15日、エストニアのタリンで行われるUEFAスーパーカップ。レアル・マドリーとアトレティコ・マドリー、このスペインの首都に本拠を置くチームにとって、今回の一戦は単なるタイトルの懸かった一戦ではない。「マドリードはどちらものか」。覇者を決める戦いになるのだ。
■新体制と長期政権の激突
マドリーにとって、このダービーへの準備期間は29日間のみだった。29日間とは、すなわちジュレン・ロペテギ新監督が最初のタイトル獲得に向けてチームの強化に充てることができた期間とイコールだ。一方のアトレティコは、シメオネ体制7年目。両チームの状況は対極的といえる。今回のUEFAスーパーカップは、マドリーにとって2018-2019シーズンを占う重要な一戦となる。
アトレティコは、これまでもベンチメンバーの再構成という課題を常にマドリーに突きつけてきた。最近でも、ジネディーヌ・ジダン前監督がベルナベウでの最初のダービーで敗れたことで、ベンチにいたカゼミロの重要性を認識したのはその好例といえる。
ロペテギはアメリカツアーの序盤であるマイアミからこの一戦を念頭に置き、前線の3人をどう配置するか、試行錯誤を続けてきた。しかし、ロペテギの頭を最も悩ませているのは、合流時期の異なるメンバーをどう融合させるかということだ。特にワールドカップ出場選手の合流問題によって、同じメンバー構成で試合に臨み続けることができなかった。手持ちのカードはすべて明らかになっているとはいえ、実戦形式で陣容を試すことができなかったのは心残りだろう。
3-1で勝利したミラン戦では、マドリーが絶対エースだったクリスティアーノ・ロナウドを抜きにしてもチームの攻撃力が低下していないことを誇示しただけでなく、タリンの一戦に臨むべき11人を我々に教えてくれた。GKケイロル・ナバス、4バックはダニエル・カルバハル、セルヒオ・ラモス、ラファエル・ヴァラン、マルセロ、中盤はカゼミロ、トニ・クロース、イスコが構成し、3トップはギャレス・ベイル、カリム・ベンゼマ、マルコ・アセンシオだ。今夏の去就に注目が集まったルカ・モドリッチがここに加われば、システムは4-4-2となり、その場合はアセンシオが外れることになるだろう。
■CL優勝メンバーか、コンディション重視か
Real Madrid Twitter今回の一戦、マドリーにとって最大のテーマは、チャンピオンズリーグ(CL)優勝メンバーを並べるのか、今現在のコンディションを重視したメンバーで臨むか、ということになる。
アメリカツアーの成果を重視するならば、アセンシオとダニ・セバージョスを外すことはできないだろう。また、カンテラ出身の左SBセルヒオ・レギロンも欠かすことはできない。一方で、体重過多のマルセロの出場は保証されないだろう。今のままでは、たとえスターティングメンバーに名を連ねても丸い体のまま姿を現すことになる。実際、マルセロはミラン戦でも45分の出場に留まっている。W杯で優勝したヴァランの調子はなんとか間に合う程度だろう。これは、対峙する相手エース、アントワーヌ・グリーズマンにも同じことが言える。
ベイルは、疑いの余地なくチームの攻撃をけん引するリーダーとして先発するだろう。だが、ロペテギはウェールズ出身WGがさらに選手をまとめる存在となることを期待している。ヴィニシウス・ジュニオールのような特別な才能が加わったとはいえ、チーム全体としてはまだまだ固まりきっていないからだ。相手チームを見ればルマルやジェルソン・マルティンスといった新戦力がいるものの、インターナショナル・チャンピオンズ・カップで見せた激しいプレッシャーをピッチ上で表現すれば、ディフェンスラインからチームを再構築することもやむを得ないアトレティコを苦しめることができるだろう。
またベンチに座るクルトワの存在は、ナバス、そして以前所属していたアトレティコにプレッシャーを与えるだろう。この元ロヒブランコは、夢見続けた地にたどり着いたことで意欲にあふれている。生まれ故郷で少年時代から毎晩サンティアゴ・ベルナベウのフラッグの下で寝ていたことは知られた話だ。ロペテギは最高のGKが2人いる状態を「2つの素晴らしいソリューション」がある状態と形容した。ベンチに問題が起こることはないと語っている。GK議論は、ひとまずヘタフェとのリーガ開幕戦まで続くことだろう。一方のアトレティコにはGKの議論は存在しない。オブラクは今週、ロヒブランコの“鉄壁”であり続けるために、チェルシーでクルトワの後釜となることを拒否している。
