日本代表は、2日(現地時間)、ロシア・ワールドカップ決勝トーナメント1回戦をベルギーと戦い、惜敗した。日本代表は今の持てる力を出し切った。しかし、結果は無情だった。元日本代表で現在は東京ユナイテッドFCの選手兼コーチを務める岩政大樹氏がこの試合で見事な働きをしたセンターバック吉田麻也にフォーカスする。
■自然体で対応できる頼もしさ
いいセンターバックには“重さ”があります。歳を重ね、チームを引っ張る立場になり、結果に責任を持つ男になれば必ず、立ち姿に“重さ”が滲み出てきます。
若い頃から才能あふれるセンターバックであることは誰しもが認める逸材でしたが、日本のゴール前の責任を背負って立つ覚悟の中で、ついに吉田麻也選手は“重さ”を感じさせるセンターバックになりました。
ロシアでの激闘の全4試合にフル出場しました。いつも、どんな時も、日本のゴール前には吉田選手がいました。
世界最高峰のプレミアリーグ・サウサンプトンで自分の立ち位置を確立してきた経験は、日本のセンターバックではこれまで誰も得られなかったもの。吉田選手が一番後ろにどっしりと構えていることは、今大会の日本の躍進に欠かせなかったと思います。
ロメル・ルカク選手(マンチェスター・ユナイテッド)をはじめとする、世界のトップストライカーとの対戦も吉田選手にとっては日常です。「いつも以上」と意気込む必要も、「いつも通り」と努める必要もありません。試合中のあらゆる事象に対して、自然体で対応してみせる姿に頼もしさを覚えない選手はいなかったでしょう。
チームを鼓舞するところと平然とした顔でやり過ごすところ、そのどちらも使い分けながら、戦況に応じて、チームがバタつかないための立ち居振る舞いを腐心しているように見えました。
そういう意味で、ベルギー戦で見せた69分のルカク選手のシュートブロックは見事でした。
左サイドから送られたクロスに対し、昌子源選手がつり出された日本のゴール前はルカク選手と吉田選手の1対1でした。クロスの瞬間「やばい!」と誰もが思ったでしょう。しかし、吉田選手は冷静にルカク選手のシュートに対しスライディングを合わせ、ブロックしてみせました。
このビッグプレーに私は「ベルギーに勝てるかもしれない」と初めて感じたのです。
■勝たなければ意味がない
攻撃において、よく「決定力」という言葉があります。私はこの言葉を守備にも使っています。守備の選手にも「決定力」がある。試合を決められる、チームを勝たせられる選手には「守備の決定力がある」と言えるのです。
このビッグプレーのあと、何人かの選手が吉田選手を称えにタッチをしにいきました。吉田選手はそれに応えながらも、決して大きな振る舞いは見せません。表情を崩すことなく、淡々とポジションにつく吉田選手の顔は「勝たなければ意味がない」と言っているようでした。
しかし、この2分後にベルギーの1点目は生まれました。そして、そこから悪夢の逆転劇となったのです。
私には不条理に感じました。吉田選手のビッグプレーは相手に渡しそうな流れを引き戻すほどのものだったと思います。少なくとも、あの一連の吉田選手のプレーぶりは、もっと別のシナリオこそがふさわしいものだったと思います。ということは、ベルギーが力でその上をいったというほかないでしょう。
(C)Getty Images▲ゴール前で何度も決定機を作ったルカクを吉田は止め続けた
吉田選手は試合後、何を思ったでしょうか。
素晴らしい戦いの後もなお、厳しいコメントを残しています。彼はまた足りなかったものを自分なりに解釈して、そして新しい日本代表に注入していくでしょう。
日本代表は今大会でベスト16という結果を得ました。そして、新しい中盤の舵取り役として柴崎岳選手が目覚ましいプレーを見せ、大迫勇也選手や酒井宏樹選手など、次代の中心を担う自覚が見える選手も出てきました。新しくなっていく日本代表はおぼろげに姿を見せています。
その中にもう一つ、長年キャプテンとして日本代表を引っ張ってきた長谷部誠選手の後継者もここにしっかりと現れてくれたように感じました。
それは、これから円熟期を迎える吉田麻也選手の新たな刺激にもなるでしょう。どこまで重さを感じさせる選手になるのでしょうか。彼の行き着く先が、日本の“歴代センターバック史上最高”になることは間違いありません。
岩政大樹(いわまさ・だいき)
1982年1月30日生まれ。山口県出身。東京学芸大を経て2004年鹿島アントラーズに加入。不動のセンターバックとして鹿島ではJ1リーグ戦3連覇を達成。10年南アフリカW杯に選出。テロ・サーサナ(タイ)、ファジアーノ岡山、17年より東京ユナイテッドFCで選手兼コーチを務める。

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