■桜色の荒波、そこで読んだ潮目
俺たちが大阪さ――。
ガンバ大阪は、6日に行われた明治安田生命J1リーグ第29節でセレッソ大阪に1-0で勝利を収めた。大阪ダービーを制し、アウェイの地で大阪の盟主であることをサポーターたちは誇らしげに歌い上げた。
5連勝を飾ったガンバ大阪だが、うち3 試合が実に無失点試合。「1対0で勝てるのはチームに地力が付いてきた証拠」と東口順昭が胸を張る「ウノゼロ」は第28節・サンフレッチェ広島戦に続くものだったが、宮本恒靖監督は試合後の会見で「チーム全体の守備意識も高まったし、今ちゃん(今野泰幸)の復帰もあった」とその要因を振り返った。
出場停止のファン・ウィジョに代わってピッチに立ったアデミウソンが見事な決勝点を叩き出し、終わってみればG大阪が勝負強さを見せつけた格好の90分間。試合トータルを振り返れば、互いに主導権を奪い合うダービーの名にふさわしい好ゲームだった。
「立ち上がりは相手のほうが出足もよく、少し開始15分までは押し込まれるような展開が続いた」という宮本監督の分析は的確だ。
序盤、宮本ガンバはC大阪の猛攻の前に明らかに劣勢を強いられていた。ガンバ大阪の右サイドに流れてくるシャドーの清武弘嗣の巧みな動きとウイングバックの丸橋祐介に対してオ・ジェソクが対応し切れず、クロスから再三ピンチを招く。桜色の荒波に飲まれかけていた「宮本丸」だったが、チームの舵取りを担う百戦錬磨のボランチ二人は試合の潮目を読み解く達人だ。
「ジェソクが清武とウイングバック(丸橋)のどちらを見ていいか分からないようになっていた。だからヤットさん(遠藤保仁)と話をして、何とか僕らが清武も見ようという感じになった」と今野はピッチ上でこんなやりとりがあったことを明かすのだ。
基本的にはバイタルエリアをカバーしながらも、臨機応変にオ・ジェソクのサイドもケア。指揮官に指示されることなく、臨機応変な対応を見せ始めた今野の動きは秀逸だった。
ピッチサイドで宮本監督ともともに戦況を見守っていた山口智ヘッドコーチも言う。
「外から見ていても、相手のシャドー(清武)がつかめていなかった。そこのカバーに関しては一つひとつ、こちらから今ちゃんに『こうカバーしろ』と伝えられない中で、しっかりとやってくれていた」。
C大阪で最も警戒すべきアタッカー・清武を封じ始めたG大阪は徐々にリズムを掴み始めると、前半終了間際の45分、アデミウソンが技ありの一撃で決勝点を叩き出す。
倉田秋の絶妙なパスとループシュートを選択したアデミウソンの閃きがもたらしたゴールだったが、プレーを巻き戻すとそこにはやはり今野が絡んでいた。C大阪で1トップを務める山村和也に対する縦パスを予測して、絶妙なボールカット。こぼれたボールを遠藤が回収して始まったプレーがアデミウソンのゴールにつながったのだ。
■今野効果の恩恵を最も受けているのは…

9月1日の第25節・川崎F戦で復帰し、いきなりの完封勝利に貢献した直後、今野の口は軽やかだった。「俺は持ってるからね」。その言葉に嘘はなかった。今野の戦線復帰後、チームは破竹の5連勝。しかも前年王者の川崎Fと当時首位だった広島、そして昨季二冠のC大阪をいずれもクリーンシートで退けてきたのは「持ってる男」のパフォーマンスあってこそだと言えるだろう。そして、今野効果の恩恵を最も受けていると言っても過言でないのがボランチの相方、遠藤である。
「今ちゃんが復帰してきてから、ヤットさんのパフォーマンスも上がってきた」(オ・ジェソク)。今野の不在時には、適任ではない守備的なボランチを務めざるを得なかったかつてのJリーグMVPは、守備だけでなくボールのさばきも一級品の今野を相方にすると、やはり本来の鋭さが戻ってくる。
今野も言う。「練習の時から、今は中盤が結構安定して来たし、そこが安定するとヤットさんからスルーパスがどんどん出るようになってきた」。
後半の失点癖もあって、8月は呪われたように勝ち切れない日々が続いたが、当時のチーム内では誰もが今野の復帰を待ちわびていたという。「なかなか勝てなかった時期、『今ちゃんが戻って来ればなんとかなる』と皆も言っていた」。
昨年までG大阪を率いた長谷川健太監督(現FC東京)は「ガンバはヤットのチーム」と公言してはばからなかったが、今のガンバ大阪にあって最も欠かせないキーパーソンは子供のように喜怒哀楽を隠そうとはしない背番号15である。
J1残留が視界に入ってきたガンバ大阪にとって、まだ気の抜けないリーグ戦は残り5試合。「持ってる男」と自称する頼もしい「舵取り」を欠くことだけが、今のチームの不安材料だ。
文=下薗昌記
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