ついにベールを脱いだ西野ジャパン。“ビッグ3”のそろい踏みやサプライズ選出、海外で活躍する若手選手の相次ぐ落選などが話題になっているが、果たしてガーナ戦に向けて27選手が選ばれた今回の記者会見からは、いかなるものが読み取れるのだろうか。
5月14日にFIFAへの35選手の予備登録を終え、本大会に臨む23人の最終選考に向けて、西野朗監督率いる“新生”日本代表が動き出した。
だが、日本中の注目を集めた記者会見で最も印象に残ったのは、西野監督が渋い表情で煮え切らないコメントを漏らす姿だった。
本来ならばメンバーを固め、本大会に向けたシミュレーションやテストを急ピッチで進めなければならない時期。しかし、4月12日の就任から1カ月強で行われた会見で明かされたのは、「当初のプランではもっと早い段階で(メンバーを)固めて、ガーナ戦もテストをしたいと思っていた」という苦しい胸中。しかも「コロンビア戦に向けては、なかなか絵が描けない」と吐露している。
■負傷明けの香川は「ギリギリまで待つ」
では、西野ジャパンは本大会において、どんなメンバーで、どんな戦い方をするのか。
西野監督は「国内外で選手たちのコンディションがそろわない」と現状の悩みを説明したが、その状況は従来同様。今さらそこで悩んでいるようでは、ロシアに向けたスムーズな前進は「期待薄」と言わざるを得ない。コロンビア戦に向けて「勝ちに行くためのベストメンバーを選びたい」としたものの、通常のチームづくりであれば完了に近いはずの“選手選考”というステップに追われ、仕上げの段階に入れていないのが現状と言える。
実際、選手選考において見極めの難しい選手がいるのは事実ではある。「代えの効かない選手」と評した香川真司(ドルトムント)については、「3カ月間、トップフォームでプレーできていない。デリケートに考えなければいけない。彼の状態を期待しながら、このキャンプで最終的に確認したい」とギリギリまで待つ構え。一方、負傷を抱えている岡崎慎司(レスター)には「運動量が高いだけでなく、2つ、3つ先のプレーに対する貢献度、献身度は絶対に欠かせない」と高評価を与え、「間違いなく、この1カ月で良い状態に持っていける」と期待を寄せている。香川と岡崎への表現を比べると、香川は現状では当落線上にあると見るのが妥当だろう。
一方、「何としてもリストに入れたかった」という今野泰幸(ガンバ大阪)、「今朝までこのリストに入っていた」と明かした小林悠(川崎フロンターレ)は負傷のために招集できなかった。久保裕也(ヘント)は「戦力として考えているが、27日までクラブでプレーオフのシビアな戦いがある」とガーナ戦への招集を見送っている。ロシアへ向かう23人は「基本的にはこの27人から」としたものの、久保や小林は「状況次第で追加招集も考えています」と話すなど、メンバーを見極められていない様子を伺わせた。
ガーナ戦、その翌日に予定されているという練習試合を踏まえて、31日の本大会メンバー発表を迎える。どんなメンバーで、どう戦うのか。西野監督の悩みはまだまだ続きそうだ。
■メンバー構成から長谷部のセンターバック起用を予想
続いて気になるのは、西野監督はどんなサッカーを採用しようとしているのか。そのヒントが、選出メンバーのポジション構成と会見中の言葉から垣間見えてくる。
「私がリストを作る段階で、ポジションを示すDF、MF、FWというアルファベットをボードに載せたことは一度もない。このリストを見るとFWは4人しかいないのかと思われかねないので、できればポジションの表記はGK以外は外してほしいくらい」
指揮官がメンバー選考に際して挙げたキーワードは、10年以上前に日本代表を率いたイビチャ・オシム監督が愛用した「ポリバレント」というフレーズ。つまり選手には複数ポジションをこなすマルチロールを求めた形だ。FWがトップ下やサイドでプレーすることがあれば、MFが最前線に入ることもある。ボランチにセンターバックとしてのプレーを求めるかもしれない。3試合という短期勝負において限られた人数で相手に応じた戦い方を選択するためには、選手個々に戦術的な柔軟性が求められるのがワールドカップという舞台でもある。
注目したのは最終ラインとボランチに入るであろう選手の人数とタイプだ。いわゆるセンターバックとして考えられるのが、槙野智章(浦和レッズ)、吉田麻也(サウサンプトン)、昌子源(鹿島アントラーズ)、植田直通(同)。ここに3バックでのプレー経験豊富な“ポリバレント”の遠藤航(浦和)、さらに所属のフランクフルトで3バックの中央に構える長谷部誠が加わる。
センターバックを多めに招集しつつ、他にボランチとしてプレーできる選手が多数そろう中で青山敏弘(サンフレッチェ広島)をサプライズ招集していることを考えると、長谷部を従来のボランチではなくフランクフルト同様のポジション=3バックの中央=での起用を考えているという監督の意向が見えてくる。長谷部に「キャプテンをやってもらいたい」と明かしていることからも、彼を中心にしたチームづくりになることは濃厚。オプションでの採用も含めて、西野ジャパンが3バックを導入する可能性は極めて高そうだ。
5月21日から海外組中心でトレーニングをスタートさせるが、全員がそろうのは25日になる見込み。6月19日のコロンビア戦までに残された期間は、わずか3週間程度しかない。西野監督には選手ごとに大きく異なるコンディションを合わせながら、23選手の見極めを進めつつ、本大会に向けた戦術を一気に詰めていく作業が求められる。大きく出遅れているチームづくりをしっかりと軌道に乗せられるのか。まずは21日からのトレーニングに注目だ。
文=青山知雄
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