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森保新監督は、どのようにチームを作り、どのようなサッカーを目指すのか

■チーム作りの基盤、「まずは幅広く選手を見る」

広島を率いた5シーズンで3度の優勝。しかも選手の引き抜きに遭いながら残した戦績だから、森保一氏がサンフレッチェ広島で残した数字は明らかに非凡である。人情家としての一面と戦術家としての一面を併せ持つ指揮官は、昨年末、東京五輪を目指すU-21日本代表監督に就任すると、足元を固めながら着実にチームを作ってきた。

もともと若年層の指導実績はある。2005年から07年にはかけてはU-18〜U-20日本代表のアシスタントコーチを務め、U-20W杯カナダ大会までを戦い抜いた。内田篤人、槙野智章、柏木陽介、そして香川真司らのいた当時のチームは“調子乗り世代”として名を馳せた。

森保監督は、「久しぶり過ぎるので」と笑っていたが、その指導は現五輪代表選手たちからも「分かりやすい」と評判は上々だった。

そのチーム作りとしては、「まずは幅広く選手を見たい」という意識から始まっている。

現五輪代表の最初の活動機会となった2017年12月のM-150杯(タイ)には、同年5月のU-20W杯韓国大会に参加した選手たちをあえて招集せずに、「先入観なしで選手を見たい」と新鮮な顔ぶれをテスト。続く本年1月のAFC・U-23選手権中国大会には、そこでパフォーマンスの良かった選手をピックアップしながら戦術浸透を図り、一つのラージグループを形成していった。

東京五輪まで時間があることもあり、直近(2018年5月)のトゥーロン国際大会を含めてガチガチのチーム作りというより、いろいろな選手に刺激を与え、幅広い層に戦術を浸透させることを重視しているのは明らかだった。

基本システムは[3-4-2-1]の形で、これは広島時代も採用していたもの。

「日本人が世界と戦うためには合っていると思う」と語ってきたシステムを、東京五輪で世界を相手にぶつける腹づもりのようだった。一つのシステムにこだわらないことは明言しており、実際に4バックで戦った試合もあるのだが、やはり基本線はこのシステムで五輪を戦う構想だったと思う。

広島時代はビルドアップに際して“ボトムチェンジ”と呼ばれるボランチの一人(主に森崎和幸)が最終ラインに入って組み立ての中心となるやり方を採用していたが、これは当初採用しなかった。だが、先日のトゥーロン国際大会ではボランチが最終ラインに落ちるプレーを仕込み、チーム戦術に組み込んでいる。

ただし、常に変化するわけではなく、あくまで状況を見ながらの戦術的な選択肢としての導入である。このように戦術的にも少しずつ段階を踏みながら進歩させていく意図があったのだと思われる。

■守備は割り切りの5バック、攻撃は1トップ2シャドー

一方、守りについてはどうだろう。相手にボールを持たれて守備をセットするときは5バックで割り切って守るのが森保式の基本軸。

これについて3月のパラグアイ遠征、5月のトゥーロン国際大会を通じ、実際にこのシステムで欧州・南米勢と対戦した感想をMF初瀬亮(ガンバ大阪)に問うと、「日本人が世界と戦うには、このやり方がいいんじゃないかと思った」という回答が返ってきた。

初瀬自身は4バック中心に育成されてきた選手であり、「森保式システム」について事前に深い理解があったわけではない。当初はやりにくさを感じているのかなと思う場面もあったのだが、やりながら腑に落ちる部分があったのだろう。

昨年5月のU-20W杯韓国大会(ラウンド16で敗退)で感じた「世界を相手に後ろを4枚で守る」難しさと合わせて考え、5枚で守る森保式にある種のやりやすさを感じるようになったようだ。初瀬の入ったウイングバックのポジションには過酷な運動量が求められる一面もあるのだが、そこは“日本人らしさ”を出しやすい部分でもある。

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▲初瀬亮(ガンバ大阪)は、U-21代表の活動で「森保式」にある種のやりやすさを感じているようだ

攻撃に関しては1トップ2シャドーを使った崩しを狙う形が基本線。距離感を近くしつつ、DFとMFの間にできるスペースを使って崩していくのは日本サッカーが伝統的に重んじてきたやり方であり、そこに少しオートマチックな要素を付け加えたものになるだろう。

香川真司(ドルトムント)や乾貴士(ベティス)などロシアW杯を戦ったメンバーにも2シャドーの適材は多く、若い東京五輪世代にも堂安律(フローニンゲン)や三好康児(コンサドーレ札幌)のようなこのポジションにハマりそうな選手もいる。

ペナルティーエリアの幅の内側を使った“ちょこまか”した崩しと、サイドチェンジからウイングバックの走力と突破力を活かした外からの崩しの二つが攻撃面での大きな軸となる。

そしてもう一つ、広島時代は速攻の形も磨き抜かれており、ボール奪取からの1トップ(あるいは2シャドー)の裏抜けから一気呵成に相手ゴールを陥れることも少なくなかった。これも大事な狙いになるだろう。

■A代表と五輪代表、兼任体制への期待と懸念

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森保監督には五輪代表との兼任監督になったことで、若手をA代表へスムーズに引き上げるという効果も期待される。もちろん実力のない選手を上げても仕方ないが、五輪世代の選手は戦術理解という意味で、A代表の他の選手よりむしろ先んじており、少なくともチーム戦術にフィットせずに活躍できないという心配はない。

2000年のシドニー五輪において、フィリップ・トルシエ監督が兼任監督として指揮を執ったときも、中田浩二のようなまだクラブでの実績が乏しかった若手を積極的に引き上げてチームを活性化、そして若手選手のブレイクスルーにつなげていた。世代交代というか世代融合のためにも、同様の効果は期待したいところだ。こうした現象が起きないようだと、そもそも兼任監督を置いた意味がない。

兼任体制の懸念材料は、二つの代表日程が重なる場合のスケジュール面での調整と、非常に真面目な森保監督が過労状態に陥ってしまうこと。

技術委員会を筆頭とする日本代表をサポートする体制自体の改革を含め、“ダブル森保ジャパン”をより効率的に、そしてダイナミックに機能させる仕組み作りと人材登用が求められることになる。

文=川端暁彦

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