ヤング森保ジャパンの変化。ベトナムに力負けしたチームが「ガチの韓国」と渡り合えた理由/アジア大会

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(C)Getty Images
アジア競技大会決勝で森保一監督率いるU-21日本代表は、9月1日、U-23韓国代表と対戦し、延長戦の末1-2で敗れて大会を準優勝で終えた。韓国は2大会連続優勝となった。

1-0で辛勝した8月14日のグループステージ第1戦・ネパール戦から、9月1日の決勝・韓国戦まで重ねた試合は7試合。ベトナムに「力強さ負け」したチームが、決勝では準A 代表とも言える韓国と渡り合った。この変化の理由はどこにあるのか。そしてこの世代の今後の強化プランは?大会を密着取材してきた川端暁彦氏がレポートする。

■プレミアリーグの選手を相手に自分を試す

120分を経ての決着だった。インドネシアのパカンサリ・スタジアムに主審のホイッスルが鳴り響いた瞬間、日本の銀メダルが確定した。

アジア競技大会男子サッカー決勝戦。史上初めてファイナルでの日韓戦となったこの対決は、2年後の東京五輪を目指して活動するU-21日本代表の選手たちにとって紛れもないチャレンジだった。

相手は2歳年長のU-23代表をベースに、FWイ・スンウ(ヴェローナ)やFWファン・ヒチャン(ハンブルク)といった欧州組の選手たちもそろえるラインナップ。オーバーエイジ選手にもFWソン・フンミン(トッテナム)らA代表級の実力者たちが招かれていた。

一方の日本はそもそも1クラブ1名まで、しかもU-19年代の選手は除外という制限下でしか選手を招集できておらず、オーバーエイジ選手や欧州組は起用していない。「U-21」というくくりで考えてもベストオーダーではなかった上に、大会に入ってから負傷者や体調不良者が重なり、満身創痍に近い状態でこの決戦に臨んでいた。

ただ、選手たちの空気感は前のめりだった。

「プレミアリーグでやっている選手を相手に自分を試せる」と守備陣が色めき立ち、一泡吹かせてやるというチャレンジャーのマインドを共有していた。個々に関して実力差があることは百も承知なので、相手にボールを支配され、押し込まれる流れになることはむしろ前提と受け入れ、戦術的にも心理的にも準備万端の状態だった。

「プロになっている以上、年は関係ない」とDF杉岡大暉(湘南ベルマーレ)が言い切ってみせたように、年齢差を言い訳にする考えもない。

当初4強入りを一つの目安として掲げていた森保監督は、メンバー集合後に「選手たちが本気で金メダルを獲りたいと言ってくれた」と目標を優勝に上方修正。韓国はその目標を立てた時点から「対戦してみたいと思ってきた」(MF渡辺皓太/東京ヴェルディ)ターゲットだった。

■韓国のプレッシャーを加速させた日本

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勝てば兵役免除という人生の大事が懸かる上に、相手より年上のチームゆえに「勝って当たり前」という周囲の雰囲気もある。韓国にとって、決してやりやすい試合でなかったのは想像に難くない。

「アウェイの雰囲気」と杉岡が形容したようにスタンドは韓国サポーターで占められていたが、これもまた韓国のプレッシャー要因だった。ここぞという場面で力んでしまうようなプレーが出たのは若い選手だけでなソン・フンミンですら例外ではなかった。

時間の経過とともにそうした焦燥感、プレッシャーを加速させたのは、紛れもなく日本の選手たちの勇戦奮闘だった。

大会のグループステージ第3戦・ベトナム戦(0-1)では、「力強さ負け」と指揮官を落胆させるパフォーマンスを見せてしまったが、そのハーフタイムで受けた一喝から、明らかにプレーのベクトルが変わっていった。

まず戦うこと、ハードワークすること、素早く攻守を切り替えること。

戦術がどうとかいう以前のベースの部分をあらためて強調し直し、練習でもあらためて強く求めた。そして、戦えていないと見なした選手は外すということも明確に示した。

その繰り返しの中で「球際の部分は明らかに変わってきた」(DF板倉滉/ベガルタ仙台)と選手たちも実感していたチームの変化を、あらためて試す相手として、アジアに韓国以上の相手はなかった。A代表入りを狙う選手たちにとっては「ガチの韓国とやれる」(杉岡)ことは最高のアピール機会でもある。

序盤から韓国の猛攻にさらされることになった日本だが、相手の強さを謙虚に認め、すべて想定内と思っていれば怖さもない。個人と個人の戦いでぶち抜かれるケースが出てくることも想定内なので混乱もない。

