かつてはエリート街道を歩んでいた。今は横道にそれた。それでもフットボールを楽しむ喜びは変わっていない。
ユリアン・グリーンは2013年、バイエルン・ミュンヘンの下部組織からトップチームへの昇格を勝ち取った。しかし、スター軍団の壁は厚く、結局そこで確たる地位を築くことはできず。その後、ハンブルガーSVとシュトゥットガルトでの経験を経て、現在はブンデスリーガ2部のグロイター・フュルトに籍を置いている。
これまでのキャリアを振り返れば、2部での戦いはステップダウンだ。しかし、グリーンは下部リーグであっても継続してプレーする重要性について語る。また、スター軍団バイエルンの下部組織出身選手から見て、「なぜユースからブレイクを果たす選手がなかなか現れないか」という疑問にも『Goal』の独占インタビューで答えた。
■「今でもバイエルンを応援している」

――あなたは現在、プロとしてプレーするようになってから初めて、長い間レギュラーとして活躍できていますね。あなたのフットボール人生の中で、今が最高の時間でしょうか?
僕にとってグロイター・フュルトはとても居心地がいいよ。ここではコンスタントに試合に出られるし、それが自分にとってどんなに大切なことかを噛みしめているところだ。おかげで、どんどん調子が上がっている。
――2017-18シーズンはシュトゥットガルトからレンタルでグロイター・フュルトへ来ていましたが、その後、2018年6月に完全移籍が決まりました。これは難しい決断でしたか?
いや、そんなに悩むことはなかったね。僕はフュルトの街やクラブのことをよくわかっていたし、最初の日から気持ちよくチームで過ごすことができたよ。
――以前あなたは約10年間、バイエルンでプレーしていましたが、今も相変わらずバイエルンのファンですか?
僕はこれまでのフットボール人生の大部分をバイエルンで過ごしてきたし、たくさんの選手たちと一緒にピッチに立ってきた。だから、今でもまだバイエルンの試合を見るのが好きだし、試合を見ればもちろんバイエルンを応援しているよ。
■「何よりもフットボールを優先させてきた」
Getty Images――あなたは14歳の時にバイエルンへ移籍したのですから、おそらくいわゆる “普通の” ティーンエージャーのように暮らすことは無理だったでしょね?
確かに諦めなければならないことはたくさんあったけれど、それでも僕は喜んでそうしたんだ。フットボールはすべてにおいて優先させるほど楽しかったんだよ。プロとしてキャリアを積むことが自分にとって正しい道じゃないと思ったことは1秒だってなかったね。
――ユース時代にはどのくらいプロの選手たちと交流があったんですか?
みんなお互いに知り合い同士だったよ。当時はユースの練習場とプロチームの練習場が隣り合わせだったから、たまたま顔を合わせることがよくあったんだ。今は町の北の方に新しい育成センターができたから、いくらか状況が変わってると思うけどね。
――育成部門で過ごした時期のチームメイトで、将来的に大きなブレイクを果たすだろうと期待されていたのにそうはならなかった選手、あるいはまだそうなっていない選手というのはいますか?
セバスティアン・ムロウツァだね。彼はAユースで僕たちのキャプテンだったんだ。けれど、今は3部リーグのSVヴェーエン・ヴィースバーデンでプレーしている。彼はこれまで何度もケガに見舞われて苦労してきた。もしケガさえなかったら、今頃ずっと上のレベルでプレーしていたのは間違いないと思うね。
――2010年のダヴィド・アラバ以来、バイエルンのユースからトップチームへのブレイクを果たした選手は一人もいません。それはなぜだと思いますか?
バイエルンを離れた僕のような立場から判断を下すのは難しい問題だね。けれど、とにかく、バイエルンの選手にどんなクオリティの持ち主がそろっているかを考える必要があるだろう。それを考えれば、ユースからトップチームへの飛躍を成し遂げるのがそれほど簡単なことじゃないのがわかるはずだ。
■「セカンドチームは有意義な存在だ」
――あなたは2年間バイエルンのセカンドチームに籍を置いて、レギオナルリーガ(ドイツ4部)でプレーしていましたね。しかし、4部はトップチームのレベルとはかけ離れていますし、いくつかのクラブではセカンドチームの設置にどんな意味があるのか検討されています。実際、解散に踏み切ったクラブもたくさんあるほどです。こういう状況についてあなたはどう思いますか?
僕はセカンドチームの存在には大きな意味があると思うし、これからも維持していくべきだと思っているよ。セカンドチームは、ユースとトップチームをつなぐものとして、完璧な架け橋になっているんだ。僕の場合、セカンドチームで過ごした時間のおかげで先へ進むことができたんだよ。けれど、セカンドチームが若手の成長に役立つのかどうか、クラブが若手の育成にそれだけの資金を投入したいと思うかどうか、それは結局、それぞれのクラブが自分で決めるしかないことだよ。
――あなたがプロになって最初に出会った監督はジョゼップ・グアルディオラでしたね。彼のことはどんなふうに記憶に残っていますか?