■アトレティコ・マドリー、プライドを取り戻す戦い
(C)Getty Images対するアトレティコは、シンガポールツアーで不安定な戦いに終止。新シーズンへ不安を残した。スペインに戻ってからも、本拠地ワンダ・メトロポリターノでインテルに0-1と敗戦を喫している。シメオネが常連メンバー(ヤン・オブラク、フアンフラン、ディエゴ・ゴディン、フィリペ・ルイス、サウール・ニゲス、コケ、トーマス・パルティ、グリーズマン、ディエゴ・コスタ)と新戦力をどう融合させるのか。この一戦での最大の課題だ。
いずれにせよ、アトレティコ、そしてシメオネはこのダービーをCL決勝と同様に戦うはずだ。サポーターは2014年のリスボン、2016年のミラノにおいて、決勝でマドリー相手に悲願の欧州制覇を阻まれたことを決して忘れない。今回はその雪辱を晴らすチャンスであり、タリンの地での勝利は、過去2回の敗戦の痛みを多少は和らげてくれるだろう。
■“どちらがスペインの首都を制しているのか”
両チームによるダービーは、今回で271試合目だ。これまでの戦績はマドリー138勝、アトレティコ68勝、64引き分けだ。今回の試合でマドリーが勝利すれば、スーパーカップ優勝回数は計5回となり、最多優勝チームであるバルセロナとミランに並ぶ。だが、もし敗れれば、アトレティコに追いつかれることになる。
過去の通算成績ではレアルが圧倒しているが、対シメオネとなると話は別だ。対戦成績は、アトレティコ側から見て8勝8分10敗。ほぼ互角の戦いだ。またシメオネにとって、ロペテギは5人目の対戦するマドリー指揮官となる。ダービーというものを完全に理解しているチョロ率いるアトレティコの方が、経験値で言えばアドバンテージを手にしているといえるだろう。
昨シーズンのEL準決勝での退席処分の影響によって、シメオネはベンチ入りできない。この試合のピッチ上でロペテギがチョロに顔を合わせることはないが、シメオネの脅威はアトレティコの内部に潜在的に存在する。クラブ幹部たちは今のところロペテギの仕事ぶりに満足しているが、マドリーはヨーロッパ王者であり、常に成功が求められる。
同じ街に本拠を置く両チームにとって、今回のスーパーカップは単なるタイトルが懸かったものではない。このダービーでは、毎回勝敗によって“どちらがスペインの首都を制しているのか”という議論が巻き起こる。ダービー後、勝利チームのサポーターは「マドリードは俺たちの街だ!」と高らかに歌い上げるのが常だ。
昨シーズン、EL王者に輝いた後、アトレティコスは「フットボールは人生そのもので、逆境を越えていかなければならない。アトレティはその象徴」と歌い上げた。それに対し、CL王者のマドリディスタスは「フットボールは勝つことに醍醐味がある。まあ、どこにドラマを見出してもいいが、俺たちこそ世界最高のチームなんだよ」と返す。さらに「カンペオーネス! カンペオーネス!」「俺たちはヨーロッパの王」「インディオス(アトレティコファン)は誰が首都を支配しているかを知れ」と、街の支配権は俺達のものだと主張するのだ。
両クラブ、サポーターにとって、マドリード・ダービーは単なる1試合ではない。年間観光客数世界第2位(およそ8200万人:2017年度)、観光収入総額870億ユーロ(約11兆円)という世界的に重要な国の首都を支配するクラブを決める戦いなのだ。
ジダン、そしてロナウドがいなくなった新生マドリー。シメオネ政権下7年目を迎え、成熟したアトレティコ。どちらがカップを、そしてマドリードを手にするのだろうか。運命のキックオフは16日4:00(日本時間)だ。
文=フォルハネス・フェルナンデス/Forjanes Fernández(『アス』レアル・マドリー番記者)
協力=江間慎一郎
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