「喜ばしく、誇らしかった。すべてにありがとう、トーレス」【アトレティコ記者・特別寄稿】

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アトレティコを愛し、アトレティコに愛された男・フェルナンド・トレースが今季限りでクラブを去る。絶対的なアイドルとの二度目の別れは、スペインでどのように受け止められているのか? ファンたちの心情を代弁したとすら言える、愛情溢れる現地記者の寄稿記事をお届けする。

いつか別れが訪れるとしても、多くの人はその未来を予測できない。

予測できる者がいるとすれば、それは決断を下す本人だけだ。

今回、アトレティコ・マドリーに起こった例を見てもそうだろう。当事者のフェルナンド・トーレスは8日に行われたトークイベントで「今季限りでクラブを去る」と発表した。多くのファンにとって寝耳に水であり、まさしく突然の出来事だった。

アトレティコにとって、トーレスは特別な選手だ。クラブの生え抜きであり、絶対的なアイドルである。「なぜ?」「イヤだ!」「そんなこと言わないで」「ああ、フェルナンド、キミの家はここじゃないか」……。未来を予測できなかった、あるいはそんな未来を考えたくもなかった人たちは悲鳴にも似た声を挙げた。

スペイン紙『マルカ』でアトレティコセクションチーフを務めるアルベルト・ロメロ・バルベーロ記者もまた、その一人だ。トーレスが少年だった頃から特別な時間を積み上げてきた彼にとって、今回の出来事は文字通り「突然」やってきた。だからこそ、思うがままに、感情が溢れるままに、そして、愛のままに、思いの丈を吐き出さずにはいられなかったのだろう。

彼が、アトレティコを愛する人々が、トーレスに対して抱く特別な感情がどんなものなのか。遠く離れた日本にいても、この1492文字から感じ取ることができるのではないだろうか。(文=Goal編集部)

Fernando Torres

■親愛なるフェルナンドへ

君がアディオスを告げたイベントに立ち会って、すぐさま対応する記事を書いた。その後、君と抱擁を交わし、君が冗談を言い(「君たちは、木曜にはもう忘れているだろうね」)、君と一緒に写真を撮った(君は笑っていたが、私はそうできなかった)……。それから1時間が経ち、編集局でパソコンを前にして座っている。実に愚かな顔をして。

何となれば、ときには自分のプロフェッショナリズムをくずかごに捨て去って、腹の底から書くべきと意を決することがあるからだ。つまり、今回は「何が起きたのか」を語る代わりに、「自分の身に起きたのか」を語らなければならない。自分の身に起きたこと、つまりは悲しく、とても悲しいということを。

一人の記者の見解を求めて、この行まで読んでしまった人たちには容赦願いたい。

とどのつまり、これは一人の友人に宛てた書簡なのである。何年にもわたって、君にそれを送ったこと、覚えているかい? しかし、もうそんなことはしていない。それというのも、君が帰ってきてくれたからだ。近くにいてくれたからだ。そうする必要がなかったからだ。


私は考えるために、時折手を止める。キーボードがここにあり、待っている。君が思うに、君はここから出て行ってしまう。そのことについて考えさせられている。

いやしかし、もう前のパラグラフは忘れてほしい。君が出て行ったことなんて、なかった。外を歩いていた時期があったかもしれないが、私たちはここで君の存在を感じていたんだ。いつどんなときにも的確な君が言っていたことだよ。人間は多くのものを抱えることができるが、家庭というものは一つしか存在しない、と。私たちには思い出がある。私たちは、その家庭をそばかすだらけの若者だった君が支えていたことを記憶している(※1)。

人は過ぎゆくもの。そう言ったのも君だが、それに同意することはできない。それは違うし、何度でも、何度であっても違うと言わせてもらう。君はここを通り過ぎてなんかいないし、これから通り過ぎることだってない。君が戻ってきたとき、4万5000もの人々が君を出迎えた(※2)。次に帰ってくるときの出迎えで、君はまた思い知ることになるんだ。

あまりにも突然のことだし、まだシーズンを戦わなくてはいけない。だから、君の「最後のシーズンだ」という言葉が、クラブの代表者がいない企業広告のイベントで響き渡ったことについて、口を挟むようなことはしない。いずれにせよ、今回のクラブのリアクションは素晴らしく、ほぼ間断なく君の退団セレモニーを行うことを発表したし、君はその振る舞いに感謝をした。君(とその関係者)とシメオネ(とその関係者)の関係について、詳細に扱うことも止めておこう。

今日はそうした日じゃない。そう、今日はもう一度、君にグラシアス(ありがとう)を告げる日と決まっているんだ。足りない分だけのそれを告げる日と。今まで長い年月だったし、これからだって長い年月になるだろう。18歳の誕生日を迎えた君にインタビューしたことを思い出す。カルデロンのそば、カンテスピーノで食事をしながら。あれから、もう15年以上が経った。君から与えてもらったもの、もう分かってくれるだろう。


結局のところ、この書簡体には悲しみに暮れる一記者の痛ましさが隠されている。第一に実際にそうした状態にあって、第二にそれをカムフラージュすることなどできないからだ

明後日、私たちはリスボンへと向かう(ヨーロッパリーグ準々決勝セカンドレグ、スポルティングCP戦)。5月16日にリヨン(ヨーロッパリーグ決勝の舞台)にいるためだ。アトレティコは優勝を果たして、主将のガビは君がトロフィーを空高く掲げることを許してくれる。そうなるに決まっている。物語は幸せな結末を迎えるんだ……。しかし、違うよ、フェルナンド。君はここから出て行くんじゃない。今度は、君は私たちを騙せない。

喜ばしく、誇らしかった。すべてにありがとう、トーレス。

文=アルベルト・ロメロ・バルベーロ(マルカ紙)
訳=江間慎一郎 編集/Goal編集部

Torres GFX

※1 トーレスは16歳でアトレティコのトップチームデビューを果たしたが、当時のチームは2部に所属するなど辛い日々を過ごしていた。そうした状況で頭角を現してチームを引っ張ったトーレスは、アトレティコファンにとって希望とも呼べる存在だった

※2 トーレスは2007年にアトレティコを一度退団して、リヴァプールへ移籍。さらにチェルシーとミランでプレーした後、2015年にアトレティコへ復帰した。復帰セレモニーでは、アトレティコの前本拠地ビセンテ・カルデロンに4万5000人ものファンが集結した

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