2018－19シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ（CL）開幕が間近に迫っている。世界最高峰の大会のスタートを間近に控え、『Goal』では、お茶の間で大人気の解説者で元日本代表DF松木安太郎氏にインタビューを実施。松木氏にロシア・ワールドカップで活躍した選手を中心に、CLで観るべきお勧めの注目プレーヤー、そしてCSKAモスクワに移籍したFW西村拓真選手などについて存分に語ってもらった。
取材協力：ロイヤルパークホテル
――まず、開幕が間近に迫っているUEFAチャンピオンズリーグについておうかがいします。松木さんは、チャンピオンズリーグとは、どのような魅力がある大会だと感じていますか？
チャンピオンズリーグ、これはまさにワールドカップのクラブ版ですよ！ ワールドカップに出場した選手が、代表チームとはまたひと味違う役割を担うことも多いです。ワールドカップで気になった選手がいた視聴者の方は、またクラブでのプレーを見ることで新たな一面を発見できるかもしれませんよ。それに、レベルとしてはワールドカップ以上かもしれません。素晴らしい選手が集まっています。
■松木氏、クロアチア推し
(C)Getty Images
――ポジションごとに注目選手を教えていただきたいのですが、まずワールドカップで推していた国はありましたか？
実は僕、前評判以上のパフォーマンスで準優勝したクロアチアを優勝候補に挙げていたんですよ。たくさんの解説者がいる中で、唯一だったと思います。何といっても、あのメンタリティ！ だから今回も、クロアチアの選手は推したいな（笑）。
――GKの注目選手からおうかがいします。レアル・マドリーのティボー・クルトワ（ベルギー代表）やリヴァプールのアリソン・ベッカー（ブラジル代表）などが出場しますね。
いや、僕が選びたいのはモナコのクロアチア代表GKダニエル・スバシッチです。あのレスポンスとゴールエリアでの反応。まさに、「スバシッこい！」。とにかく、「どんなボールにもスバシッチ！」って感じでしょう（笑）。
冗談はさておき、とにかく反応の良さを見てほしいですね。クロアチアが準優勝までいけたのは、ディフェンス力も大きかった。危ないシーンを幾度も守り抜いたクロアチアの中で、じっと我慢できる守備力という部分では、スバシッチを中心とした守備陣がよくやったと思いますよ。
――スバシッチやチャンピオンズリーグに出場するビッグクラブのGKを見て、日本の若い世代の選手にとって参考になる点はどのようなところでしょうか？
「予測力」と「我慢ですね」。予測力は経験によるところも大きいですが、「ここは飛び出す、ここは飛び出さない」という見極めの精度が高いです。そして我慢。スバシッチだけではありませんが、世界最高レベルのGKは、一対一の場面などで本当に最後まで動かないですよね。最後まで相手を見極めて、動く。そこがすごいです。
■日本が苦しんだベルギーから…
(C)Getty Images
――DFではベルギー代表のトビー・アルデルヴァイレルト（トッテナム）やイングランド代表のカイル・ウォーカー（マンチェスター・シティ）がCLに出場します。
いやぁ僕はね、同じベルギー代表でもトーマス・ムニエですよ！
――日本代表もベルギー代表に苦しめられましたね。ベスト8をかけた試合、ベルギーの3得点目のアシストがムニエでした。
日本もやられたよね…。最後のところの立役者で、あの9秒間をつくった選手の一人ですよ。あの推進力…。トーマス・ムニエ。いやぁ、まさに「機関車トーマス」（笑）。ファイティングスピリットがあって、列車のごとく前に進む力がある右サイドバックですよ…。3位決定戦のイングランド戦でも突っ込んでボレーでゴール決めたよね。日本を苦しめたという部分でも、チャンピオンズリーグでも注目だなぁ。
――あの3点目を奪われた時の心境はいかがでしたか。
「おいおい、どうなってんの?!」って感じでしたよ。でも、ベルギーの選手たちはしっかりと狙っていたよね…。ポーランド戦のボール回しで賛否両論があったから戦い方にも影響があったかもしれないけど、サッカーの恐ろしさ、それと同時に奥深さも改めて教えられたベルギー戦でした。
■ディフェンスにも“モドリッチ”！
――MFの注目は、やはりレアル・マドリーのMFルカ・モドリッチかバルセロナのMFイヴァン・ラキティッチといったクロアチア勢でしょうか？
ここはモドリッチでしょう！ あの運動量豊富なクロアチアの中でも一番走っていた選手の一人ですからね。3試合連続で延長戦をやったけど、それを感じさせないほどだった。クロアチアを引っ張っていったモドリッチの姿。いやぁ、すごいよ。
――改めてモドリッチのプレー面での特長を教えていただけますか。
