4年に一度の祭典が開催中だ。
『Goal』では、ロシア・ワールドカップ開催に際して選手や指揮官に独占インタビューを実施。今回は、ベルギー代表を率いるロベルト・マルティネス監督だ。
マルティネス監督は、現役時代にウィガンやスウォンジー・シティでプレー。引退後は2007年にスウォンジー・シティで指導者としてのキャリアをスタートさせ、その後にウィガン、エヴァートンを指揮した。そして、2016年からベルギー代表指揮官に就任し、チームをロシアの地に導いた。6日にブラジルとのW杯準々決勝を控える“レッド・デビルズ”の監督に、決勝トーナメント1回戦の日本戦やチームの現状をうかがった。
■日本戦を回顧
(C)Getty Images――日本との試合は今大会最高の試合の一つだと多くの人たちが話題にしています。後半途中までに0-2で負けていましたが、ナセル(・シャドリ)とマルアン(・フェライニ)が試合をひっくり返した試合の感想は?
W杯に対する我々のアプローチは、非常に明快だったと思っている。本大会で戦うには成長する必要があった。ベルギーは今までW杯で優勝したことがない。イングランドとの試合では、チームの全選手を見ることができたね。W杯の試合ではフィールドプレーヤー19人全員を先発させるチャンスはない。ナセルとマルアンがイングランド戦で非常に素晴らしいプレーをしたことは明らかだ。この2人は違った意味で、W杯に出場するために懸命に戦わなければならなかった。W杯に出場する選手は、多くのことを背負っているものだ。マルアンは、マンチェスター・ユナイテッドで何度かケガをした。W杯には出場できないのではないかとも思われていた。ナセルも同じだった。彼にとって今シーズンは、実にタフなシーズンだった。ロシアに来てからの彼らのプレーは本当にフレッシュだったよ。だから、イングランド戦の後、あの2人が本当にインパクトのあるプレーができると確信した。もちろん、どの選手もそういうプレーができたはずだと思っているけどね。このチームには、ピッチに立つ準備を整え、インパクトをもたらす選手であることを示すだけのメンタルの強さがあると思う。戦術や技術は関係ない。選手たちはこの6週間、これでもかというくらい自分を犠牲にし、チーム一丸となってきた。これが真の強さだと思う。我々全員が、「自分たちはチーム一丸となれるか?」という疑問を、常に考えてきた。日本戦でその答えが出たのだと思う。
――ケヴィン・デ・ブライネに向けて素早くボールを出し、カウンター攻撃に入るという3点目のスタイル。あれこそベルギー代表が続けてきたことではありませんか?ゲームプランのひとつだったのでは?
いや、むしろあれは我々のDNAとでも言うべきものだ。ベルギー代表には、本当に優れた技術のある選手が何人もいて、素晴らしいスピードでプレーすることができる。あのプレーで本当に満足すべきことは、ゴールキーパーから攻撃が始まったことだ。我々は常に、11人で守って、11人で攻撃しなければならないと言い続けてきた。90分のプレーとしては、ゴールキーパーがすべき正しいプレーではないかもしれない。90分の時点では、ゴールキーパーは延長に入ることを覚悟して、違ったプレーをすべきだったかもしれない。だけど、ベルギーらしさを示す素晴らしいプレーだったと思う。我々はいつも攻撃的で、自分たちのチームには才能があると信じ、得点を取りたい、そして攻撃したいと思っている。あの時、ケヴィンがあのようなプレーをして、ロメル・ルカクが献身的なプレーをした。そして、トーマス・ムニエが走り、ナセル・シャドリがエデン・アザールのサポートを受けてフィニッシュできた。だからこそ、あのシーンが生まれたのだと思う。あれは、チームプレーの真のお手本だったと思う。
■ルカクの成長
(C)Getty Images――ロメル・ルカクの献身について、おうかがいします。何よりもまず、彼のランニングがあったからこそ日本のディフェンスを崩壊させ、得点をもたらすことができました。世界的選手となった彼に関して、コーチのティエリ・アンリばかりが影響を与えたと称賛されるのは気に入らないのでは?
そんなことはない、ティエリは大いに称賛に値すると思う。ロム(ルカク)に関して、本当に良い仕事をしてくれている。ロムは、若いころから並外れた才能を発揮してきたから、彼のことはよく知っている。特に素晴らしいのは得点能力が高いことだ。19歳のときにプレミアリーグに入って、ウェスト・ブロムウィッチで大活躍した。少しずつ90分プレーすることに慣れていったんだ。エヴァートンに行って、勝者のメンタルを身に着けた。自分のポジションで最高の選手になりたいという、エリートの意志をもったんだ。サッカー選手として進化したんだよ。外から大勢の人がいろいろ言っている選手については、実際に見てみることが重要だ。ピッチでのプレーが傲慢だと言われても、ロムは気にしないだろう。前線にいて、得点を取りたいと思っているだろうからね。彼が、自分より良いポジションにいる選手へパスを出すことを選択したことは、彼の成長だ。そして、チーム一丸となって互いに助け合い、試合に勝つという、我々の目的を理解した証だと声を大にして言いたい。
■ブラジル戦へ「士気は高い」
(C)Getty Images――準々決勝では、W杯を5回制したブラジルと対戦することになりました。ブラジル戦の準備はどうですか?日本戦の後、チームの士気はいかがでしょうか?
