2018-09-21-yoshida-takayuki-kobe(C)J.LEAGUE

リージョ体制への助走。電撃監督交代の神戸、敵地・埼スタでの勝負に燃える

稀代の戦術家・フアン・マヌエル・リージョ氏を迎えたヴィッセル神戸。今季も残り8節となった今、新指揮官のもと再スタートを切る。今節対戦するのは浦和レッズだ。今節は、登録の関係で林健太郎アシスタントコーチが暫定指揮を執る。ここではあらためてクラブが監督交代に踏み切った経緯と今後想定される変化、そして浦和戦の展望をお届けする。

■空間を支配したリージョ氏のダンディズム

アラン・ドロンか、アル・パチーノか。薄紫色の開襟シャツの胸元がはだける。マイクを持った右腕のひじを机に押し当て、左腕は自信の証のように激しく動いた。スクリーン越しに見慣れた世界のダンディズム。男の色気が漂った。

17日、名前は伏せられたまま迎えた神戸の新監督発表会見。現れたのは「ポゼッション・サッカーの開拓者」とクラブ会長の三木谷浩史氏が言えば、「時代の最先端を行く指導者」とスポーツダイレクターを務める三浦淳寛氏が紹介した、スペイン人のファン・マヌエル・リージョ氏。名将グアルディオラが″師″と仰ぐ、世界的な戦術家の登場だ。そのヴィジュアルと醸し出す男臭さ、そして独特の言葉で、リージョ氏は会見場という空間を支配した。

「ピッチ上のアーティストとも言える選手たちに対して、私がどんな側面で、どんなことで貢献していけるのか。監督というものは、選手たちという存在がとにかく必要。それは逆のことではない。監督が選手たちにとって必要ではなく、選手たちの存在が監督に必要なんです」

バルセロナを理想のクラブとし、ACL出場権の獲得を目標に掲げる神戸は、吉田孝行前監督を事実上解任。世界の大物監督を現場のトップに据えた。三木谷会長や三浦SDは、ポゼッション・サッカーを進化させるためにステップアップする必要性を強調。三木谷会長は監督交代についてこう説明した。

「吉田監督、本当によくやっていただいたと思うんですけども、やはりこの新しいスタイルというのは、全ての選手がしっかりとした理解をして、そしてチーム一体として取り組んでいく必要があると。そういう意味においては、やはりこれを実施してきた経験があり、なおかつ知見のあるリーダーシップが必要」

神戸はリーグ戦3連敗中。ACL出場権のかかった天皇杯ラウンド16・鳥栖戦にも敗れ、公式戦4連敗。三浦SDは「この連敗が関係ないかと言ったら、そうではないです」とし、順位を8位に落とした直近の成績も監督交代の一因であることを隠さなかった。

■「イニエスタ・フィーバー」の陰で

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吉田前監督はポゼッション・スタイルを進化させてきた。元ドイツ代表のルーカス・ポドルスキに司令塔役を担わせ、テンポの良いボール回しや、リズム感をピッチに落とし込む。堅守速攻が代名詞だったチームはポゼッション率でJ1屈指となり、上位を狙う好位置をキープ。第18節を終えた時点で4位につけ、悲願のACL出場権獲得に大きな期待をにじませた。

ただ、今夏加入した元スペイン代表のアンドレス・イニエスタは、吉田ヴィッセルに大きな影響を及ぼした。日本全国を熱狂で包んだ「イニエスタ・フィーバー」の陰で、攻守の戦術にズレが生まれていく。

開幕前から積み上げたアタッキングと、卓越した技術と判断力を持つイニエスタを軸とした崩しのバランスをつかみ切れず、守備でのハメ方も修正を余儀なくされた。そのテコ入れを進めていた吉田前監督は、一定の成果は出したが結果は得られず、道半ばでの幕引きを迎えた。

