2019-01-20 2002 PLACENTE Diego

元アルゼンチン代表SBプラセンテが語る“W杯制覇に必要なこと”とは?/独占インタビュー

かつてリーベル・プレート、レヴァークーゼン、セルタ、ボルドーなどでプレーしたディエゴ・プラセンテ。アルゼンチン代表としても2002年の日韓ワールドカップに出場するなど、左サイドバックとして様々な大舞台を経験してきた。

そんなプラセンテも2013年に現役引退。それから6年が経過したが、彼はドイツやスペイン、フランスでのプレー経験を通して、これからはアルゼンチンのサッカー界に貢献したいという希望を胸に秘めている。

そしてリオネル・メッシという世界一の名手を擁しながら、なぜアルゼンチン代表はワールドカップで頂点に立つことができなかったのか、複数の欧州トップリーグでプレーしたプラセンテなりに感じるところがあるようだ。プラセンテが思う、アルゼンチンが再び“世界一”になるために必要なこととは? 『Goal』の独占インタビューで本人が語った。

以下に続く

■当時のボルドーは「本当に強かった」

2019-01-20 2008 PLACENTE DiegoGetty Images

――あなたはアルゼンチンの他にレヴァークーゼン(ドイツ)、セルタ(スペイン)、ボルドー(フランス)などヨーロッパでは複数のリーグでプレーしましたが、今回はボルドーについて聞かせてください。

ああ、私にとって、ヨーロッパでプレーしたチームはどこも素晴らしい環境だったけど、ボルドーは本当に印象深かった。当時のチームは本当に強かったし、ボルドーの街も美しく、人々も優しかったからね。

――あなたがボルドーでリーグ優勝を経験(08-09シーズン)してから丸10年が経過します。その時の思い出はどういったものでしょう。

負傷で長期離脱を経験したり、必ずしもすべてが良い思い出ではないけれど、ボルドーの一員でいられたことは本当に幸運だった。リーグ・アンの中でも強力なチームで、素晴らしい選手がたくさんいたよ。リーグでチャンピオンになるのは簡単なことではない。それでも、当時フランス国内で絶対的な強さを見せていたリヨンに勝ったんだ。リーグ・アン7連覇中だったリヨンの8連覇を阻止した。それがいかに偉大なミッションだったか、みんなに分かってもらいたいね。

――ボルドー時代の同僚で最も印象に残っているのはどなたでしょうか。(ヨアン)グルキュフですか?

そうだね。あのシーズン、とてつもない輝きを放っていたのは彼だったね。素晴らしいシーズンで、(フェルナンド)カベナギや(マルアーヌ)シャマフ、フェルナンド(メネガッゾ)の活躍も印象深いね。だけど活躍ぶりという点で、突出していたのがグルキュフだったことは間違いない。

――最も重要な試合は覚えていますか?

これ、というものはないかな……。いや、なかったと言うよりは“常に重要な試合が続いた”と言ったほうが語弊がないかもね。長いシーズンを送るうえで、フラストレーションを乗り越える力や、大事な試合を勝ち切る力が必要だと思うけど、あの時のボルドーには安定して長い間それを発揮できる力があったんだ。良い状態を保ちながら、1試合ずつ積み重ねていった結果だと思う。もちろん、それを実現した(ローラン)ブラン監督の手腕も称賛されるべきだ。彼がいかに優れた指導者であるかは(後に指導した)フランス代表やパリ・サンジェルマンでも証明していると思うけど。

――08-09シーズンに優勝した後、ボルドーは不振に陥り、それ以降はUEFAチャンピオンズリーグに出られるような順位でのフィニッシュがありません。その理由は何だと思いますか?

あのシーズンは間違いなく最高レベルにあったけど、翌シーズンからは主力流出や過密日程の影響もあって、バイオリズムが一気に下がってしまった印象もあるね。なぜか、自分たちが作り上げてきたものをキープすることができなくなったんだ。やっぱりクオリティを保つことの難しさがあると思うよ。チーム全体が常にそれを維持することは至難の業だからね。リーグの4分の3ほど好調で勝つことができればいいんだけど、均衡した戦力差のリーグでは、それを実現することは簡単じゃないんだ。

■ペケルマンの指導法やスタイルは模範的

Jose PekermanGetty

――2018年のロシア・ワールドカップでは、ラウンド16で敗れたアルゼンチン代表ですが、現在のアルゼンチンサッカー界をどう見ていますか? 2014年にブラジル・ワールドカップで準優勝しましたが、リオネル・メッシも30代に入り、アルゼンチンが3度目のワールドカップを掲げるのは遠い未来になるんじゃないかという見方もあります。

