアディショナルタイム残り数秒というところ。日本としての最高のシナリオは、ラストチャンスを決めて、日本サッカー史上初のベスト8進出であり、たとえクリアされたとしても、そこでタイムアップ、延長戦という頭があったと思います。残り数秒でカウンターから失点という最悪のシナリオは想定すらしていなかったかもしれません。いや後ろの人数はしっかりと揃えていたので、想定してはいたものの、ベルギーのカウンターのスピード、質がはるかに想像を超えたとも言えます。

一方、ベルギーはワンチャンスあると想定していたのだと思います。

そして GKのティボ・クルトワ選手(チェルシー)がコーナーキックをキャッチしたことによりカウンター発動のスイッチが入ってしまいました。いやキャッチできると思った瞬間にはベルギーの選手たちは動き出していました。

ケヴィン・デ・ブライネ選手(マンチェスター・シティ)がクルトワ選手からボールを引き出すと、ドリブルのコース、スピード、質、ルカク選手の味方を生かす動きの質、タイミング、そしてトーマス・ムニエ選手(パリ・サンジェルマン)のラストパスの質も、その前のデ・ブライネ選手のパスの質も、ルカク選手のスルーも、上がってきたナセル・シャドリ選手(ウエストブロミッチ)のランニングの質も、最後のシュートも含めて、ノーミスのパーフェクトなカウンターから日本は決勝点を決められてしまいました。

■ベルギーのカウンター、日本はどうすべきだったのか

この局面を掘り下げて見ると、キッカーは本田選手、ショートに香川選手が寄ることで、相手を2枚(香川選手にムニエ選手、そしてゾーンにデ・ブライネ選手)を釣り出し、ボックス内に4人が入り、こぼれ(セカンドボール対応)は乾選手を置き(マーカーはシャドリ選手)、前線に残るルカク選手に長友選手、アザール選手に長谷部選手、フリーマンに山口選手とセットアップはバランス良く悪くなかったと思います。

しかしキーパーがボールをキャッチするということは、カウンター発動につながるので、ショートCKがフリだったとしても、対応に出てきた選手たちは逆にカウンターに行きやすくもあり、キャッチされるボールになってしまったのは、厳しい目で見ればミスといえるでしょう。

実際、ラストパスを出したのは香川選手の対応に当たっていたムニエ選手であり、ボールを運んで日本のディフェンスを引きつけ効果的なパスを出したのはショート対応で本田選手をターゲットにしつつゾーンマークをしていたデ・ブライネ選手でした。

そして中の駆け引きでは、ボックスの外、2ndボール対応の乾選手が2列目から駆け引きの中、ボックスに入っていくことで、マーカーのシャドリ選手との駆け引きからチャンスを作ろうとしました。実際、シャドリ選手がやや遅れた対応をしたので、吉田選手らがニアにマーカーを釣った背後に空いたスペースを乾選手が使うというトリックであったのかもしれません。

しかし結果としてボールはキーパーにキャッチされ、切り替えの時点で乾選手とマーカーのナセル・シャドリ選手(ウエストブロミッチ)は立場が入れ替わり、途中出場の余力の有り余るシャドリ選手は素晴らしいスプリントからゴールを決めるという結果になってしまった。

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何をどうすればよかったのか。

この失点はゲームマネージメントのミスなのか、技術ミスなのか、判断ミスなのか、はたまた少しの油断なのか。答えはすべてにおいて言えることかもしれません。

少しのスキも見逃さない、世界の舞台で決定的な仕事を遂行できる選手とその集団の凄さを改めて思い知らされた失点でした。

あの状況(引き分け、アディショナルタイム、相手は格上など)ならば、CKでどういうボールを中に入れるか、何枚アタックに行き、リスクはどうするか?など、分析はもちろんのこと、この1シーンにおいても様々な建設的な議論がなされるべきだと思います。

「ベルギーのカウンターすごかったよね」で終わるのではなく「なぜやられたのか」「どうすれば止められたか」という会話に変わることで、本当に悔しい思いをした失点が、次への一歩、妥当ベルギー攻略の貴重な手段に変わると思います。

(第2回に続く)

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