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日本代表が躍動した理由。個性を最大限に引き出した森保監督のアプローチ

森保ジャパンの初陣は、勝利という結果とともに選手たちの生き生きとした姿が印象深い一戦だった。チームが札幌に集合したのは9月3日、6日には平成30年北海道胆振東部地震が発生。集合して9日目での初の実戦を迎えるにあたり、森保監督はどのようなアプローチでこの試合に臨んだのか? ロシア・ワールドカップ、U-21が参加したアジア大会、そして新生・日本代表を密着取材する飯尾篤史氏はこう見る。

■中島、南野、堂安。高揚感の中心にいた3人

ロシア・ワールドカップで味わったのとは異なる興奮だった。

目の前で繰り広げられているプレーにワクワクするだけでなく、近未来を想像してさらに胸を高鳴らせるというような――。

その高揚感の中心にいたのが、4-2-3-1の2列目に並んだ中島翔哉(ポルティモネンセ/ポルトガル)、南野拓実(ザルツブルク/オーストリア)、堂安律(フローニンゲン/オランダ)の3人だったのは間違いない。

中島は相手ふたりに進路を塞がれてもドリブルで仕掛け、堂安はトラップひとつで目の前の相手を手球に取った。南野はオフ・ザ・ボールの動きに凄みを見せた。

そして何より、3人ともプレーのベクトルが常にゴールに向いているのがいい。

彼ら3人がロシア大会における乾貴士(ベティス/スペイン)、香川真司(ドルトムント/ドイツ)、原口元気(ハノーファー/ドイツ)、ザックジャパンにおける香川、本田圭佑(メルボルン・ビクトリー/オーストラリア)、岡崎慎司(レスター/イングランド)のトリオに匹敵する存在になってもおかしくない。

もっとも、コスタリカ戦で持ち味を発揮したアタッカーは彼らだけではない。中島、堂安に代わって入った天野純(横浜F・マリノス)、伊東純也(柏レイソル)も短い出場時間で試合の流れに乗って、自身の能力を証明したのだ。

もし、これが3-4-2-1だったら、果たしてどうだっただろうか?

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■4-2-3-1がもし3-4-2-1だったら…

3-4-2-1は、言わずとしれた森保一監督愛用のシステムである。サンフレッチェ広島時代はもちろん、U-21日本代表も3-4-2-1を主戦システムにして戦っている。

過去には「(3-4-2-1は)日本人の良さを引き出せるシステム・戦術だと思っている」と語り、札幌キャンプの初日にも「(3-4-2-1は)私が長くやってきた形なので、基本的にはベースとして持っておきたい」と話しているため、A代表でも取り組むものだと考えられていた。

とはいえ、攻守において大きく形を変え、シャドーとウイングバックに求められる役割が複雑な3-4-2-1は、戦術を習得するのに多くの時間を必要とする。

実際、U-21日本代表も自分たちのモノにしたと言えるのは、8月に行われたアジア大会において、なのだ。広島時代に森保監督の指導を受けた浅野拓磨(ハノーファー/ドイツ)も「自分も広島時代に森保さんのサッカーを経験して、すごく悩んだ時期がある」と打ち明けている。

しかし、このコスタリカ戦では、ロシア大会でも採用され、クラブにおいても慣れ親しんでいる4-2-3-1が採用されたことで、“システム・戦術に慣れる”というストレスが取り除かれた。そのため、選手たちは自クラブで見せているようなプレーを披露できたのではないか。

「4バックというやりやすいシステムを採用したことも、若い選手たちの良さを引き出すことに繋がったのか?」という質問に対して、「それはあると思います」と答えた槙野智章(浦和レッズ)は、さらにこう続けた。

「森保さんが現状のクオリティとやり方を考えたうえでの選手配置とフォーメーションだったと思います」

■柔軟に。西野監督からの学び

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では、森保監督自身の考えは、どうだったのか。

記者会見で「なぜ、3-4-2-1ではなく4-2-3-1だったのか」と問われた森保監督は、こんなふうに答えている。

「いろいろな形に対応してほしい、対応力を持ってほしい、柔軟にやれる考え方を持ってほしい、臨機応変にやってほしい、ということでこの形にしました。システムは違っても、サッカーをする上での原理・原則は変わらない。選手たちはそれを理解してやってくれたと思います。また、ロシア・ワールドカップにコーチとして参加させていただいて、西野(朗)監督から本当に多くのことを学んだ。そこで学んだことを先に繋げていくという意味でも、私自身トライしたいなと思ってやりました」

西野監督は初陣となったガーナ戦で、慣れ親しんだ4-2-3-1はいつでもできる、との考えから、苦手意識のある3-4-2-1にまずはトライした。こうしてオプションを作ったうえで、その後、選手の能力を最大限に引き出す形や組み合わせを探り、2列目に乾、香川、原口を並べる4-2-3-1でワールドカップを戦った。

「西野監督から多くのことを学んだ」というのは、この辺りのことを言うのだろう。それゆえ、昨年12月に発足したU-21日本代表では真っ先に3-4-2-1をレクチャーしたが、ワールドカップ後の今回は、形から入るのではなく、選手たちの個性を最大限に引き出すというアプローチをしたのではないか。

かつて森保監督の指導を受け、キャプテンに任命された青山敏弘(広島)が指揮官の思いを代弁する。

「森保さんの色がそこまで出ていないのはたしか。ただ、勝負にこだわるというところでは、一番可能性が高いのが今日のシステムや組み合わせだと思って、この形にしたんだと思う」

新監督にとって初陣というのは、所信表明の場だ。その初陣から、森保監督のこんな所信表明、選手たちへのメッセージがたしかに感じ取れた。

3-4-2-1と決めつけないで。臨機応変に、対応力を持って戦っていくんだぞ――。

やりやすいシステムで戦うから、原理・原則を守ったうえで、自分の持ち味を存分に発揮するんだぞ――。

臨機応変に、対応力を持って戦うためには、複数のシステムを併用する必要がある。おそらくこの先、3-4-2-1に取り組むときが来るはずだ。指揮官が日本人の良さを引き出せるシステム・戦術だと思っているのだから、なおさらだ。

しかし、この初陣においては、前任者の影響を受けたという指揮官自身の学びの証でもある4-2-3-1という舞台装置が、2 列目のアタッカーたちを、新生日本代表を、よりいっそう輝かせたのは、間違いない。

文=飯尾篤史

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