どの代表チームにも、良い時と悪い時があるのは必然だと思うよ。アルゼンチン代表は、悪かった時期が過ぎて、これからポジティブな変化が多く見られるようになると思う。長期的な育成プログラムが、フル代表とアンダー世代の代表だけでなく、アルゼンチン全土に、地方にも浸透してきていると見ているよ。子どもたちのサッカーに関してもレギュレーションに手を加えるべき時だし、ジュニアやユースのサッカーを良くするために、各クラブがインフラ整備を手伝っている。裾野が広がっているという意味でも、各年代のアルゼンチン代表には追い風が吹いていると思う。

――あなたも指導を受けた、ホセ・ペケルマン(2004~2006年のアルゼンチン代表監督)の精神がAFA(アルゼンチンサッカー協会)に望まれていると思いますか?

ホセのやり方の良い面、ポジティブな面をすべて取り入れるべきだと思う。彼はいまやコロンビア代表を率いている時間(2012~2018年)のほうが長くなってしまったが、やはりその指導法やスタイルは模範的だからね。まずはトレーニングにおいて、ピッチの中でも外でも。競技を超えた価値を注入し、定着させるためにホセの哲学を取り入れるべきだ。

――ペケルマンと言えば、1997年のU-20ワールドカップ優勝チームを形成した人物で、あなたもその一人でした。当時のチームメイトとの関係はどうですか?

いまだに仲良くしている大切な友人ばかりだよ。(エステバン)カンビアッソや(ワルテル)サムエル、(パブロ)アイマールとかね。サッカーへの考え方に関しても、みんな理想や共通点がとても多い。同世代の仲間とはずっと一緒だったから、同じ空間にいても気楽だし、みんなが何を考えているかよく分かる。また何かしら同じ目的に向かって働く機会があったら最高だね。

■アルゼンチンのサッカー界は情けない事態と向き合うべき

Boca Juniors River Plate Bus AttackGetty/Goal

――リーベル・プレートでともにプレーしたマルセロ・ガジャルドは、今や指揮官としてリーベルを南米王者に導くほどの手腕を見せています。彼が指導者としても成功すると昔から予測していましたか?

リーベルで一緒にプレーして以来、私はガジャルドに驚きっぱなしだよ。確か、私が20~21歳の頃だったと思う。彼はプレーに関してとてつもない個性を持っていて、チーム全体を引っ張っていくだけの力や、カリスマ性があった。だから彼が現在リーベルを率いてやっていることに驚きはないよ。彼は選手としてボールを扱うのが驚異的に上手だったけど、フットボールへの真摯な姿勢も見せていたし、みんなをリードしていく姿は当時と何も変わらないのかもしれない。運動不足で少々太ってしまった外見を除けばね(笑)。

――W杯終了後、ガジャルドがアルゼンチン代表監督のポストを打診されましたが、それを断ったと伝えられています。その理由は何だと思いますか?

さあね、それは本人にしか分からないよ。だけど今はリーベル・プレートが好調だし、実際にコパ・リベルタドーレスのようなビッグタイトルを手にするなど、チームとしても最高の時だ。彼には指導者としてまだまだ未来があるし、今後、代表監督としても、国外チームの指揮官としても大きな可能性があると思う。

――その一方、コロンビア代表監督を退任したペケルマンが古巣ボカ・ジュニアーズからのオファーを断ったことは、どう思いますか?

ホセはコロンビア代表を長く率いてきた。辞めてから間もないし、もう少し休養が必要だと思ったんじゃないかな。ただ、彼ほどの手腕があれば、フットボール界が放っておくはずはない。しばらくしたら、現場に戻ることになるだろうね。

――昨年11月、コパ・リベルタ決勝の第2戦で、ボカのバスが襲撃されて試合が延期され、スペインで代替開催されることになりました。あの悲劇をどう思いましたか?

とても悲しかったとしか言いようがない。いくらライバルチームだとしても、ボカの選手たちが危険な目に遭うなんてあまりにひどい話だし、リーベルの運営能力も失格のらく印が押される事態になった。まさにアルゼンチンのサッカー界は多くのものを失ったと思う。

――大会を運営する力がないと批判されましたね。

それはもう、批判されて当然だよ。みんなが盛り上げるべき素晴らしいコンペティションでもあるし、この大会に参加する南米各国に対してのリスペクトも欠いたと思う。せっかくの大一番が、完全にネガティブな方向へ、逆効果に転じてしまったんだ。アルゼンチンのサッカー界はこの情けない事態と向き合うべきだと思うね。責められて然るべき声を受け入れ、安全かつ公正な試合をする文化に変わっていくべきだと思う。いや、変えていかないといけない。こんなこと、許されるべきことではないからね。

■代表が強くなるためには長期的な計画が必要

Messi Mbappé Francia ArgentinaGetty Images

――アルゼンチン代表の話をもう少し詳しく聞かせてください。アルゼンチンはメッシや(セルヒオ)アグエロ、(パウロ)ディバラといった世界的な名手を輩出しています。それなのに最近ビッグタイトルから遠ざかっているのは、なぜだと思いますか?