テクニックやパスの攻撃センスはもちろんだけど、守備も献身的なんですよね。まさに、「ディフェンスにもモドリッチ」（笑）。そして、「クラブに戻るモドリッチ。自分のチームにモドリッチ」。注目でしょ。
――モドリッチは2017－18シーズンのUEFA最優秀選手賞を受賞しましたね。バロンドールもクリスティアーノ・ロナウドと争うと言われています。
もう、バロンドールもモドリッチで良いんじゃないかな（笑）。ロナウド、バロンドール5個も持っているからいいでしょ？（笑）。リオネル・メッシとロナウドが独占してきて、ちょっとこういう異色な感じの選手が獲ってもいいと思いますよ。レアル・マドリーが4連覇できるかどうかのキーマンもモドリッチでしょうね。
■思い出して、ムバッペ
(C)Getty Images
――チャンピオンズリーグはFWもパリ・サンジェルマンのネイマールやリヴァプールのモハメド・サラーなど多彩です。一人を挙げるとしたら誰でしょうか。
ワールドカップから言えば、ネイマールと同じパリ・サンジェルマンでもキリアン・ムバッペのほうでしょう。ワールドカップを少しでもご覧になった方は、名前を覚えたのではないかな。まだ19歳で、あの大きな身体ですごいスピードとテクニック。今後の世界のサッカーを引っ張っていく選手の一人なので、もちろん注目。現代のペレとか言われていたけど、それが大袈裟ではないぐらい今後、活躍を続ける選手だと思うので見ておいたほうが良いですよ。
若い割にはクレバーで、トラップの仕方など局面によって自分のプレーを変えることができるんですよ。あの迫力は一度見たら忘れられない！ 呼び方が難しいけどね（笑）。忘れた場合は、「あの選手の名前はなんだっけ？ なんだっけ。なんばっぺ。んばっぺ。ムバッペ！」と思い出してください。
■日本人選手への期待
(C)J.LEAGUE
——日本人選手についてもおうかがいさせてください。今回、チャンピオンズリーグにも出場するCSKAモスクワにベガルタ仙台の西村拓真選手が移籍しました。西村選手の印象を教えてください。
J1リーグで移籍までの成績だと日本人選手として最多の11得点を記録していたことからわかるとおり、得点力はある。なぜ得点を奪えるかと言えば、いつもゴール前で得点を意識してポジション取りしていますよね。シュートに持っていくまでの技術があって、動き出しも鋭い。特に、ペナルティエリア内で持ち味が発揮できる選手だと思います。
もちろん、CSKAモスクワでも期待です。ただ、パスを供給されないと活きにくいタイプでもあると思いますから、チーム内でのコミュニケーションや連係面が特にスタートは重要になってくると思います。信頼されていけば、徐々に彼の良さが出てくるんじゃないかな。
――チャンピオンズリーグでは、レアル・マドリー、ローマ、ヴィクトリア・プルゼニと同グループです。
これは楽しみですね！ 特にレアル・マドリー戦なんて、日本でも多くの情報が入ってくるでしょう。やはり嬉しいのは、「ゴール」という情報が日本に伝わること。フィニッシャーなんで出場機会も期待できるでしょうし、いつもゴールを意識したプレーができる選手なんで、期待はふくらみます！
(c)Goal
――香川真司選手のドルトムントは、アトレティコ・マドリー、モナコ、クラブ・ブルージュと対戦します。シーズン序盤は、出場機会を得ることに苦しんでいますが？
試合が増えれば必然的にチャンスの可能性も広がりますよ。ロシア・ワールドカップで、自信をもう一度取り戻すキッカケになったかなとも思うし、本来のプレーを見ることもできた。そこをクラブ、チャンピオンズリーグでの戦いにもつなげてほしいですよ。出場すれば仕事ができる選手です。活躍してほしいなぁ。
――ガラタサライの長友佑都選手は、インテル時代以来、7シーズンぶりのチャンピオンズリーグです。
個人的には、長友選手がガラタサライを選んだ理由の一つにチャンピオンズリーグの存在があると思いますよ。やっぱり欧州でプレーしていたら、クラブレベルだとチャンピオンズリーグに出場することは重要だと考えるでしょうからね。長友選手のCLでの最高成績はインテル時代のベスト8ですか？ 久々だけど、経験で言えば豊富な選手。それをチームに注入して、できるだけ上に行ってもらいたいですね。
――では最後に、今シーズンのチャンピオンズリーグで松木氏が期待していることを教えてください。
世界最高クラスの選手たちを見ることはもちろん、やはりまずは日本人選手の活躍だよね！ 今回は3人の日本人選手が出ます。特にみんな、ゴールに絡める選手たちなので、そこを期待したいですよ。ゴールを取って盛り上げてもらいたいなぁ。長いチャンピオンズリーグ、期待をもって見届けたいと思っています！
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