24日、アジア大会ラウンド16でU-21日本代表はU-23マレーシア代表と対戦し、1-0で勝利を収めた。グループステージで韓国を破ったマレーシアに苦戦を強いられた日本は、試合終了間際の89分、FW上田綺世(法政大)が自ら奪ったPKを沈め、ギリギリで準々決勝進出を果たした。
大会が始まって以降、試合ごとに課題があらわになっている。短いインターバルの中でチームは解決に取り組んでいるものの、一朝一夕にはいかない。過酷な環境下での戦いと学びの日々。現地で密着取材を続ける川端暁彦氏はチームの現在地をこのように見ている。
■課題を認識させないことには改善にもつながらない
グループステージを終えてラウンド16を迎えるまでに、U-21日本代表に与えられた時間は中4日。
普通のリーグ戦ならば「過密」に分類されるインターバルだが、Jリーグから中2日で初戦・ネパール戦、中1日で第2戦・パキスタン戦、中2日で第3戦・ベトナム戦と戦ってきたチームにとっては大きな意味がある時間だった。
中4日のうちの2日間を、森保一監督は戦術的なトレーニングに割いた。
疲労回復とコンディション維持を目的にしたリカバリートレーニングばかりしていたチームにとって、初めての練習らしい練習である。今回が5回目の招集といっても、そのたびに大幅にメンバーが代わっており、初顔合わせという選手も少なくなかったので、噛み合っていない面も多かった。
トレーニングメニューからは指揮官の意図も透けて見えるもの。グループステージを終えて森保監督が強調した課題はビルドアップの部分と、ルーズボールへの予測や反応、そして個として球際で戦うことである。
加えて明らかなのは攻撃の連係不足。もちろん、1日や2日のトレーニングで急に改善されるものでもないが、課題を課題として認識させないことには改善にもつながらないので、トレーニングを通じてまず選手たちに意識付けすることは重要だ。
■目の前の試合対策と、ディテールの追求

たとえば、マレーシア戦3日前の21日のトレーニングは、8対8+フリーマン3名(うち2名はGK)によるポゼッションゲームというメニューを消化した。全部で19人なのはMF三笘薫(筑波大学)が風邪をひいて休んでいたからである。小さめに区切ったフィールドでボールを動かし、奪われたら即時切り替えというよくある練習だが、魂は細部に宿るもの。徐々にタッチ数を制限し、最後はワンタッチ縛り。
これは単に少ないタッチでボールを動かす練習というわけではない。
何しろ小さいフィールドで強いプレッシャーをかけられるのだから、相応の頻度でミスが出る。そこからの切り替えスピードが問われるし、そこで自然と身体的な接触も連続的に発生しやすい。しかもボールデッドになってからのプレーの再開は適当に放り込まれるルーズボール。意図は明らかであり、選手たちの多くもそれを汲み取る姿勢を見せていた。
このあとは攻守でセパレートしたトレーニング。和田一郎コーチが3バックの選手たち6名をまとめて、ラインコントロールやそのブレイク、あるいはクロスへのポジショニングやマーキングといったベーシックな戦術的要素を逐次確認。あらためて基本を徹底していた。
一方、中盤から前の選手たちは横内昭展コーチの下でフィニッシュにつながる崩しの戦術的な部分を煮詰め直した。後方から1トップに当てる、あるいはシャドーに入るところをイメージしながら、攻撃の形を作っていく。即興的な要素を求められる部分と、戦術的な約束事として持っておきたい要素の徹底である。個人での仕掛けも容認しながら、しかしグループとしての狙いもすり合わせる。そういうイメージ作りの場だった。
翌22日のトレーニングでメインとなったのは、3バック+2ボランチ+GKの6枚でのビルドアップ。これに対し、守備側(つまり攻撃陣)は5枚でのプレッシングをしかける形である。ハーフウェイラインのところにコーンで作ったゴールが3カ所用意されており、守備側はそこまでボールを運び出すのが目的となる。
こちらは基本的にビルドアップの練習ではあるのだが、マレーシアも3バック+2ボランチのチームなので、試合に向けた練習という意味合いもあった。
■次はサウジアラビア。1試合でも多く勝ち続けるのみ
(C)Akihiko Kawabataそして、迎えた24日のマレーシア戦でこの辺りの改善が劇的に改善されていた——!
と言えれば、美しい物語なのだが、もちろんそんな簡単にいく話でもない。本来ならばこうした練習を毎日積み重ねながらチームを作っていくものであって、一朝一夕の作業ではないのだ。そしてもちろん、代表チームにそんな猶予はない。
とはいえ、「細かいところで合っていなかった部分を確認できるので、やっぱり練習は大事だなとシンプルに思った」とDF杉岡大暉(湘南ベルマーレ)が言うように、無意味な時間だったわけでもない。
たとえば球際の意識についてはベトナム戦に比べて明確な改善が見られ、これは意識付けの賜物だろう。不用意なパスミスからカウンターを食らってしまったシーンにしても、水際で防げたのはGKを含めた切り替えと、カウンター対応の意識があったからだ。
このマレーシア戦は終了間際のPKで何とか勝ち越して1-0という紙一重の勝利と形容するほかない内容だった。
ディテールを突き詰めようとしたトレーニングがなければ、普通に負けていたのかもしれない。そういう際どい試合を勝ち切る強さを見せられたことは、しっかり前向きに解釈しておきたい。
「普通にドリブルしていて、ボールがはずんでしまう。しかも、めっちゃ蹴りにくいです。意外と粘土質で、(蹴ると)地面ごと動いちゃう」(FW岩崎悠人/京都サンガF.C.)というピッチ状態を考えても、いわゆる“いいサッカー”を無理に志向せずに、裏へと蹴り込むプレーを増やした判断もまた、決してネガティブに捉え過ぎるべきではないだろう。やはり、言うほど簡単な舞台ではない。
「アジアが厳しい戦いになるのは分かっているし、ピッチに立っている人にしか分からない難しさだったり、観ているだけの人には分かりづらい厳しさがある。『アジアでぜんぜんダメじゃん』と思う人もいるかもしれないけれど、そんな簡単な大会じゃない。でも、その中で一つでも多くの試合をしていく中で、この大会で得られるモノは相当大きいんじゃないかと思っています」(DF原輝綺/アルビレックス新潟)
今大会を通じてあらためてアジアで勝つ難しさを選手たちは痛感しているが、それもまたこれからカタール・ワールドカップアジア予選やAFCチャンピオンズリーグ、あるいはひょっとすると来年1月のアジアカップを戦うことになる彼らにとって、良き学びには違いない。
相手のことも味方のことも、審判やピッチ状態や風や天候といったすべての状態を取り込んだ上で「勝つために何がベストか」を判断できるのが本当の良い選手。
過酷さもあれば、難しさもあるアジアのステージにおける若き日本代表の戦いとレッスンの日々は、中2日で迎える27日の準々決勝、サウジアラビアとの試合まで継続することとなった。
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