特に立田悠悟(清水エスパルス)ら3バックの選手たちは普段以上に高いカバーリング意識を相互に持ち合いながらゴール前のおいしいゾーンでの自由を許さず、最後は体を投げ出しての守備を徹底。強力攻撃陣と渡り合い続けた。

「選手は粘り強く、しつこく、しぶとく対応してくれていたと思います。最後のところで身体を張って、みんな気持ちを入れてよく止めてくれていた」(森保監督)

序盤の鋭鋒をかわしてからは、ここまでの試合で先発落ちの苦い経験を味わってきたMF三好康児(北海道コンサドーレ札幌)が、28分に個人技から敵陣を切り裂いて惜しいシュートを放つなど日本にもチャンスが生まれ始める。

■勝敗がほぼ決してもあきらめないたくましさ

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そして連戦の消耗があるのはお互い様。後半に入ると、序盤のような勢いをもう一度発揮することはなく、圧倒的に韓国へ傾いていたボール支配率も、時間を追うごとに少しずつ改善されていった。

言っても仕方ないが、FW前田大然(松本山雅FC)の負傷で前線からのチェイシングをやり切れなかったことと、スーパーサブとして結果を出してきたFW上田綺世(法政大)を先発させたことで攻撃的な交代カードが不足してしまったのは否めなかった。

前後半の90分で日本の交代は0人。緊迫した流れで切るに切れなかった面もあるにせよ、傷病者が続発する中でベンチメンバーの薄さが出てしまっていた。

迎えた延長戦は90分をやり切り、体力的にも限界近い中で難しい面もあった。

開始早々に凡ミスが出るなどして流れを持って行かれると、韓国の選手たちは残された体力を振り絞るように、この時間帯に傾注してきた。まさに勝負どころとなったのが延長前半の3分間。ここで交代出場のイ・スンウにゴールを許し、さらに101分にはセットプレーから追加点も奪われ、勝敗はほぼ決してしまった。

だがそれでも「最後まであきらめることなく、戦い続ける姿勢を見せてくれた」(森保監督)。再び前線からのプレスを敢行してボールを奪還し、ゴールを目指す。「本当にたくましくなった」と指揮官の目を細めさせるプレーぶりで、韓国を追い詰める。

115分には交代出場となったMF初瀬亮(ガンバ大阪)のCKから上田が頭で合わせ、追撃の1点をもぎ取った。このあとは韓国がなりふり構わぬ時間稼ぎまで見せて時計の針を進めていったが、そこまで彼らを追い詰めたのは、紛れもなく年少の日本代表だった。

結果としてスコアは1-2から動くことなく、日本の選手たちに掛けられたメダルは銀色だった。ただ、「決勝戦で敗れたが、これまでの戦いになかったタフさというものを選手たちは出してくれて、この大会で優勝に賭ける思いを見せてくれた」(森保監督)ことは、チームとして共有できる財産となったはず。あとは「優勝に足りなかった部分を成長に繋げてくれれば」(同監督)ということになるだろう。

■強い刺激を受けた選手たちのこれから

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試合後、韓国の友人の記者から「いい試合でした。個人的に日本の大健闘に感動しました」というメッセージをもらった。彼からは試合中にも「なんという接戦!」と送られてきていたのだが、戦力的に優位な韓国の快勝(あるいは楽勝!?)を予想していたであろう彼らにも、日本の若武者たちは確かなインパクトを残したようだ。

チームはこれでひとまずアジア競技大会での活動に終止符を打つこととなった。

JリーグYBCルヴァンカップや大学の総理大臣杯を控える選手たちは早期帰国し、そうでない選手たちは閉会式へ出席してから帰途につく。次の招集は秋に予定されているUAEでの国際大会となりそうだが、同時期にはA代表の活動もある。

森保監督はこの世代の選手を積極的に引き上げていく可能性を示唆しており、準A代表の韓国と渡り合い、「自分のサッカー人生に影響を及ぼすんじゃないか」(DF原輝綺/アルビレックス新潟)というほどの強い刺激を受けた選手にとっては、もはや五輪代表への招集だけで満足できるものではあるまい。

A代表の活動は、来年は1月にアジアカップ、6月にはコパ・アメリカ(南米選手権)が予定されている。後者については五輪ベースのチームにオーバーエイジ選手を加えたような編成での参加になるのではという話もあり、選手たちにとって大きな可能性が広がっているのは間違いない。

まずは所属チームにおいて今大会で得た収穫と課題を反映したプレーを見せること。その積み上げの先に、2020年に金色のメダルを手にするという、五輪代表チームが掲げる大目標、あるいは2022年や2026年の晴れ舞台で日の丸を背負うという個人としての未来が待っている。

取材・文=川端暁彦

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