グアルディオラは並外れた監督で、非常に戦術に長けていた。僕は人間的にも彼とはウマが合っていたんだ。それに、彼は見る見るドイツ語がうまくなっていったのを覚えているよ。
――その後、あなたはレンタルでハンブルガーSVへ行きましたが、あまりぱっとしないシーズンを送ることになりました。
気分が高揚したり落ちこんだり、目まぐるしい経験だったね。夏(2014年)にはブラジルW杯のアメリカ代表メンバーに選出されて、1ゴールを挙げたんだ。あれは、僕のこれまでのキャリアの中で最高に素晴らしい経験だったよ。その後ハンブルクに帰ってからは、残念ながらあまりうまくいかなかった。だけど、ハンブルガーSVで僕は人間として大きく成長することができたんだ。僕はあそこで、ネガティブな経験とのつき合い方を学んだんだよ。あの時期があったおかげで、僕はそれまでより強くなれたんだ。
Getty――結局、バイエルンでブレイクを果たすことはできませんでしたね。
僕にとって一番うまくいったのは、カルロ・アンチェロッティの下で最初のシーズンを送った時だった。僕はプロチームで確かな足がかりをつかんだし、DFBポカールの最初の2ラウンドに出場して、おまけに1ゴールを挙げることもできたんだ。あの時の僕は、これからはもっと試合に出られるだろうと期待していた。残念ながらそうはならなかったから、バイエルンに別れを告げることが僕に残された唯一の選択肢になったんだ。結局はそれでよかったんだと思うよ。
――数年来、あなたの故郷アメリカはフットボール界の “眠れる巨人” と目されていますが、結局ロシアW杯では予選を突破することができませんでした。アメリカのフットボールの成長の見込みはどうですか?
アメリカではフットボールがどんどん盛んになってきてはいるけれど、まだNHL(アイスホッケーのナショナルリーグ)やNBA(バスケットボールのナショナルリーグ)やNFL(アメリカンフットボールのナショナルリーグ)のレベルにまでは達していないんだ。けれど、これから数年の間に変化が起こると確信しているよ。今は、クリスチャン・プリシッチやウェストン・マッケニーやジョシュ・サージェントのような才能あるアメリカ人選手が何人も、若いうちにヨーロッパに渡って、ヨーロッパで経験を積んでいる。この調子でいけばいいと思うよ。
■「バイエルンはアメリカでちょっと後れを取っている」

――バイエルンは2016年にニューヨークに事務所を開設しました。このことで、アメリカでのバイエルン人気に効果は現れていますか?
もちろんさ。事務所が作られてから、アメリカでのバイエルンの知名度は飛躍的に上がったよ。確かにレアル・マドリーやバルセロナやマンチェスター・ユナイテッドにはまだちょっと後れを取っているけれど、間違いなく挽回しつつあるね。
――アメリカで昔から盛んなスポーツの中では、あなたはどんなものに興味がありますか?
アイスホッケーだね! 僕は11歳になるまで、その頃暮らしていたミースバッハでクラブにも入ってプレーしていたんだよ。それからどちらかに決めなければならなくなって、フットボールを選んだんだけどね。NHLでは、タンパベイ・ライトニングが僕のお気に入りのクラブだ。できるだけたくさんの試合を見たいんだけど、当然時差の問題があってなかなかうまくいかないんだよ。
――まだ他にも自分でやっているスポーツがありますか?
スキーもやるし、スノーボードもやるよ。僕にとっては大きな楽しみだ。残念ながら去年の冬はあまり時間がなかったけどね。現役じゃなくなったら、またもっとたくさん楽しむつもりだよ。
――あなたのお父さんはフロリダに住んでいますね。お父さんのところへはよく行くんですか?
以前は、夏の休暇になるといつも長い間父のところで過ごしていたけれど、今はもう時間的に無理なんだ。それでも年に一度はフロリダに行くことにしている。この前代表チームに合流した時には父を訪ねることができたよ。タンパでコロンビア戦があったからね。あの時の試合は本当ならホーム戦のはずだったんだけれど、4万人の観客のうち2万5000人がコロンビア人だったんだから、ホーム戦としては微妙だったね。
――あなたはフロリダのどんなところが気に入っていますか?
暖かい季節に海岸で過ごすのが大好きだね。それに、釣りも好きだよ。桟橋で釣ることもあれば、ボートで沖へ出ることもあるんだ。小さな音で音楽を聞きながら釣りをしていると、とてもリラックスできるんだ。そういう時の静けさや自然の中にいる感じ、それが好きなんだ。それに、魚が針にかかって、それを外そうとしている時にはアドレナリンが出ているのが感じられて、その感じも好きだね。
インタビュー・文=ニノ・ドゥイット/Nino Duit
構成=Goal編集部
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