吉田前監督が率いた神戸では、過去の監督解任の事例からも明らかなように、現場に多くの時間は許容されていない。それを抜きにした上で吉田前監督は、指導者を志向していた時期から監督業への覚悟を口にしている。「監督はいつクビを切られるか分からないシビアな仕事」。

昨季途中に初めて指揮官を務め、可能性を感じさせた手腕は見事だ。プレーヤー時代から何度も崖っぷちを這い上った男は、新たなサッカー観を築く好機とすることだろう。その41歳の若き監督からバトンを受け継ぐ熟練の戦術家は、目標を問われると確たる信念に基づき発言している。

「私たちがフォーカスするべきなのは、目標に到達するというプロセスです。そういった道というもの、私たちが進んで行く道というものは、やはりゆっくりとしたものであると思うんです。歩きながら進んでいくべきものになると思います」

■まずは、戦術面の整理の継続か

新監督就任会見から一夜明けた18日、サブメンバーを中心に関西ステップアップリーグで関西学生選抜と戦った神戸。これを観戦したリージョ新監督はオフを挟んだ20日、クラブハウスでのミーティングに参加し、スタッフや選手と積極的にコミュニケーションを取っている。

吉田前監督のもとで新たなプレースタイルを磨いた大槻周平は「ポゼッションサッカーの先駆者だと聞いた。いろいろ勉強したいし、しっかり吸収して自分のものにしたい」と意欲的だ。具体的な戦い方の落とし込みはこれからだが、″バルサ化″へのスピードアップを図るクラブのもと、選手は良い緊張感を漂わせている。

ただ、いま現在、労働ビザの関係でリージョ氏が実際の指揮を執ることはできず、今節・浦和戦は、吉田体制下でアシスタントコーチを務めていた林健太郎氏が暫定的な指揮官を務める。林氏は自身の役割をこう話した。

「大きく変えることはない。そこからまたファンマ(リージョ新監督の愛称)に引き継いで変化することは当然あると思うので、変えてまたさらに変えてでは選手も明らかに混乱してしまう。基本的には良かったところの質をもっと上げる。(敗戦した試合の)すべてが悪かった試合ではないと思うし、そこは見極めながら最低限の変化にとどめたい」

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▲浦和戦予想フォーメーション

ポイントは、吉田前監督が解任間際におこなっていた戦術面の整理の継続。オフェンス面では、今季積み上げたサッカーとイニエスタの感性とのバランスの取れたアタッキングの構築だ。開幕以来、中盤で躍動する三田啓貴は″個々の判断″の大切さを指摘した。

「彼(イニエスタ)がチームに入ってから、まずはアンドレスを見ることが多くなっている。そこからどうするかも大事ですけど、まずはそれぞれの判断も必要だと思う。それぞれにとって良い選択をして、そこからどう攻撃をしていくかを考えるのが良い。そうすることで彼も生きると思う」

現在リーグ戦8位の神戸だが、ACL出場権を自動的に獲得できる3位との勝点差は「6」。暫定監督の林コーチは、相手サポーターで埋まることが想定される敵地での勝負に燃えた。

「浦和はサポーターも含めてビッグクラブ。個人個人を見ても能力が高い。もっと上(の順位)にいてもいいチームだと思っている。今回もたくさん(観客が)入ると思うし、それも踏まえて良い準備がしたい」

一つ下の順位につける浦和との勝ち点差はわずかに「1」。まずは目先のライバルチームを確実に蹴落とすこと。それが目標達成へのロングスパートを切る、力強い合図となる。

取材・文=小野慶太

■J1第27節 試合日程

9/21(金)
19:30 清水vsG大阪 (アイスタ)

9/22(土)
15:00 柏vs鳥栖(三協F柏)
16:00 磐田vs横浜FM(ヤマハ)
18:00 長崎vs仙台(トラスタ)
19:00 川崎Fvs名古屋(等々力)
19:00 湘南vsC大阪(BMWス)
19:00 広島vsFC東京(Eスタ)

9/23(日)
18:00 浦和vs神戸(埼スタ)
19:00 札幌vs鹿島(札幌ド)

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