日本とヨーロッパの違い。中島翔哉のブレイクも不思議ではない【林舞輝インタビュー/第1回】

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指導者養成の名門・ポルト大学大学院で学ぶ23歳の指導者・林舞輝氏。欧州サッカーの第一線で学び、指導するからこそ分かる最先端のサッカーとは…? 日本と欧州の差はどこにあるのだろうか。

世界のサッカーは変化している。日本が、日本を見ている間に世界は次の段階に進んでいる。

「今ペップが日本代表の監督になっても日本はW杯で勝てないし、モウリーニョがやっても勝てないし、僕が例えば20年後、30年後、40年後にペップ以上の監督になって、日本代表の監督になったとしても勝てないので。本当に。だから監督だけではないんです。もっともっといろんなことをやらないと」

指導者養成の名門・ポルト大学大学院で学ぶ23歳の若者がいる。高校卒業後、英国の大学でスポーツ科学を学び、勉学のかたわらチャールトンFCの育成組織(U-10)とスクールのコーチを務めた。大学卒業後はポルト大学大学院で最先端のスポーツ科学と指導法を学びながら、ポルトガル1部・ボアビスタのU-22チームでアシスタントコーチを務めている。モウリーニョが主催する指導者養成講座で日本人初の合格者となった。

そして日々、SNSで活発に発言を続ける。

今までにないアプローチでサッカーに向き合う新世代の指導者・林舞輝氏。彼は一体何者なのか? Goal編集部ではそのある種”異質”な存在に興味を持ち、話を聞いた。欧州で学び指導する実際、日本との差、そして欧州最先端の戦術。多岐にわたったインタビューを3回に分けて掲載する。

■日本にいたら「もっと勝負にこだわれ」って言う

——最初に、海外でサッカーを学ぼうと思った理由を教えてください。

サッカーを学ぶのだったらその選択肢しかありませんでした。僕がお相撲さんになりたかったら日本にいましたが、より高いレベルでサッカーを学術的に学びたかった。となると日本にいるという選択肢はなくなってしまいました。すごく海外志向があったとか、そういうわけではないんです。

あとは、環境も大きかったですね。父が読売クラブの選手で、母も「女子サッカーって何?」っていう時代に真剣にサッカーをやっていました。サッカーをしたいがために日本に二つしかない女子サッカー部がある大学でかつ女子サッカー先進国のアメリカとの交換留学ができる大学を選んだような人です。父は読売クラブの後ドイツに渡って。父と母は1990年のW杯イタリア大会で出会っているんです。なので、生まれたときから海外のサッカーの話を聞いていたし、話していた。そういう環境だったので、自然なことだといえば自然なんですよね。

——日本での指導経験はあるんですか?

母がずっと小学生のコーチをやっていました。中2の頃にその手伝いをしたのが最初です。地元の小学校、僕も昔入っていた部活でまずは朝練のコーチだけ始めて。小学校で朝練を指導して、そのあとそのまま中学校に行くっていう生活です。高校では部活でサッカーをしていたのですが、進学校だったので受験勉強で部員がすぐやめてしまうようなチームでした。高2の時に小学校のチームから本格的にコーチを頼まれて、週3の放課後練習と土日の練習と試合を見ていました。それが原点です。クラブユースといったトップレベルでは教えていません。

——そして高校卒業後、10代で英国に渡られました。それから5年ヨーロッパで学び、指導する中で、日本との違いを感じますか?

いやあ、もう全然違いますね。とにかく自分(指導者自身)が強くないといけない。何か一つ言うにも「こうしよう、ああしよう」ではなくて、「これとこれやらなきゃ、お前ら全員このまま死ぬぞ!」くらいやらないと。自分自身のリアクションも違いますし。それは日常生活どこでもそうです。ヨーロッパでは何もかも自分から要求しないと聞いてもらえない。

あと、日本の子どもたちは基本的に指示を待っています。でも、こちらは「こうしたい、ああしたい」ってみんなやりたいことがあるんです。それを僕がまとめる感じです。その理由は、文化的な違いもあるし、教育的な違いもあるし、両方だと思います。日本の今の教育現場だと、座って先生の話を聞いていれば、先生が当ててくれて答えるような。ただ、その形が採用されているということは、日本に合うっていうことですからね。

あと、そうだ、僕日本にいたら、「もっと勝負にこだわれ」って言います。ここがすごく大きな違いかな。こちらでは何も言わなくても、めちゃくちゃ勝負にこだわるんです。尋常じゃないぐらい、コーチも子どもたちもすごく負けず嫌い。日本って「目先の勝利だけじゃなくて長期的な目線も考えましょう」みたいな考えがある。そして、それが勝てないチームの言い訳みたいになっている。「今勝てないけど、このチームは子どもたちの10年先、20年先を考えている」みたいな。そんなはずはない。今勝てなければそれは、今遅れているっていうことなんです。

■部活、ユース間でもっと簡単に「移籍」できるようになってほしい

——もう少し上の年代、日本の中学生、高校生の年代については?

