Jadon Sancho Marco ReusGetty

今季のドルトムントは圧倒的!?破壊力アップと若手躍動の秘密とは…

■カウンターのキレとともに“厚み”が増す

ドルトムントのクラブレコードがついにストップした。ブンデスリーガ第15節のデュッセルドルフ戦を1-2で落とし、開幕から維持していた無敗が「14」で途絶えたのだ。それでも2位ボルシア・メンヘングラードバッハに勝ち点6差をつけて首位を快走している。シーズン前半に彼らが見せたパフォーマンスは掛け値なしに素晴らしく、実に8シーズンぶりとなるヘルプスト・マイスター(第17節終了時の首位)の座を射止めた。

圧巻なのは攻撃だ。第16節終了現在、ブンデスリーガで断トツの42ゴールを叩き出している。その半分以上は得点ランキングで首位タイのパコ・アルカセル(12ゴール)と、大黒柱のマルコ・ロイス(10ゴール)が挙げたもの。ただ、相手からすれば両雄以外への警戒も必要だ。国内リーグでの得点者が18チーム中最多の16名を数えるように、今のドルトムントはどこからでもゴールを奪う力を持っているからだ。

Jadon Sancho Marco ReusGetty

攻撃力が高まった理由を挙げれば、それこそキリがない。一つは速攻のキレとともに“厚み”が増したこと。かつてのドルトムントは相手DFライン裏に抜け出したピエール=エメリク・オーバメヤン(現アーセナル)を活かすのが、主なカウンターのパターンだった。そのスピードに付いていけたのはロイスくらいで、良くも悪くも両雄のパフォーマンス次第という側面があった。実際、二人の力だけで高速カウンターを完結させ、レアル・マドリーのゴールをこじ開けもした(16-17シーズンのチャンピオンズリーグ第6節)。

だが、今は違う。例えば、第15節ブレーメン戦のワンシーンだ。開始7分、相手のCKをクリアしてからカウンターを発動させると、実に7人がアタッキングサードまで疾風のごとく駆け上がる。そのスプリント力には目を見張るものがあり、ブレーメンは5人しか戻れていなかった。パコ・アルカセルが放ったシュートはダフィ・クラーセンによる危機一髪のクリアに阻まれたが、カウンターの厚みを象徴する場面だった。もちろん、少人数による速攻の機能性も依然として高いものがある。

■ヴィツェルとディレイニーの獲得は大正解だった

昨シーズンはリーグ最少タイの9だったセットプレーによるゴールの増加(現時点で8)も、得点力が高まった大きな理由だ。右足ならロイス、左足ならラファエル・ゲレイロがメインキッカーで、どちらも精度とスピードの伴ったボールを送り込んでは、味方のゴールを演出している。FKはゴールに向かう弾道が基本。前述のブレーメン戦では、その形から完全にフリーになったパコ・アルカセルが貴重な先制ゴールをもぎ取った。

そのパコ・アルカセルが途中出場からの得点のシーズン記録(10)を打ち立てれば、ウインガーのジェイドン・サンチョがリーグ最多タイの9アシストを決めるなど、個々の充実・成長もドルトムントの攻撃力を高めた要素なのは言うまでもない。なによりケガに散々泣かされてきた“ガラスのエース”ロイスが健康体を維持しているのが頼もしい。速攻も遅攻も牽引車となっているのは、このトップ下である。

ONLY GERMANY Axel Witsel Thomas Delaney Borussia DortmundImago

いまやバイエルン以上とも称される選手層の厚みも、今季のドルトムントが他を圧倒できている理由だろう。CL、DFBポカールとの掛け持ちで、ほぼ3日に1試合というペースの過密日程にもかかわらず、全てのコンペティションで好成績を収めることができている。もちろん、ローテーションを機能させているルシアン・ファーヴル監督の功績は大きいが、それ以上に評価されてしかるべきは補強の成功だろう。

