「同じチーム(セレッソ大阪)でやってる選手は特に思い入れが強いし、キヨ(清武弘嗣)君とはアジア予選もしっかりやってきた。キツイ時もいい時も一緒に味わった仲間なんで、そこの思いは僕個人もすごく強い。一緒にやっていかなくちゃいけないかなと思います」
2018年ロシアワールドカップ本大会に向け、21日から千葉県内で行われている直前合宿。24日から合流した山口蛍(C大阪)は初日の練習後、ガーナ戦のメンバーに選ばれなかった清武、杉本健勇の両セレッソ勢への思いを改めて吐露した。3人揃ってロシアの地を踏むことを熱望していた27歳のボランチは、彼らの悔しさと不完全燃焼感を胸に、自身2度目となる大舞台で持てる力の全てをぶつけるつもりだ。
山口にとって4年前の2014年ブラジル大会は「未知なる領域」に他ならなかった。2012年ロンドン五輪4強入りの原動力となり、2013年東アジア選手権(韓国)でMVPに輝いた。しかし、そんなダイナモでも、ワールドカップは想像をはるかに超えたものだった。初戦・コートジボワール戦(レシフェ)を含めて全3試合に出場したが、日本の勝利に貢献することはできなかった。ハメス・ロドリゲス(バイエルン)にいいようにやられた最終戦・コロンビア戦(クイアバ)が終わった後、本人の中には「ホントにすぐ(大会が)終わってしまった」という感覚しか残らなかったようだ。
直後に戻ったJリーグで右ひざを負傷。シーズンを棒に振ることになり、2014年9月に発足したハビエル・アギーレ監督率いる日本代表には一度も参戦することはなかった。しかし、翌2015年3月に公式戦復帰を果たし、同じタイミングで発足したヴァイッド・ハリルホジッチ監督率いる代表へ入ることに。新たなチームでは確実に存在感を高めていった。9月から始まったロシア大会アジア2次予選では長谷部誠(フランクフルト)とボランチを形成。「デュエルの申し子」として重要な役割を担うことになる。そして2016年1月にはドイツ・ブンデスリーガ1部・ハノーファーへ移籍。ハリル監督も「蛍が高いレベルへ踏み出したことを嬉しく思う」と大きな期待を隠さなかった。
ところが、この2か月後の2016年3月に行われた2次予選ラストマッチ・シリア戦(埼玉)で、山口は鼻骨骨折・左眼窩(がんか)底骨折の重傷を負い、ドイツに戻ることも叶わなくなった。「最初は寝てるだけだし、片目もずっと閉じてるし、手術してガンガンに腫れてるから開かない状態だったので、すごくしんどかった」と述懐する。その間にハノーファーは2部降格を強いられ、盟友の清武と酒井宏樹(マルセイユ)も外に出ることになった。山口も結局、古巣・セレッソへの復帰を決断。ただ、わずか半年での出戻りには批判も多く、ハリル監督からも「蛍は代表のレギュラーでは使えない」とバッサリ切り捨てられた。当の本人も「セレッソをJ1に上げるまでは代表には呼ばれない覚悟を持って戦う」と悲壮な覚悟を口にしたほどだ。
そういう中でもハリル監督は山口を招集。だが、2016年9月のUAE戦(埼玉)でのスタメン起用を見送った。この采配が仇となり、日本は重要な最終予選初戦を落とすことになる。
しかし、ここからチームを支えたのが献身的なダイナモだった。続くタイ戦(バンコク)で輝きを取り戻し、勝利のけん引役になると、続く10月のイラク戦(埼玉)では崖っぷち立たされた後半ロスタイムに決勝点をゲット。勝ち点3をチームにもたらした。そこからは最終予選全試合に出場。ロシア切符をもぎ取った2017年8月のオーストラリア戦(埼玉)では井手口陽介(クルトゥラス・レオネサ)とインサイドハーフに入り、鋭いボール奪取を繰り返し、球際の強さを体現してみせた。
そうやって紆余曲折の4年間を過ごし、ここまで来たのだから、代表入りしたばかりの若手だった前回とは立ち位置が全く違う。
「今回は予選も戦ったんで、そういった意味では責任感を持ってやらなくちゃいけない。前回は遠慮みたいなところも少なからずあったと思うけど、今はもう若くないし、もっとしっかりしなくちゃいけないと思います」と本人も自覚を持って、代表に参戦している。
実際、ボランチ陣を見ると、長谷部筆頭に、大島僚太(川崎)、井手口、三竿健斗(鹿島)、トップ下もこなせる柴崎岳(ヘタフェ)という顔ぶれで、山口は長谷部に次ぐ年長者となる。ブラジルでともに戦った32歳のベテラン・青山敏弘(広島)が右ひざ負傷で離脱というアクシデントに見舞われたこともあり、より中盤をリードしていく役割が託される。
山口はその青山と4年前のコロンビア戦で交代しており、ハメス・ロドリゲス(バイエルン)の華麗な攻撃を封じられなかった苦い過去がある。青山は試合後、人目をはばからずに号泣したが、山口は山口なりに悔しさを脳裏に焼き付けてここまでやってきた。
「あの時は日本も1点を返して『ちょっとイケるじゃないか』みたいな雰囲気がある中、ハメスが出てきて、ああいうプレーをされた。ホントにみんな悔しい思いはしたと思います。僕も前回のワールドカップは悔しい部分は沢山あったんで、それを思いながら予選もやってたのは間違いない。今回もコロンビアと対戦しますけど、ハメスは1人で止められない。やっぱり組織としてみんなでどううまくやるかっていうのが一番ですね」と6月19日の初戦・コロンビア戦(サランスク)で再度対峙するハメス封じを念頭に入れつつ、ここからの3週間で自分自身もチームもベストパフォーマンスを出せるように仕向けていくことになる。
もともとは自分から発信することが苦手なタイプで、ハリル監督からは「コミュニケーションが足りない」と苦言を呈されてきた山口だが、今季セレッソでキャプテンに就任したこともプラスに働き、代表でも堂々とした立ち振る舞いを見せるようになってきた。清武や杉本、他のメンバーの存在や声援を大きな力にして、山口蛍には日本を勝利に導く大きな仕事が期待されるところだ。
文=元川悦子
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