士気は非常に上がっていると思う。今大会のブラジルに対しては大いにリスペクトしている。まさに今大会の最強チームだよ。選手個々の実力は素晴らしいし、チッチ監督が選手たちをよくまとめている。なによりも、ブラジルにはフィジカル面でアドバンテージがある。W杯であの黄色のユニフォームを着ているだけで相手を威圧できる。他のチームとは何かが全く違うんだ。だけど同時に、我々だってここまで勝ち進んできた。ここまでの試合を勝ってきたことこそが最高の準備だと思う。W杯でブラジルと対戦するのに、これ以上の準備はないだろう。勝てれば素晴らしい快挙だ。ベルギーのサッカー史上、準決勝まで進んだことは1度しかないんだからね。準々決勝に残ったのも3回目で、我々にとってはほとんど初めてと言っていい。今のチームがここまでに成し遂げてきたことを思えば、分が悪いと言われることも楽しむ必要があるだろう。今大会で我々の分が悪かった試合はなかった。ブラジル戦のことより、準々決勝でどのようにプレーするか、どう試合を運ぶか分かっていたからこそ勝ち進んでくることができた。そのことが重要だ。
――ネイマールとマッチアップするのは、パリ・サンジェルマンでチームメイトのムニエになるでしょうか?ネイマールのマークについて、どのように考えていますか?
ピッチのどこにネイマールがいてもマークをつけなければならないと思っている。トーマス・フェルマーレンはバルセロナで一緒だったし、ムニエは確かにチームメイトだけど2年前までは対戦相手だった。そのことを思いだせば、ムニエは最高のディフェンダーの一人だし、ネイマールに対して最高のプレーをしたことがある選手の一人であることは間違いない。パリSGとバルセロナが対戦してバルセロナが0-4で負けた時、ムニエはネイマールのエリアを本当にうまく守った。さらに前に出て行って4点目をアシストした。完璧なプレーだった。そこにヒントがある。作戦は秘密だから詳しくは言えない。その試合、そのチャンスにより良く適応して、より良い試合をする。それこそが我々に必要なことだ。個々の選手やチームとしてのブラジルに対して、選手をどう配置するかは意味がないと思う。相手は特別な才能をもったチームだ。ただ、我々が試合で何をしなければならないか、自分たちの色をどのように試合に出していくかが大事なんだ。どんなチームにも弱点があり、強みがある。それは間違いない。
■フェライニは「技術もある」
――フェライニについて、マンチェスター・ユナイテッドと新契約を締結しました。彼はデイヴィッド・モイーズ、ルイ・ファン・ハール、ジョゼ・モウリーニョ、そしてあなたのお気に入りでした。彼が名監督たちに好かれる理由は何でしょう?
彼の本当の良さを評価するには一緒に働いてみる必要があると思う。彼のテクニカルな能力は過小評価されていると思うね。一般に言われているよりも、サッカー選手としてテクニカルな技術はある。ボールコントロールのレベルも高いんだよ。彼は戦うために生まれてきたんだ。勝者としての才能がある。彼はサッカーと出会って人生を謳歌するチャンスを得たのだと思う。彼の一つ一つのプレーが結果を左右することを示しているし、そのことが彼を戦う男にする。だからこそ監督やコーチが彼を自分のチームに入れたいと思うんだ。
■デ・ブライネへの信頼

――デ・ブライネは、日本戦の最後の瞬間、非常に決定的な仕事をしました。試合前の記者会見で、あなたはデ・ブライネについて、今大会ここまでで過小評価されている選手の一人ではないかと言っていました。今大会におけるデ・ブライネのプレーをあなたはどう評価していますか?
我がチームにおける彼の役割は大きい。過小評価されているね。おそらくクラブレベルでは、常に最後のアシストや得点をしてきて、簡単に決定的なシーンを作り出せるからだろう。デ・ブライネがベルギー代表にもたらす影響はとても大きい。アタッキングサードにおいてチームの力となり、我々の真の司令塔となっている。リーダーにもなっているね。デ・ブライネはチームにとって最も重要な選手に成長している。最も重要な瞬間にピッチの上で、それを示したのは初めてじゃないかな。日本に0-2で負けていたとき、彼がチームに冷静さや信じる力を取り戻させた一人だったことは、今後いつまでも記憶に残るだろう。彼は、試合をひっくりかえす時間はまだまだあると全員に知らしめてくれた。彼のおかげでチームが一つになれたと思う。デ・ブライネでなければ、3点目のシーンは生まれない。相手のペナルティボックスから自陣のペナルティボックスまで、あんなに素早くボールを運べただけでなく、あのパスの質だ。進むべき道を示されたムニエは、スピードを緩めることなくシャドリにパスできた。デ・ブライネが果たしてくれた役割に感謝している。彼は、チームにおける自分の重要性や、チームがどんなプレーをしたいのかを理解している。チームに欠かせない選手だ。
■最高の舞台を謳歌
――最後にあなた自身についてです。あなたは、1週間に5日や6日、7日にわたってチームとコンタクトを取ることを好む監督です。今の代表監督という状況はいかがですか?今は1週間ずっとチームといることができ、こんなにも長い間、多くの試合ができていますね。
確かに国際大会に関われることは素晴らしいことだと思う。我々は2年前からW杯の準備をしてきた。選手たちとコンタクトを取れないでいて平気なわけはない。国際大会でのサッカー経験をクラブレベルのメソッドに役立てられれば本当に楽しいだろう。きちんとした基礎を築き、チーム一丸となって重要な試合に対して準備をすることができる。このこと自体が、私だけでなく、日々一緒に仕事をして、日々選手たちと喜怒哀楽を分かち合ってきたスタッフ全員にとって素晴らしい報酬だ。ここ2年間は特にストレスがかかっていたからね。
文・インタビュー=ピーター・ストーントン/Peter Staunton

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