「移籍」があまり盛んでないのがもったいないですね。クラブユースもそうですし部活なんて特に。例えばサッカー推薦で入学したら、部活をやめたら学校もやめなきゃいけないことがある。サッカー推薦で入学したのに部活が合わなくてどうしても辞めたいので、学校ごとやめざるを得なくなってしまった後輩がいるんですよ。選手がサッカーをやめてしまう、それが一番もったいない。

こちらは基本的に「地域」なんです。学校とは切り離されているので、移籍がどんどんできるんです。この監督と合わないと思えば別のチームに行けばいい。このチームで試合に出られないと思ったら、下のカテゴリーのチームに行けばいい。

部活やクラブユース間の移籍がもっと盛んになればいいと思います。指導者側も、変な指導をして子どもに「このコーチだと成長できない」って思われることで、危機感を持ちます。指導者のレベルアップにもなる。選手はみんな違うんだから、いろんな指導法があって、いろんなサッカーをするチームがあっていい。でも「合わなかったら終わり」はどうにかやめないと。所属するチームや指導者と合わなかった。はい、サッカーキャリア終了となってしまう環境は変えないと。本当にもったいないと思います。

■ヨーロッパを全部見習えとか言う気は全然ないんです

2018-04-21-hasebe-makoto

——逆に、日本に良い点はあると思いますか?

よく日本人の選手は、言われたことしかできないとか、自分で考えないとか言いますが、実はこれ長所でもあるんです。こちらで長くプレーしていて評価されている日本人の選手って、言われたことをすごくきっちりやる選手なんですよね。例えば長谷部誠選手(フランクフルト)や岡崎慎司選手(レスター)。

長谷部選手って、やれって言われたことを、どのポジションでもすごいクオリティでやるじゃないですか。今リベロやってるし、ボランチもサイドバックもやっていた。「今このチームに必要だから、これをやれ」と言われた時に、言われたことをきちっとやるのが、一番評価されているところ。逆にそれができない日本人選手は、どんなに才能があっても長くできないし、使ってもらえない。

言われたことしかできないけど、言われたことをきちっとやるのもすごく大事なサッカーの要素で、その部分で今評価されているのが日本人です。「言われたことしかできない」っていうのは一概に悪いことだと思いません。だから、別にヨーロッパがいいとか、全部見習えとか言う気は、全然ないんです。

戦術っていうか、組織もそうです。組織でも個としても言われたことをきちっとやるイメージ。逆に言うと、Jリーグでクリエイティブな選手っていうのは、こちらに来てもあまり成功しないんですよね。Jリーグでクリエイティブとは言ってもこちらから見れば普通という現実もある。結局、トップのトップでやってる日本人というのは、テクニックやクリエイティビティというより、言われたことをきちっと一生懸命やる岡崎選手がプレミアリーグを優勝するわけで。多分獲る側も、クリエイティビティをあまり求めていないと思うんですよ。もちろん選手にもよると思いますが。日本人選手の良いイメージは、やっぱり言われたことをきちっと誠実にきちんとやってくれるところ。戦術的にも人としても。

■ヨーロッパで評価される日本人のアドバンテージ

2018-05-14-shoya-nakajima

——今ポルトガル1部のポルティモネンセで中島翔哉がブレイクしています。活躍できている理由はどの辺にあると思いますか?

ポルトガル、僕は日本人選手が活躍しやすいと思っています。体格的にもそんなに変わらないですし、良い意味でほかのヨーロッパのチームの架け橋になると思っているんです。サッカー文化というか、個人のレベルもそんなに変わらない。ただ、一つ残念なのは、同じポルトガル語なので、ブラジル人を獲りやすいっていう側面はある。

僕Jリーグでの中島選手を見てないんですよ。オリンピック(2016年リオ五輪)の時に見たくらいですが、めちゃくちゃ良い選手でした。出場した選手の中で一番良かったと思っていたので、こちらで活躍できることに何の不思議もないです。小柄でテクニックがあって、すばしっこくて、なおかつハードワークできる。そういった選手のほうがポルトガルでは生きるので。

サッカー的なギャップがないとは言いませんが、ドイツやイングランドに比べると少ないと個人的には思います。あと、ポルトガル人は戦術が好き。めちゃくちゃ細かいので、そこも日本人選手が好かれると思います。言われたことをきちっとやるっていうのはすごく大きな日本人のアドバンテージになっているので。

それは言語の問題じゃないと思います。だって、乾貴士選手(エイバル)はスペイン語をしゃべれていませんが、プレーできていますからね。ドイツでは、クリエイティビティを押し出して壁にぶつかったけど、スペインに来て戦術眼を身に着けた印象です。「うちのチームはこうだから、こうしよう」ということを理解して、それを実践できるようになったから活躍している。理解している、してないことに言語はあんまり関係ないんだなと思いました。もちろん語学力はあるにこしたことはないですよ。乾選手は言われたことをきちっとやれる選手になった、それが活躍できている要因なのかな。

監督のサッカーをちゃんと理解して、まずは言われたことを言われた通りにきちっとやれる。それが今のところ海外で活躍できる日本人像だし、そういう選手が求められていると思います。

(第2回に続く)

インタビュー・文=Goal編集部

【プロフィール】

林 舞輝 Maiki Hayashi

1994年12月11日生まれ、23歳。イギリスの大学でスポーツ科学を専攻。在学中にチャールトンのアカデミー(U-10)とスクールでコーチ。2017年よりポルト大学スポーツ学部大学院に進学。同時にポルトガル1部ボアビスタのBチーム(U-22)のアシスタントコーチを務め、主に対戦相手の分析・対策を担当。モウリーニョが責任者・講師を務めるリスボン大学とポルトガルサッカー協会主催の指導者養成コースに合格。

Twitterアカウントは@Hayashi_BFC

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