2018-19シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ(CL)本戦の開幕が間近に迫っている。『Goal』は、この世界最高峰の大会でプレーした経験を持つ現役選手にインタビューを実施。今回はジュビロ磐田に所属するMF中村俊輔が取材に応じてくれた。
中村は2002年夏に横浜F・マリノスからレッジーナへ加入。2005-06シーズンから4季にわたって在籍したセルティックでCLを経験し、本戦では計17試合に出場して2得点を記録した。
インタビュー前編では、初めてCLの舞台に立った時の思いやビッグクラブとの対戦、印象に残った選手について語った様子をお届けする。中村が世界最高峰の舞台を経験して得たものとは――。
インタビュー=松岡宗一郎(Goal編集部)
■中村俊輔とCL
――中村選手にとってチャンピオンズリーグ(CL)はどういう大会でしたか?若いときはスペインに行きたかったけど、世界一のリーグがイタリアだった。(※編集部注:中村がレッジーナに移籍した2002-03シーズンはユヴェントス、ミラン、インテルがCLベスト4に。決勝ではミランがユヴェントスを破って優勝。)それにカズさん(三浦知良)やヒデさん(中田英寿)が門を開いてくれていた。最初はフィジカル重視で中盤がファールありきの潰しあいのようなリーグに行くことに「自分なんかが……」と思ったけど、サンドニでああなっちゃって。(※編集部注:2001年3月24日、日本代表はフランス代表に0−5で完敗。)自分に足りない部分と向き合うためにイタリアへ行くことに決めました。
それから3年が経って、もっと色々な経験を積んで「自分に試練を与えたい」「壁に当たりたい」という欲求が大きくなり、イタリアを出ようと考えるようになって……。そのタイミングでセルティックの(ゴードン)ストラカン監督が来てくれた。そのときに「CLでやりたい」って思うようになったかな。そのときまでは「CLは人さまのもの」と思っていたから(笑)。
――ではCLに出たいから移籍先を探していたというわけではなかったんですね?
そうですね。
――移籍初年度は中村選手がチームに入る前に予選で負けてしまい、本戦出場が叶いませんでした。CLで初めてピッチに立ったのはセルティック2年目の2006年、敵地オールド・トラッフォードでのマンチェスター・U戦でした。何か特別な思いはありましたか? 前日の夜にちょっと考えた、とか
普段どおりだったかな。余計な神経は使わなかった。
――実際にピッチに立ってみていかがでしたか?
最初の音楽。高ぶりましたよ。うん、よかった。
――初出場ながらFKからゴールを記録しました。ただ一方で「ミスキックだった」とも話してらっしゃいましたね。
そう、ミスキック。厳密には枠にいっていたからミスじゃないけど、ベストでもない。でもああやって枠に蹴るのってすごく大事。こうやって何年経っても取材に来てくれるわけだからね。決めたことも含めて全部が教訓のような試合でしたよ。
――その後も各国のトップクラブと対戦しました。
面白かったのがCLだとホームとアウェーで全く違うチームになるところ。ベンフィカとホームでやったときは正直「こんなもんか」と思ったけど、アウェーでやったら全然違って。セルティックの選手はプレッシャーを受けて萎縮しちゃってロングボールばっかり蹴るようになってしまった。スタジアムの雰囲気を完全に怖がっていたんですよ。ホームで3−0で勝って、アウェーで0−3で負けるなんて普通ないですよね? ホーム&アウェーの面白さを感じました。
――2006-07シーズンはリーグ優勝の原動力となり、スコットランドPFA年間最優秀選手賞を受賞しました。CLを経験して変わったことはありましたか?
やっぱり「個」への意識ですね。例えばシャフタールは面白かった。ブラジル人が有名じゃないんだけどすごくて。Jリーグにもいい選手はいるけど、ブラジル代表からはお呼びがかからない。ブラジルってどこのリーグにもあのレベルの選手がゴロゴロいるんだなって身をもって味わったっていうか。だからブラジルってすごいなって。
――ユナイテッドやバルセロナ、ミランなどのビッグクラブとも対戦しましたね。
CLに限らず、当時はイタリアのクラブがすごかった。(クリスティアン)ヴィエリとアドリアーノが2トップを組んで、(アルバロ)レコバがいて、(オバフェミ)マルティンスがいて……。「プレステかよ!」って思いましたもん。
CLだと、ビッグクラブの選手はワンサイズ体が大きかった。ミランもマンチェスター・Uもそう。しかもワンサイズでかい上に身体能力が高い。彼らと比べたら俺なんてアリみたいなもんでしょ(笑)。なんとかしなくちゃって必死でしたよ。
■バルセロナは「究極の形」

――印象に残っているクラブはありますか?
バルセロナですかね。個の力もそうだし、一対一の局面もすべてチームとして連動していたから手も足も出なかった。ボールをずっと持たれて、その中で一点取られるでしょ。「ああ、もうダメだ」って気持ちにさせられる。しかも場所がカンプ・ノウ(バルサの本拠地)だと「オーレ!」って合唱が始まるでしょ?
そうするとみんな萎縮しちゃってボールを取られたくないからロングボールを蹴るようになる。そうやってどツボにハマっていくんです。だからバルサのサッカーは究極の形だと思う。やれてよかったですよ。
――バルサだけにしかない特徴があったんですね?
イタリアだと潰し屋のボランチとゲームメーカー、あと大型のFWがいて、それぞれに役割がある。でもバルサの場合、チームとして“いなす”というのがある。ボールを繋ぐというよりゴールを奪うために相手の守備やフィジカルを無効化してしまうサッカーっていうのかな。俺はそれが究極の形だと思う。だからゲームを支配されていても戦っていて面白かった。
例えば自分がトップ下に入ったとき、監督から「ヤヤ・トゥーレについていくように」って言われてたんですけど、相手は全然こっちに向かってこない。「なんなんだ」って思ってたらちゃんとストッパーが代わりに動いていて。こっちの動きは見極められててヤヤもわざと動かない。その横を(ラファエル)マルケスがドリブルしていくわけですよ。で、俺がそっちに寄っていくとヤヤに出られちゃう。そうなると……もうね。
――全部分かって動いているんですね
ちっぽけな戦術や対策じゃ歯が立たない。ほとんどのチームは「その時の世界最高の選手を集めました」っていう感じなんだけど、バルサはちょっと違った。彼らは単なるパスサッカーをやってるんじゃなくて、すごく染み付いてる。文化としてのサッカーがね。
――チームとしての完成度が高いということですね
そう。まさに「美しく勝つ」って感じですね。
――選手個人で思い出されるのは誰ですか?
……ロナウジーニョかな。例えば股を抜いたあとにそっぽ向きながらパスを出すとする。「そんなプレー意味ない」って思うけど、観客は「ワー!」って沸くし、それをやられてチームメートの気持ちがシュンって萎んでいくのが分かるんですよ。味方を盛り上げて相手の戦意を喪失させるオーラっていうのかな。ロナウジーニョにはそれがありました。
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