素晴らしい選手たちがそろっていたとしても、ワールドカップで決勝までたどり着くのは非常に難しいことだと思う。2014年に彼らはそれをやってのけた。ただ、ちょっとだけ幸運が足りなかった、ということじゃないかな。

――ではズバリ、アルゼンチンが再びワールドカップで優勝するためには、何が必要になるでしょうか?

他の代表チームがやっているように、長期的な計画が必要だと思う。私がレヴァークーゼンに加わった時(2001~05年)は、ドイツ代表がユーロ2000でどん底を味わったばかり(グループリーグ1分け2敗で早期敗退)だった。だが自国開催となった2006年のドイツ・ワールドカップに向けて育成年代の強化を始め様々な面で改革を進め、それが結果に結びつくようになった。実際、2006年以降は安定してタイトル争いを展開する代表チームへと成長していったよね? 必ず優勝できるとは限らないかもしれないが、タイトルに近づくことはできるはずだ。

――あなたはアルゼンチンの他に、ドイツ、スペイン、フランス、ウルグアイなどでプレーしました。他国の強豪と、アルゼンチンではフットボールの何が違うのでしょうか。各所属クラブで感じたことはありますか?

まず、ヨーロッパはサッカーのインフラが整っている点が大きいかな。だから南米よりもチーム全体のバランスが保たれていたり、組織的にダイナミックなサッカーをする傾向がある。国によってはフィジカルの強さを生かして、パワープレーで相手ゴールをこじ開けたりするよね。その一方で南米のサッカーは組織的に未熟な面があったり、気候的にも良好な環境ではない場合がある。フットボールそのものについては、個人の力に頼ったり、ドリブルで相手を崩そうとする傾向が強いかな。ドリブルの文化はヨーロッパより南米のほうが根付いていると思う。

――あなたがプレーした国の中で、スペイン、ドイツ、フランスはここ3大会のワールドカップで優勝していますね。

そうなんだよ……不思議だよね。在籍した順番こそ違うけど、スペイン、ドイツ、フランスはいずれもその後ワールドカップを掲げた。いずれの代表チームも、優れた選手たちを擁した上で、自分たちのスタイルを追求して世界の頂点に立ったという点は間違いなく事実だと思う。これが国際大会で結果を出すための、一つのヒントになっているんじゃないかな。

■偉大な指導者からの“教え”をこれからの選手に

2019-01-20 2002 PLACENTE Diego

――あなたがアルゼンチン代表として経験した最高の思い出は何でしょうか?

最高の思い出か……。そうだね、アルヘンティノスやリーベルで結果を残して、1997年にU-20アルゼンチン代表に選ばれたことかな。この時に出会った同僚の中には、一生の友とも言えるべき存在がいる。その後もフル代表で一緒にプレーしたりしたけど、やはりそのきっかけは優勝したU-20ワールドカップだったからね。

――最高のチームメイトは誰でしたか?

代表でもクラブでも、チームメイトには多くの素晴らしい選手がいた。(フアン・ロマン)リケルメ、アイマール、サムエル、ゼ・ロベルト、ルシオ、フアン……。多くの選手たちとともに成長できたし、お互いを分かりあってきた。ピッチ上で互いに何をしようとしているのか、阿吽の呼吸で理解することができた。

――現役時代で最高の試合は?

これは一つだけを選ぶことはできないよ。何年にもわたってポテンシャルをキープして、平常心と集中力を持ってビッグマッチに挑んできた。その継続性が重要であって、その瞬間だけをチョイスするのはあまりにも酷だ。ただ、それをリーベルやレヴァークーゼンのような強豪で実現することは、とても難しいということをみんなに分かってもらえると嬉しいな。

――今後の目標を教えてください。指導者としてやってみたいことはありますか?

フットボールで培われた私の経験や、偉大な指導者からの教えを、これからの選手に伝えることが最大の目標さ。今、育成年代のセレクションで有望な若手を見つける仕事をしていてね。将来性のある若者を見るのが本当に楽しいんだよ。U-17アルゼンチン代表をアイマールが指導しているんだけど、私たちがトップレベルのチームでどういうフットボールをしてきたのか、規範として力添えをしたいんだ。指導した若い力が、いつかアルゼンチンのフル代表でプレーするようになったら、これほど嬉しいことはないだろうね。

インタビュー・文=マフムード・ディアア/Mahmoud Diaa

構成=Goal編集部

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