憧れ続けた夢の舞台に立つ武藤嘉紀…レギュラー奪取に必要な克服すべき最大の弱点【サムライたちの現在地】

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いよいよ開幕を迎える欧州各国リーグ。今シーズンも、日本人選手が世界最高峰の選手たちとしのぎを削る事になる。ロシア・ワールドカップが終わった今、日本のサムライたちはどのような成長を遂げ、どのような戦いを見せてくれるのだろうか。今回『Goal』は、そんなサムライたちを特集する。第1弾は武藤嘉紀だ。

●立ち位置
バックアッパーからのスタート
●個人への期待、目標
レギュラー確保。年間10ゴール
●ポジション争いのライバル
サロモン・ロンドン(新加入のベネズエラ代表FW)

■迷える古豪を再建するベニテスという監督

イングランド北部に位置するニューカッスル・ユナイテッドは、過去4度のリーグ優勝を誇る名門クラブである。熱心で情熱的なサポーターを持ち、本拠地セント・ジェームズ・パークは5万2000人を収容。昨シーズンのホームゲームは毎試合ほぼ満席だった。完売にならなくても、常に「来場率98.5%以上」という驚異的な数字を残している。

しかし残念なことに、こうした人気の高さが成績に結びついていない。4度のリーグ優勝は1904-05、1906-07、1908-09、1926-27シーズンと、いずれも20世紀初頭のこと。1992年のプレミアリーグ開始以降は、1995-96年と1996-97年の2位が最高で、優勝には縁がない。

特に、2007年に英国でスポーツ用品のディスカウントショップ「スポーツ・ダイレクト」を経営するマイク・アシュリーがオーナーに就任してから、クラブに停滞感が漂うようになった。「北の古豪」と謳われながら、2部降格の屈辱を2度も経験。成績不振を理由に指揮官も頻繁に入れ替わり、その結果、チームパフォーマンスにも一体感がなくなった。

こうした負の風向きが変わったのは、16年3月にスペイン人のラファエル・ベニテス監督が就任してからだ。就任時はすでに降格が決定的な情勢にあり、チャンピオンズリーグ優勝経験を持つベニテス監督(リヴァプール時代の04-05シーズン)をもってしても降格危機から救えなかった。しかし、実直な性格で知られる指揮官は続投を決断。ビッグクラブでの経験も豊富な智将は規律と組織力を植え付け、降格した翌シーズンに2部で優勝に導き、わずか1年でプレミアリーグに引き上げた。

そしてプレミアリーグに復帰した昨シーズン、迷える名門を10位に導いたのだ。今オフにスペイン代表監督への就任も噂されたベニテスだが、今季もニューカッスルを率いることになったのは何よりの朗報だろう。

■得点力不足に喘いだ昨シーズン

Jonjo Shelvey Ayoze Perez Newcastle United Chelsea Premier League 13052018

さらなる上位進出を目指す今シーズン、そのベニテス監督が陣容のテコ入れを望んだのがFW陣だった。

ニューカッスルの昨季得点数は「39」。上位14クラブで下から二番目に少ない数字だ。チーム最高得点者は、8点を挙げたトップ下のスペイン人MFアジョセ・ペレス。一方でアタッカー陣は、ドワイト・ゲイルの6点、ホセルの4点といずれも鳴かず飛ばずだった。

ニューカッスルは、ショート&ロングカウンターからゴールをねらうスタイルを基本型としている。陣形をコンパクトに保ちながら、中盤付近でプレスを開始。できるだけ高い位置でボールを奪い、素早く攻撃に転じる。ただし、ポゼッション志向も持ち合わせており、相手が守備ブロックを固めてくれば、きっちりと足元につないで好機をうかがう幅の広さも持ち合わせている。

ここで攻撃の鍵を握るのが、セントラルMFとして後方部から攻撃陣を操るジョンジョ・シェルビーだ。前線へのロングパスや縦パスを駆使して攻撃のスイッチを入れ、サイドアタッカーのマット・リッチーとケネディが有機的に絡んでいく。さらに、トップ下のアジョセがトリッキーな足技と巧みなフリーランでアクセントをつける。攻撃のパターンは複数持っているものの、昨季は肝となるCF陣がラストパスを効率的にゴールに結び付けられなかった。

そこで、ベニテス監督は武藤嘉紀に目をつけた。

■武藤が活躍するベースは整っている

2018-04-29-muto

ニューカッスルのCFには以下の3要素が求められる。

①:DFラインの背後に抜け、ラストパスを呼び込むスピード
②:アジョセとのコンビネーションで崩す足元の巧さ
③:カウンター時に必要なドリブルの推進力

これらを武藤の特長と照らし合わせると、日本代表FWが活躍するベースは整っているのだ。

ただし、武藤も克服せねばならない課題を抱えている。昨季前半戦は好調を維持して7試合で3ゴールを奪い、キャリアハイペースで得点を重ねていたが、ケガもあって失速。最終的にブンデスリーガの自身最多得点となる8ゴールを挙げたものの、不満の残るシーズンとなった。

本人も語るように、決定力は最大の課題だろう。新天地では言語の問題もあるが、周囲とのコンビネーションを高める必要がある。英2部ウェスト・ブロムウィッチからベネズエラ代表FWサロモン・ロンドンが1年間の期限付き移籍で加入したこともあり、結果を残せなければ、獲得に900万ポンド(約13億円)を費やしたとしてもレギュラーでプレーするのは難しいだろう。

そんな武藤について、ベニテス監督は次のように話す。

「我々は、チームの競争力を高められる選手を探していた。武藤はクレバーで、良いスピリットの持ち主。ハードワークを行い、チャンスメイクもできる。最前線から守備もする。毎年20ゴールを決める選手ではないかもしれないが、ひょっとしたら来季に20ゴールを決めるかもね(笑)」

「素晴らしい姿勢でサッカーに接している。彼と会ってみて、賢い選手であることはわかった。サッカーに集中している選手であるとも感じた。練習にも参加させたが、非常にポジティブな印象を抱いた」

ニューカッスルの広報部長も、武藤について「いつも笑顔を絶やさないナイスガイ。同時に、知的な印象も受けた。彼の英語力は現時点ですでに良いが、まだ完璧ではない。マインツでもドイツ語をすぐに覚えたようだし、英語もすぐに習得できると思う」とし、武藤の前向きな姿勢に好印象を抱いたと明かした。武藤の学習能力と積極性をもってすれば、すぐにチームメートとも打ち解けられるだろう。

その武藤は入団発表後、就労ビザの書類手続きのため英国外に出たが、8日にチームに再合流する。11日に控えるトッテナムとのプレミアリーグ開幕戦での起用について、ベニテス監督は次のように話した。

「武藤が英国に戻ってきたら、彼の気持ちやチームメートとの相互理解などを確認したい。その後に(起用を)決めたい。私としては、チームの競争力を高める選手をメンバーに入れたいと考えているので、起用の可能性はある」

ニューカッスルはプレシーズンマッチの直近3試合を無得点で終え、極度の得点力不足に苦しんでいる。結果も、2敗1分の3戦未勝利と厳しい状況だ。それだけに、開幕戦に向け、ドイツからやって来た日本代表FWへ掛かる期待は大きい。

自身が憧れ続けた夢の舞台で、武藤は自身の価値を証明し、飛躍していけるのだろうか。

(取材・文 田嶋コウスケ)

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