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ロペテギはレアル・マドリーのモイーズか…課された“ジダン後”の困難なタスク

ジネディーヌ・ジダンは「クラブを去る最良の時」だとしてサンティアゴ・ベルナベウから去った。それは彼が3度目のチャンピオンズリーグ優勝を果たし、名実ともにクラブの英雄となったタイミングだった。

歴史は彼が率いたレアル・マドリーを寛大に見るだろう。だが全く凡庸なシーズンだった事実が、ヨーロッパ王者という一つの結果に覆い隠されたともいえる。

ラ・リーガでは実に16試合で勝利を逃し、首位バルセロナとは勝ち点17差という大差でシーズンを終えた。ジダンのマドリーでのラストシーズンは悲惨な開幕とともに始まり、安定を欠いていた。ホームでバレンシア、レバンテ、レアル・ベティス相手に勝つことができなかったため、クリスマス前にはタイトルの行方が大方決まってしまっていた。

■ジダンは英雄だが…

10_17_zidane(C)Getty Images 確かに、ジダンはリヴァプールとのチャンピオンズリーグ決勝で役目を果たした。マドリーの取り巻きは、もしあの試合でロス・ブランコスが敗れていれば、ジダンはフロレンティーノ・ペレス会長によってクビにされるだろうとみていた。

CLで優勝したものの、マドリーではその問題があからさまに話されていた。だがジダンが好んで表現した彼らの“耐える”力が欧州大陸で発揮されたことで、この問題をうまく覆い隠した。だがコパ・デル・レイ準々決勝でレガネス相手に敗退したときには既に、クラブには大きな変化が必要だという危険信号が明確に発されていた。

CLを連続優勝したチームに対してこんなことをいうのはおかしく感じるかもしれない。だがこれは真実だ。このチームが築いてきた伝統は、欧州でのたった1試合ではなく、年間40,50試合という容赦のない日々を経て積み重ねられてきたものなのだ。

だからこそジダンは、その魔法の粉を自分自身にかけてクラブを去った。新たにその席に着く者は、マドリーが常に称賛を受ける存在とし続けなければならない。そのためには、常にチームを向上させ続けるしかないのだ。

■再生計画で…

10_17_asencio クリスティアーノ・ロナウドの売却は、ロペテギ就任の前から既成事実とみられていた。このことの対策は常々、騒がれてきたことだ。1985年以来となる4試合無得点という惨状――。ロナウドの振る舞いや独りよがりでチームの勝利に貢献できていないと糾弾してきた取り巻きたちはどう考えるのか。

全てのシュートを決めるのは簡単なことではない。カリム・ベンゼマ、ギャレス・ベイル、マルコ・アセンシオが決めた40ゴールがあるからと言ってどうにかなるものではないのだ。

ここ数シーズンのペレスの移籍市場でのポリシーは、完成されたガラクティコス(銀河系軍団)に向けたものというより、未来志向の投資という側面を増している。ヘスス・バジェホ、アルバロ・オドリオソラ、ダニ・セバージョス、マルコ・アセンシオ、ヴィニシウス・ジュニオール、そしてマリアーノ・ディアスといった面々がここ数年の獲得リストを埋めているのがその証左だ。

誰が指揮官についてもファーストチームのレベルに達しているとみなされるのはアセンシオぐらいのもので、残りの選手たちはまだまだ改善と成熟が待たれる。これについてはロペテギの失策ではない。彼はペレスが画策するボトムアップ型のマドリー再生計画の被害者と言ってもいい。

■危機の兆候

10_17_Lopetegui(C)Getty Images ロペテギは今シーズン、マドリーに新たなプレースタイルを持ち込んだ。それはリーガの最初の3,4試合は非常にうまく機能し、CL開幕節のローマ戦ではまさに完勝という出来だった。

だがその後、マドリーは行き詰まりを見せる。高いポゼッション率を誇りながらもそれを得点に結びつけることができなかった。チームからロナウドが離脱しても、ベンゼマは期待された点取り屋としての役割を果たし切れていない。

さらに降りかかった災難が負傷者の多さだ。ロペテギも最近の敗戦の後、このことに言及した。だが、これが事態をさらに悪化させている。

CSKAモスクワ戦でマドリーはマルセロ、ギャレス・ベイル、イスコ、そしてベンチには入ったもののルカ・モドリッチを失い、セルヒオ・ラモスはチームに帯同すらしなかった。これは事実上、“ジダンのチーム”で主力を張っていた選手がまるごと不在だったことになる。どんな指揮官でも、これだけ選手を欠いてしまえば苦しむのも当然だ。欠場選手の何名かはラ・リーガでも痛手となった。イスコがプレーできていないことはチームにとって非常に苦しい問題となっている。

ワールドカップを戦ったことで、数名の選手のパフォーマンスに影響を及ぼしていることも忘れてはならない。ラファエル・ヴァランは彼のベストフォームに程遠く、モドリッチも新指揮官の元でその実力を発揮しきれていない。ジダン肝いりの選手だったカゼミーロは、ロペテギが試合ごとに入れ替える戦術の犠牲者筆頭となっている。

ちょっとしたケガの蔓延、ベンゼマやアセンシオにも言えることだが、それは下降線に入り、引退が視野に入ってきた30代のスター選手たちにとっては炭鉱のカナリア、つまり危機の兆候と考えられるべきだ。

ジダンのようなクラブのレジェンドの後継、それは避けることのできない、だが困難なタスクだ。そして残念ながらロペテギと彼のチームに良い前兆は見つけられない。すでにマドリー首脳陣は、今月末に行われるバルセロナとのエル・クラシコの結果次第では監督交代を検討しているとささやかれている。

■マドリーのモイーズ?

マンチェスター・ユナイテッドに20ものタイトルをもたらしたサー・アレックス・ファーガソンがクラブを去って5年が経った。彼の後を継いだデイヴィッド・モイーズと、現在のロペテギの状況は似通ったところがある。伝説の後にやってきた新指揮官は、彼が平凡であること以上の苦しみを被る。それは指揮官自身の資質から遠く離れた、深く根を張った問題に起因する。

前スペイン代表監督がマドリーの監督に就くチャンスに飛びついたことは理解できる。だがいまやその選択にも疑念が突きつけられている。スペイン代表を率いてW杯に出場する栄光を捨ててまで、マドリーのモイーズになるべきだったのか?と。

文=ピーター・ストーントン/Peter Staunton

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