バイエルン・ミュンヘンにとって負傷の禍は今に始まったことではない。複数の選手たちが離脱し、今シーズンはヨーロッパタイトルだけでなく、独占してきた国内のタイトルも明け渡すことになるかもしれない、とファンは感じ始めている。
■きっかけは例年より早い負傷者続出

3シーズン前、チャンピオンズリーグ準決勝アトレティコ・マドリー戦で、守備の要ジェローム・ボアテングとワールドクラスのウィンガー、フランク・リベリとアリエン・ロッベンが揃って負傷した。このときはセカンドレグでバイエルンが逆転勝利したが、アウェーゴールによってアトレティコが決勝進出を果たした。
近年はレアル・マドリーを相手にとって、負傷で主力選手の不足に苦しめられている。昨シーズン、マヌエル・ノイアーの代役であるスヴェン・ウルライヒが決定的なミスからカリム・ベンゼマにゴールを許したのは記憶に新しい。もっとも、ウルライヒはほとんどの試合で好パフォーマンスを見せていたわけだが、シーズンの最終盤の重要な試合で、しっかりと主力選手がキックオフからピッチに立つマドリーとは対照的な姿でさえあった。
バイエルンがケガに苦しむことに、もはや誰も驚くことはない。もはや毎年恒例のこととなっている。驚きがあるとするなら、いつも退屈なシーズンの終盤に訪れる“それ”が、例年より早くやってきた、ということだろう。
例年ケガ人が続出する頃には、バイエルンはほとんどブンデスリーガを手中に収めている。そのため主力が離脱したところで、タイトルレースに変化はほとんど生まれない。しかし今シーズンは、普段よりだいぶ早く“この時期”がやってきたわけだ。ディフェンスラインで常に万全を期しているのはヨシュア・キミッヒだけ。才能あふれるフランス人コンビ、コランタン・トリッソとキングスレー・コマンは大ケガに見舞われ、少なくともウィンターブレークまで戻ってくることはない。
この負傷の禍が夏の移籍市場でのクラブの仕事ぶりに起因することは、誰もが知っている。シャルケMFレオン・ゴレツカの移籍合意を1月に早々に取り付けると、夏のマーケットでバイエルンは一切誰とも契約を結ぶことはなかった。
Gettyゴレツカはフリーでクラブに加入。レナト・サンチェスとセルジュ・ニャブリがローン期間を終えて帰ってきた。それ以外誰一人、ゼーベナー通りのドアをくぐりクラブにやってきた者はいなかった。半面、アルトゥーロ・ビダルとセバスティアン・ルディが別れを告げ、フアン・ベルナトがパリ・サンジェルマンに移籍していったのである。
■同情の余地もあるコバチ監督
Getty難しい状況の中、新指揮官のニコ・コバチはアリアンツ・アレーナで尋常ではないプレッシャーにさらされ続けてきた。それでも、全コンペティションで開幕7連勝を手にし、出だしは完璧だった。
だがその後、負傷者が出ることで車輪が狂い始める。いまや4試合勝ちなしと、「ドイツの盟主」としては異例の状況だ。序盤とは言え、ブンデスリーガの6位に位置するということはあってはならないことだろう。
確かに、カギとなる4選手が負傷している事実はある。だが問題はそれよりもっと深いところに根付いたものだ。早くもコバチには解任のうわさが浮上しているが、このクライシスを彼一人に押し付けるというのは少々強引すぎる。実際、ピッチ上でボルシアMGを相手に3ゴールを許したのは選手たちである。
バイエルンの低調ぶりを巧みに突いたボルシアMG。ディーター・ヘッキング監督は自分たちの勝利を喜びながら、指揮官の周辺の状況に同情心を見せる。
「バイエルンはニコ・コバチのもと3週間負けなしだった。その2試合後、コバチの災難について語られ始めたね」
「我々の仕事はあまりにあっさりとネガティブにとらえられてしまう。2,3試合みじめな試合をしてしまえばもうおしまいだよ、忍耐がなさすぎる。あまり好きなことではないね」
■「台無し」にしたのは誰か?
新加入選手の不在と負傷者の問題以上に、キープレーヤーたちの低調なパフォーマンスによってバイエルンのシーズンは「台無し」になりつつある。
Getty Imagesロベルト・レヴァンドフスキは9月22日から1ゴールも決められていない。開幕直後こそ力強いパフォーマンスを見えていたが、次第に自信を失っているかのように、調子は尻すぼみとなっている。
同じことがバイエルンの多くの選手に言えるだろう。彼らは年を重ね、動きが鈍り、およそかつて輝きを放っていた頃とは違う選手となっている。
ボアテングもまたこの夏チームを去ろうとしていた。だがケガが多いわりに高額な給与がネックとなり、パリへの移籍は破談に。ノイアーはほぼ1年間を費やして復帰を果たしたが、もはやかつてクラブと代表を救ったときとは異なる選手となってしまった。
Gettyドイツ代表の失敗はバイエルンの失敗と重なる。トーマス・ミュラー、ノイアー、ボアテングといったベテラン選手たちはかつてのようなプレーを見せられていない。かろうじてキミッヒが給与に見合うプレーをしている程度だ。
コバチはこうしたベテラン選手たちを不快にさせないようにローテーションしながら、バイエルンを上位にとどめなければならない。だが、新任の彼には少々難しいタスクとなっていることは否めない。
もっと年配で経験を積んだ指揮官であれば、ベストの11人を固定し、自分なりのやり方で結果を出すことができるだろう。ベンチに座る選手が不満に思っても、結果が伴っている以上はそれを誇りに感じることができる。現状では、選手たちはプレーのチャンスをもらっているにもかかわらず、満足できないでいる。まさに不思議な状況だ。
■不可解な会見はマイナス効果に
バイエルンは土曜日、ヴォルフスブルク戦でブンデスリーガに帰ってくる。そのあとはまたミッドウィークにアテネへと旅立つ。この2試合が、コバチの未来を決するだろう。
imago重要な戦いを前に、ウリ・ヘーネス会長、カール・ハインツ・ルンメニゲCEO、ハサン・サリハミジッチSD(スポーツディレクター)が異例とも言える会見を開いた。この3人が会見で同時に姿を見せたは、昨シーズンにユップ・ハインケス前監督の復帰を発表したとき以来だったという。彼らが口を揃えたのは、「ドイツ代表とバイエルンの選手たちに対する過剰な批判はやめろ」ということだ。
キープレーヤーたちのパフォーマンス低下しているのは、何も私だけではない。ドイツ国内では、彼らの必要性すら議論されている。行き過ぎた面もあるのかもしれないが、結果を残すことができていない以上、批判を受けるのは至極正当なことだろう。
ヘーネス氏は「我々はひどくリスペクトに欠いた報道を受け入れ続けるつもりはない」と個人攻撃を非難したが、返す刀ですでに退団しているベルナトについてこのように語っている。
「昨季のセビージャ戦のとき、彼のせいで敗退しそうになった。そのときに売り払うことを決めた。彼のせいで我々のCLでの成功という夢が“台無し”にされると思ったからね」
こういった会見が行われること自体が異例であり、バイエルンが危機に陥っていることを指し示す。「バイエルンは選手を守る」という姿勢を示し、一丸で戦うことをアピールしたかったはずだが、その思惑は外れた。解決できるのはもはやピッチのみ。次の2試合が正念場となる。
文=ロナン・マーフィー/Ronan Murphy
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