ルヴァン杯で結果にコミット。初優勝の湘南、偶然ではない必然の戴冠である理由

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©Atsushi Tokumaru
クラブ創設50周年にしてルヴァンカップ初優勝を成し遂げた湘南ベルマーレ。なぜ頂点に上り詰めることができたのか?

今季のJリーグYBCルヴァンカップは湘南ベルマーレの初優勝という形で幕を閉じた。前半に20歳・杉岡大暉のスーパーゴールで先制すると、後半はJ屈指の攻撃力を誇る横浜F・マリノスに猛攻を受けながらも、最後まで得点を許さず。初戴冠を手にした。決してタレントが揃うわけではない湘南が、なぜ頂点に上り詰めることができたのか。そこには曹貴裁監督の傑出したマネジメント力と、若手とベテランが織りなす絶妙な融合があった。

■パーフェクトだった前半

立ち上がりから湘南の積極性が際立った。最終ラインからのビルドアップを狙う横浜FMに対し、湘南は高い位置からのプレスを徹底し、相手の持ち味を封殺する。奪ってからは素早くゴール前に迫って、次々に惜しい場面を生み出していった。

この日、シャドーの位置でプレーした石川俊輝は、前半の狙いをこう明かす。

「僕の位置から相手の右サイド側にボールが行くように意識して、CBにプレッシャーを掛けていました。(左サイドの)山中(亮輔)選手にあまりボールを入れたくなかったので。前半に関しては、(山中選手に)あまり前向きでフリーで持たせるという場面は少なかったのかなと思います」

相手のボール回しをあえて右に傾かせ、左に入った場合には右ウイングバックの岡本拓也がインターセプトを狙う。警戒していた山中に自由を与えず、横浜FMのストロングポイントを打ち消したのだ。最後の場面の精度を欠き、なかなか得点機は生まれなかったが、積極果敢な自らのスタイルを打ち出し、試合の流れを掌握していたのは間違いなく湘南のほうだった。

36分に生まれた先制点の場面も、湘南の良さが示されたものだった。縦を意識したパス回しを展開し、相手に厳しいチャージを受けながらも、あきらめることなくボールをつないでいく。山根視来の縦パスは天野純に当たってこぼれ球となったが、左サイドから中央に侵入した杉岡大暉がルーズボールを素早く拾って、そのまま豪快に左足ミドルを突き刺した。殊勲のゴールを決めた20歳は、狙い通りの一撃であったと、胸を張って振り返った。

「相手は斜めの飛び出しに弱という分析がありました。ボールがたまたまこぼれてきただけですけど、いいところにいて、いいところでフリーで持てたので、思い切っていきました」(杉岡)

前半の戦いぶりを曹貴裁監督も手放しで賛辞を贈る。

「前半の立ち上がりから非常に堂々とマリノスさんに対してプレーしてくれたと思います。マリノスさんの良さを出させないことが自分たちのストロングポイントにつながるっていうことは、練習からずっと言ってきました。それを前半はほぼパーフェクトにやってくれた」(曹監督)

傑出したタレントが揃っているわけではない。多くの選手にとって初めて経験する決勝の大舞台だった。初タイトルが懸かる一戦、44,242人の大観衆、大きな重圧が伸し掛かることも予想された。しかし、選手たちはプレッシャーに飲まれることなく、プランを完璧に遂行した。この前半のパフォーマンスが、悲願成就の大きな要因となったことは間違いない。

■猛攻を受けた後半は走力で対抗

後半に入ると、逆襲を狙う横浜FMに押し込まれる展開となったが、その鋭い出足に陰りは見られない。“湘南スタイル”と呼ばれるアグレッシブなサッカーの源は、やはり走ることにある。この日も湘南の“走力”は健在だった。チーム総走行距離は113.077km対109.586km。スプリント回数は184回対167回と、いずれも横浜FMを大きく上回った。

ピンチの連続となった残り15分でも、湘南の“走り”に衰えは見られず、必死に相手へ食らいつき、危険な場面では身体を張り、最後まで横浜FMに自由を与えなかった。なかでも終盤に出色のパフォーマンスを見せたのが、センターバックの坂圭祐だ。身長174センチと小柄ながら、絶妙な位置取りと球際の強さを示して、ゴールを死守する。相手をフリーにさせず、まともにシュートを打たせないその対応力は圧巻だった。

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試合後に「MVPは誰か?」と問われた曹監督も、GKの秋元陽太とともに坂をはじめとする3バックの名前を挙げている。

「3バックの選手は大会を通して隙を作らず、身長がないのにラインを高く保ってリスクを冒しながらも、相手の攻撃を遮断し、ゴール前ではね返すだけでなく、入れ替わって自分たちの攻撃の第一歩になるところまでやってくれた。彼らに敬意を表したいと思います」

少しでも気を抜いたら確実にやられていただろう。しかし、横浜FMの猛攻の芽を確実に摘み取った。湘南の守備に隙は一切なかった。最終ラインを中心に全員が身体を張って虎の子の1点を守り抜いた。

■若手の突き上げ、ベテランの安定感

決勝を戦った湘南のスタメン平均年齢は25.55歳。決勝弾の杉岡は東京五輪世代の20歳であり、ボランチを務めた金子大毅も同年齢。CBの坂は23歳で、10番を背負う秋野央樹と山根でさえまだ24歳だ。さらに大会を通じてみれば、U-19アジア選手権に参加するため決勝のピッチは立てなかった齊藤未月、石原広教の19歳コンビの貢献度も高かった。

曹監督の下で鍛えられた若きタレントたちが躍進の立役者となった一方で、梅崎司や秋元といったベテランも存在感を示した。さらに言えば、試合終盤にはベンチを飛び出して、ピッチで戦う選手を鼓舞し続けた、ミキッチとアンドレ・バイアの経験豊富な外国籍選手の存在も見逃せない。

そして何より称えらえるべきは、個性豊かな選手たちをまとめ上げた曹監督のマネジメント能力だろう。湘南を率いて7年目、昇降格を繰り返しながら、チームを闘える軍団へと成長させた。秋元は優勝できた要因を、次のように説明する。

「やっぱり選手一人ひとりの意識だと思います。曹さんの言うことは厳しいですけど、そのなかでも折れずに、向かっていく姿勢というのが湘南の良さだと思う。その意識が若手からベテランまで統一できたのが、ここまで来られた要因かなと思います」

前線を縦横無尽に駆け回った梅崎もまた、秋元の言葉をなぞるように、全員の意思統一が“湘南スタイル”を遂行できた理由であると話す。

「一人一人の距離感とか、意思統一がないと実行できないスタイルですし、今はそれが自分の中でしっかり理解できたというのがあって、自分がまたそれを先陣切ってやっていくというところまで来れている。本当に僕らのサッカーを貫いたスタイルがこうやって日本一に輝いたのは、日本サッカーにとっても意味がある」

クラブが今季掲げたスローガン『ALIVE』には、“湘南スタイル”について以下のように説明している。

「我々は勝利を究極に追求し、見ている人と究極に感動を分かち合えるフットボールを目指します。それこそが湘南スタイルの真髄です」

チームが一丸となって究極に勝利を追求した結果、クラブ創立50周年の節目に訪れたルヴァンカップ初優勝。選手、スタッフ、フロント、そして結果を出ないときもチームを見放すことなく支え続けてきたサポーター――。この優勝は偶然ではない。湘南ベルマーレというクラブに関わるすべて人々の総力が結集された、必然の戴冠だった。

文=原山裕平

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