ロイスやパコ・アルカセル、サンチョら攻撃陣に目を奪われがちだが、こうしたアタッカーが伸び伸びとプレーできるのは、中盤の底で黒子役に徹するアクセル・ヴィツェルとトーマス・ディレイニーという両新戦力の働きがあればこそ。豊富な経験を持つ両者はゲームを読む目に優れ、攻守の両局面で実に気の利いたプレーを見せている。昨季のチームに欠けた安定感をもたらした二人の獲得は大正解だった。

■名将ヒッツフェルトのようなファーヴル監督

Lucien Favre Borussia Dortmund

18歳でイングランド代表デビューを飾ったサンチョを筆頭に、ウインガーのヤコブ・ブルーン・ラーセン(20歳)、クリスチャン・プリシッチ(20歳)、CBのマヌエル・アカンジ(23歳)、アブドゥ・ディアロ(22歳)、ダン=アクセル・ザガドゥ(19歳)、SBのアクラフ・ハキミ(20歳)と、数多くのヤングタレントが躍動しているのも、今シーズンのドルトムントの大きな特徴だ。彼らの才能を引き出しているファーヴルは、かつて率いていたグラードバッハでも若き日のロイスを大きく飛躍させ、ヴィツェルとディレイニーに次ぐボランチの3番手であるマフムード・ダフードをプロデビューさせてもいる。

当時から若手の育成に定評があるファーヴルは常に冷静沈着で、プレーの修正点に関するきめ細かいアドバイスを送るのが真骨頂。ドルトムントOBのノルベルト・ディッケルはスイス紙『ブリック』のインタビューで「とてもフレンドリーで素敵な人だ。大声を張り上げるタイプではなく、オットマール・ヒッツフェルトのようだね」と絶賛している。その人となりに加え、ミスはサッカーの一部と捉える寛容さをもって、若手が伸び伸びとプレーできる環境を生み出しているのは間違いない。

Lukasz Piszczek 06112018Getty

あまり語られる機会がないが、ウカシュ・ピシュチェクもかつてファーヴルの指導を受けた一人だ。第14節のマインツ戦で美しいゴールを決め、ここまでサンチョ、ロイスに次ぐチーム3位の4アシストを決めているチーム最年長(33歳)のベテランは、ファーヴル率いる08-09シーズンのヘルタ・ベルリンで右SBにコンバートされた過去を持つ。その後、欧州屈指の右SBに飛躍を遂げたのは周知の通りである。

かつて撒いた種(ピシュチェクやロイス)が大輪の花を咲かせ、今もまた新たな才能を育むことに余念がないファーヴル。ベテラン、中堅、若手を使い分けながら、チームを高みに導いているこのスイスの智将こそが、ドルトムントを躍進させた最大の立役者である事実に疑いの余地はない。

ブンデスリーガ前半戦のラストゲームは、奇しくも古巣グラードバッハとの対戦になる。それも首位攻防戦だ。目が離せない頂上バトルの火蓋は、21日20時30分(日本時間22日4時30分)に切られる。ここまで絶好調のドルトムントだが、前節のデュッセルドルフ戦では相手のカウンターを食い止められなかった。対するグラードバッハはMFトルガン・アザールとFWアラサーヌ・プレアを中心に、その速攻の精度が非常に高い。ドルトムントも得意とする「カウンター」が勝負の行方を左右するキーファクターになりそうだ。

文=遠藤孝輔(サッカージャーナリスト)

▶サッカー観るならDAZNで。1ヶ月間無料トライアルを今すぐ始めよう

【DAZN関連記事】
DAZN(ダゾーン)を使うなら必ず知っておきたい9つのポイント
DAZN(ダゾーン)に登録・視聴する方法とは?加入・契約の仕方をまとめてみた
DAZNの番組表は?サッカーの放送予定やスケジュールを紹介
DAZNでJリーグの放送を視聴する5つのメリットとは?
野球、F1、バスケも楽しみたい!DAZN×他スポーツ視聴の“トリセツ”はこちら ※提携サイト:Sporting Newsへ

Goal-live-scores
広告
0